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視点を持って業界を読み解く。調剤Scope

対物・対人両方を総合的に扱う
「服薬ケア」の概念とは?~かかりつけ・健康サポート時代の道先案内人~【第2回】

服薬ケア研究所 所長 岡村祐聡(おかむらまさとし)

添付文書、読めていますか?

 大変恥ずかしい話ではあるのですが、今から30年近く前、大学病院前の調剤薬局で働いていた私は、添付文書を見ても、そこに書いてあることがあまりよくわかりませんでした。もちろん、添付文書は、私たち薬剤師にとって、最も身近にある資料ですので、毎日何かしら見ていたと思います。薬の棚に必ず入っていましたので、保険適用があるかどうかをしらべるために薬効を見たり、他にどんな含有量のものがあるのかを調べたり、必要なときには必ず参照していました。しかし、「副作用」の一覧を見ても、なんだかよくわからないものもあるし、さすがに半減期が何かくらいはわかりましたが、半減期以外の薬物動態の数字も、わかったような、わからないような、曖昧な状態だったと思います。先輩たちに「お前まさか添付文書読めないの?」と言われるのが怖くて、フンフンとわかったような顔をしてみていましたが、正直きちんと読めてはいませんでした。

メーカーからもらうパンフレットも読めなかった

 もう一つ、自分自身が強烈に覚えていることがあります。となりの大学病院の薬剤部では、月に何回か製薬メーカーの勉強会が病院の中で開かれており、その勉強会に、近隣の薬局の薬剤師も出席させてもらっていました。前の方には普段調剤室ではあまり見かけない年配の薬剤師の先生方が座っており、30分から45分程度の説明を聞いた後、メーカーさんを質問攻めにしていました。でも若い私には、何を見てその質問を思いついたのか、全くわかりませんでしたしたし、そもそも何を質問しているのかすら、わからないことが多かったのです。初めは事前に資料を取り寄せて予習しているのかと思いましたが、どうやらそうではないらしいのです。初めてパンフレットを配られて、わずか数十分しか経っていません。私も同じ時間説明を聞いたはずなのに、なぜあの人たちは、あんなに質問できるのか本当に不思議でした。その時いつも思ったことは、自分があの年齢になった時、あの人たちのように、パンフレットを見ただけで、そこに何が書いてあるのかわかり、「何が書いていない」などと質問できるようになっているだろうかということでした。

「知的正直」を守ることの大切さ

 たぶん今、私はその年齢は超えていると思います。その後30年近くの歳月、それなりに一生懸命勉強してきましたが、今の自分があの頃の大先輩たちに追い付いているのかどうかは、正直わかりません。ただ、一つだけ心に誓ったことだけは、胸を張って後輩たちにも言いたいと思います。それは、「わかったフリをするのは止めよう」ということです。服薬ケアでは「知的正直を守る」と言っていますが、「わかったフリ」「知っているフリ」をし始めると、人が見ているところでわからないことを調べることができなくなります。つまり、自分自身が勉強するチャンスを逃してしまうのですね。そこで「知っているフリ」をするつまらないプライドのために、自分が本当の意味で成長するチャンスを逃してしまうのは、いかにももったいない。それだけは声を大にして後輩たちに言いたいと思います。

医療統計学を駆使してパンフレットを読み解く

 そして今、服薬ケアでは「本物の薬剤師になろう!」という合言葉で、「本物の薬剤師!」養成講座を開講しています。今年の6月には名古屋で、8月には東京で、ある薬のパンフレットを題材に、スミからスミまで読んでみる勉強会を開催しました。パンフレットを読むときに最も必要なものは、医療統計学の知識です。グラフの意味、データの持つ意味、そこに載っている「研究の結果」からいったい何を読み取れるのか、など、統計学の勉強を中心に、パンフレットを読み解く「薬のパンフレット徹底読解」です。EBMの勉強会よりもっと実践的に、文献を読んだり、統計学の基礎を学んだりするもので、大変な人気となっています。(次回は12/23東京にて開催予定です)

添付文書の中身をひとつ残らず掌握する

 そしてもう一つ。「添付文書&IF徹底読解」というシリーズの勉強会も行なっています。これは、添付文書とインタビューフォームに書いてあることを、とにかく読み解いて行こうという勉強会です。必要なら統計学の知識も、そして薬物動態学の知識も復習しながら、それぞれの病気を理解するために必要な生理学や生化学の知識まで総動員して、「添付文書に書いてあることを、ひとつ残らずわかるようになろう」という勉強会です。正に私の若いころの強烈な「わからない」体験を解消するための勉強会ですね。自分が若いころこんな勉強会があればよかったのにと、本当にそう思います。でもないので、自分で作ってしまいました。ぜひ若い皆さんには、私のような恥ずかしい思いをしないように、しっかりと勉強していただきたいと思います。

ユヤマ東京営業所にて開催!

 この「添付文書&IF徹底読解」を、11月にユヤマさんの東京営業所をお借りして、開催できることになりました。なんとユヤマさんのショールーム見学ツアー付きです!ぜひ皆様のお越しをお待ちしております。(*日本薬剤師研修センター認定研修(4単位)。東京まで来るのが難しい人は、ご自宅からのweb受講もできます!=WEB参加は認定シールの配布はありません)

 最後に、学術大会のお知らせです。服薬ケア研究会では、現在毎年学術大会を開催しており、第7回目となる今年は、東京の昭和大学薬学部にて開催いたします。目玉は何と言っても、93歳の現役薬剤師「比留間栄子先生」の特別インタビューです。93歳でなお矍鑠(かくしゃく)として、毎日薬局に出勤して服薬指導をしていらっしゃいます。私の憧れの先生です。戦争中の学生時代の思い出から、現在の心境まで、素晴らしいお話をたくさんお伺いします。ぜひお出かけください。「長く現役を続ける秘訣は?」とお尋ねしたら・・・、そのお答えにしびれました。カッコイイ!その答えは、ぜひ大会会場で直接お確かめください。(続く)

SOAPパーフェクト・トレーニングPart2
岡村 祐聡(おかむら まさとし) 服薬ケア研究所 所長

(文責:2017年10月 岡村 祐聡(おかむら まさとし) 服薬ケア研究所 所長)