YUYAMA

調剤薬局業界におけるM&Aのマクロ的分析。

本年6月末時点で、調剤薬局(含むドラッグストア併設店)を対象としたM&A件数は8件であった。昨年同時期では7件であり、本年においてもこれまでと同様調剤薬局業界におけるM&Aは引き続き堅調であることがうかがえる。本記事においては、昨今の調剤薬局業界におけるM&Aの動向についてマクロ的に分析する。

メディア等で公表されたものすべて

調剤薬局市場の
成長の鈍化

保険調剤の金額は2010年度で年間5兆7,591億円(日本薬剤師会「平成22年度 保険調剤の動向」より)であり、処方箋受取率(医薬分業率)は全国平均で63.1%であった。処方箋受取率の上昇から、調剤薬局業界の市場規模とも言える、保険調剤の金額は年々増加しており、直近10年では約2倍と高成長市場であった。しかし、処方箋受取率の全国平均は、平成20年度59.1%、平成21年度60.7%、平成22年度63.1%、平成23年度64.6%と推移しており、成長は鈍化の兆しを見せている。大手チェーンが毎期積極的な新規出店を仕掛ける中、市場の奪い合いが始まっている状況である。

成熟化する市場での
各社のM&Aへの取り組み

このように市場環境の成熟化がある中で、国民医療費削減のため薬価及び調剤報酬の引き下げは段階的に行われており、中小薬局における事業運営は厳しさを増している。一方で、国内調剤薬局市場が約6兆円という中、アインファーマシーズ、日本調剤の調剤売上が占める割合は未だ4%程度であり、この数値はスーパーマーケット、ドラッグストア等の小売業界での大手企業のシェアと比較すると未だ小さな数字である。大手チェーンとしては、医薬品卸に対するバイイングパワーの獲得(薬価差益の確保)は引き続き重要なミッションとなっている。中小薬局の経営環境の厳しさ、大手チェーンにおける事業規模の拡大意欲から、M&Aは両者にとっての経営課題を解決する有効な手段となっている。

調剤薬局M&Aにおける
プレイヤーの顔ぶれ

 調剤薬局業界におけるM&Aは、大手調剤チェーンによって主導されてきた。アインファーマシーズ、日本調剤ともに本年においてもそれぞれ1件ずつM&Aを行っており、その他クオール、ファーマライズホールディングス、メディカルシステムネットワークなども同様にM&Aには積極的である。近年では、ドラッグストアによる調剤併設型ドラッグ企業の買収、販売先の確保を目的とした医薬品卸による地域調剤薬局への資本参加も行われており、様々なプレイヤーが入り乱れている。

事業規模と利益率に
見出しにくい相関性

 それでは、M&Aによる効果はどのように各企業の業績に表れているだろうか。売上規模の拡大によるバイイングパワーの獲得を確認するには、売上高と薬価差益率の関係を見るべきだが、これらの数値は開示されていない。このため、上場調剤薬局企業における公表数値であるセグメント別売上高及び利益を利用し、便宜的に検討してみたのが下図である。どの企業も概して高い利益率を示しているが、規模の大きい企業ほど利益率が高いという傾向は見られない。

日本の株式市場に公開、かつ調剤事業を営む全企業

 このような結果となる一つの要因は、大手チェーンではM&A及び新規出店により店舗数を拡大しており、この設備投資負担が重いことがある。また、中堅の調剤薬局では、あいせい薬局では医療モール開発を行い、トーカイ及びトータルメディカルサービスでは総合病院の門前薬局メインでの展開をするなど差別化が図られており、必ずしも規模の差が利益率の差に繋がっていないと考えられる。
 事業規模を拡大していく大手チェーンと付加価値を提供して高い収益を確保する中堅企業。市場が成熟していく中で、各社がどのようにM&Aを利用していくかは、今後の調剤薬局業界を見る上で重要なポイントになると思われる。

(文責:2012年8月 小笠原 圭 ㈱レコフ ヴァイスプレジデント)
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