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「服薬ケア」の概念とは?~かかりつけ・健康サポート時代の道先案内人~【第3回】

服薬ケア研究所 所長 岡村祐聡(おかむらまさとし)

患者さんは、あなたの服薬指導に満足しているのでしょうか?

 先日、我々服薬ケア研究会の目玉のワークである『「頭の中をPOSにする!」グループワーク』で、患者役をやってくださった方(この人も薬剤師です)が、終わった後に「満足度は?」と聞かれて「35点」と答えていました。35点は厳しいですね。でも、そのような服薬指導が、日々日本全国の薬局の窓口で行われているのだと想像します。
 この『「頭の中をPOSにする!」グループワーク』とは、通常は3分から5分程度で終わってしまう服薬指導を、3時間以上かけて、質問を1つするたびに「なぜその質問をしたいのか」「その質問で何がわかるのか」「それがわかるとどうなるのか」と、いちいちディスカッションして、服薬指導の組み立て方を学ぶ研修会です。思考訓練と言っても良いと思います。ディスカッションのあと、代表者が実際にロールプレイも行いますので、病気や薬に対する知識の総復習や「どのように考えれば良いのか」という症例に対するアセスメントだけでなく、コミュニケーション技法まで含めた、すべての訓練ができる薬剤師としての総合訓練となっています。毎回違う症例を作って行いますので、このワークに20回くらい出れば、薬剤師としての実力は完璧になると言われています。
 この35点の服薬指導も、薬学的な知識の面では、皆さんかなりしっかりした知識を持って、こうした方がよい、いやそうではないと、真剣に議論をしていました。つまり薬学的な知識に問題はなかったのです。それならばなぜ35点という非常に辛い点数だったのでしょうか。

「思いつき指導」「ひもつき指導」にすぐ流れてしまう

 私がディスカッションを聞いていて感じたのは、服薬ケアで「思いつき指導」や「ひもつき指導」と呼んでいる、「行き当たりばったりの服薬指導」が非常に多かったということです。せっかく、テーマを明確化して、ディスカッションをしているのに、議論はいつしか「でもあの時患者さんはこういっていた。このことを知らないのではないか」というように、「思いつき指導」に流れて行きました。あるいは、「ところでこの薬はこういう特徴があるのだけれど、それはちゃんと知っているのだろうか」と、「ひもつき指導」が気になってしょうがないという様子でした。
 「思いつき指導」とは、患者さんとのお話の中で、ちょっとした言葉などから「もしかしてこの患者さんはこうなのではないか?」と思いついたことを、すぐに指導を始めてしまうことです。「ひもつき指導」というのは、薬に対してひもつきで覚えていることを、自分の記憶の中から引っ張り出して来て、ただそれを伝えるだけの服薬指導を言います。もちろん、ちょっとしたヒントから何かを思いつくことはとても大事なことです。これは服薬ケアでは「気付きポイント」と呼んでいて、大変重視していますし、気付きポイントを見つけるための「気付きリスト」というワークもあります。ですからとっても大切なことです。また、薬に対して大切なことをきちんと覚えていることも、薬剤師として必要不可欠な部分ですから、ひもつきの知識をたくさん知っていることはとても重要です。いや、むしろ知らないのは薬剤師として失格であると言ってもよいくらいでしょう。
 では、何がいけないのでしょうか?

思い付いた瞬間に、すぐに指導を始めてはいけない!

 やってはいけないことは、「思いついた瞬間にすぐに指導を始めてしまうこと」なのです。実際にロールプレイの際に、あれだけ時間をかけて議論したのに、その場で思いついた違う話題の指導を始めてしまう薬剤師もいました。皆さんは「思いついた瞬間にすぐに指導を始めてしまうこと」のどこがいけないのか、わかりますか? その理由は2つあります。

すぐに指導を始めてはいけない理由①「必要な情報(証拠)が足りない!~ウラを取れ!~」

 まず第一に、その思い付いたことが本当に今日指導すべきプロブレムなのかどうか、その証拠となる情報を集める必要があります。これを私は、刑事ドラマのようによく「ウラを取れ!」と言っています。「こうなんじゃないかな」と思ったら、本当にそうなのか、きちんと証拠を集めてください。実はこの、こちらから「こうなのではないか」と思って集めた情報が、通常O情報になります。思い付いてすぐに指導を始めてしまうと、この、大切なO情報が欠けている状態で指導を始めることになってしまうのです。だから薬歴を書くときに、何を書けばよいのかわからないということになるのです。

すぐに指導を始めてはいけない理由②「アセスメントしていない」

 もう一つは、「アセスメントしていない」ということです。思い付いた瞬間にすぐに指導を始めてしまうということは、患者さんが「なぜ、そのように思っているのか」とか「どのようにお話すれば、考え違いを正していただけるのだろうか」というような、アセスメントをしていないのです。必要な情報を集めるというステップをひとつ置いていれば、そこで「やっぱりそうなんだな」と考える(アセスメントする)ことができます。しかし思いつきで指導を始めてしまうと、アセスメントせずに、覚えている知識をひもつきで話すだけになります。服薬ケアで戒めている「ひもつき指導」というのは、このように、アセスメントせずに覚えていることをただ伝えるだけの指導の事です。

 もちろん研修会ですから、ディスカッションがあらぬ方向に流れていくと、私が今議論されているテーマに引き戻すのですが、またしばらくすると流れて行ってしまいます。これが35点の理由の半分以上を占めていると思います。

 残り半分については、次回お話しましょう!そして、このような「行き当たりばったりの指導」をしないための方法論である「服薬ケアステップ」というノウハウも服薬ケアにはあるのですが、そのお話はまた機会を改めて。

SOAPパーフェクト・トレーニングPart2
岡村 祐聡(おかむら まさとし) 服薬ケア研究所 所長

(文責:2017年11月 岡村 祐聡(おかむら まさとし) 服薬ケア研究所 所長)