クラウド型の電子カルテを選ぶ際に押さえておくべきポイント
多くの医療機関で導入されている電子カルテのなかでも、近年普及が進んでいるのがクラウド型の電子カルテです。
しかし、一口にクラウド型といってもさまざまな種類があるため、どのような点に注意して選んだら良いのか分からないという人が多いのではないでしょうか。
そこで、クラウド型の電子カルテを選ぶときに比較すべきポイントを4つに分けて説明していきます。
使いやすさの比較
クラウド型電子カルテを選ぶときに、まず注目したいポイントは「使いやすさ」です。
新しい技術の導入の際には、現場の人間が実際にさわってみて使いやすいか、違和感なく導入できるかが重要です。実際に使う医師や看護師にヒアリングし、候補となる電子カルテそれぞれの使いやすさを比較検討しましょう。
クラウド型の具体的な比較ポイントには、次のようなものがあります。
- 入力画面が見やすく操作しやすいか
- 誰が入力しても使いやすいか
- 外出先での操作性は悪くないか
特に、訪問診療を行っている場合には、外出先でカルテを確認したり入力したりすることがあるため、外出先でのネットワーク状況や操作性については確認しておいたほうが良いでしょう。
セキュリティの比較
クラウド型の電子カルテは、ネット上のサーバーを借りてデータを管理する仕組みです。
自院と別のところにサーバーがあるため災害には強いものの、外部からの不正アクセスや情報漏洩などのリスクも存在します。
クラウド型電子カルテを選ぶ際には、どのようなセキュリティ体制がとられているのか、問題が起きた際にはどのようなサポートがあるのかなどを、比較検討することが大切です。
また、万が一のデータ損失や、院内と外部サーバーがつながらないなどの事態に備え、バックアップがどのようにとられているか、緊急時のバックアップ回線はあるかなども確認しましょう。
レセコンとの連動について
電子カルテは単独で利用されることはなく、レセコンと呼ばれるレセプトを作成するコンピュータシステムと連動させて使用します。
電子カルテとレセコンそれぞれの機能を包括的に実装した「一体型」電子カルテであれば、相互接続の相性の良し悪しなどといった問題は初めから存在せず、また相互接続させるために双方のベンダーにシステム本体代金とは別に支払わなければならない「接続インターフェース設定手数料」が発生しません。
サポートもワンストップなので、障害発生時の切り分け(電子カルテ側の問題かまたはレセコン側の問題か)に時間を費やされることもなく、安心です。
既存システムとの連動性
クリニックには、電子カルテだけではなくレセコンや画像ファイリングシステムなど、さまざまな機器・システムがあります。これらは業務効率の改善やヒューマンエラー防止を目的としており、単体でもその機能を発揮します。
しかし、それぞれのシステムが独立していると、同じ内容を入力したり、入力の際にヌケモレが発生したりする可能性があります。
そのため、新たに電子カルテを導入する際には既存のシステムとの連動性を確認しておきましょう。
電子カルテのなかには、特定のレセプトや予約システムと連携できないものもあります。
そのような場合、システムの乗り換えや別の電子カルテの導入を検討することになるでしょう。各システムが連携することで、入力や情報確認などの手間が削減され、システム間で確実に情報を共有することができます。
このように、電子カルテを導入する際には既存システムとの連携性を確認しておくことをおすすめします。
常に最新であるか
医療を取り巻く環境は、目まぐるしく変化しています。
また、ネットワーク環境も日々変化しているため、常に時代に即して新しいものにしておかなければなりません。
特に診療の際には、最新のデータがすぐに反映される状態でなければ、診察に影響が出る可能性も考えられます。
クラウド型の場合、システムのバージョンアップやマスターデータの更新などは自動で行われ、手間がかからないのが大きな特長です。
電子カルテ導入後に失敗しないためにも、メーカー毎にどのような機能があるのか、手間をかけずに簡単に操作を行えるか等、事前にしっかりと確認しておいたほうが良いでしょう。
カルテ作成サポート
近年ではAIを利用したIoTや業務の補助システムなど、さまざまなサービスが提供されるようになりました。
医療業界においてもAIの導入が進み、医療の質向上に貢献しています。
電子カルテのなかにもAIを採用しているものがあり、カルテの作成をサポートしてくれます。
たとえば、医師の処方や診療情報などを学習することで、よく使う処方やセットなどを表示することが挙げられます。
本来、これらの情報は医師やクラークなどが入力する必要がありますが、手作業で入力するとヌケモレやヒューマンエラーが発生することがあります。
AIが搭載されている電子カルテを導入することで、診療によって得た情報の入力効率が改善されます。
なかにはペンタブで記載した情報を読み取ってくれるAIもあり、用途はさまざまです。
短時間で正確な情報を入力できるようになると、患者さんの満足度向上とより多くの患者さんを診療できるようになります。
操作性
電子カルテの本来の目的は、医師やクラークなどが入力する際の業務効率を改善することです。
また、必要な情報を必要なときに取り出せる点も電子カルテのメリットです。
そのため、電子カルテは医師をはじめとするスタッフが操作しやすいものを選ぶ必要があります。
しかし、操作性が悪く、慣れるまでに時間がかかる電子カルテも存在します。
操作性が良くても、画面のレイアウトが悪く視認性が低い電子カルテは、業務効率改善を妨げる要因となります。
これらを解消するためには、可能であれば電子カルテのデモを体験し、操作性を確認することが重要です。
その際、医師だけでなくクラークなど、電子カルテを操作する関係者全員の意見も参考にすることをおすすめします。
電子カルテは高額なシステムであるため、デモ機操作を交えたメーカー商談を必ず行って納得の上で購入しましょう。
コスト
電子カルテのコストは、「初期費用」と「ランニングコスト」に大別できます。クラウド型電子カルテの初期費用は数万円から数十万円程度です。
一方、オンプレミス型の場合はパソコンやサーバーなどの導入が必要なため、数百万円ほどかかります。
このため、初期費用はオンプレミス型よりもクラウド型のほうが低価格です。クラウド型電子カルテのランニングコストは、月額で5万円程度です。オンプレミス型も同程度の金額の保守費用が発生するため、ランニングコストに大きな差はありません。
電子カルテを選ぶ際は、上記のように初期費用とランニングコストを確認しましょう。
初期費用が安くても、オプションによっては毎月のランニングコストが高額になることがあります。機能と費用を考慮して、自院に合った最適な電子カルテを選びましょう。
アフターサポート
電子カルテを導入した直後は、何をどのようにすれば良いのかが分からないことがあります。
また、停電や機材トラブルなどの際、どのように対処すれば良いのかが分からないこともあるでしょう。アフターサポートが用意されていないメーカーの場合、トラブル時に別途費用を支払わなければならないことがあります。
そのため、電子カルテを導入する際には、どのようなアフターサポートが提供されるのかを確認しておきましょう。
アフターサポートについて確認する際、先述したコスト面もあわせて確認しておくことをおすすめします。電子カルテメーカーのなかには、ランニングコストの内訳を「保守費用」として記載しているところがあります。保守費用を支払っているのにアフターサポートを受けられない場合、何を保守しているのか疑問が生じます。
見積書に不明点がある場合は、納得できるまで質問することも導入前にやっておくべき確認です。
おわりに
初期費用の低さや使い勝手の良さから、今後クラウド型の電子カルテはさらに広まっていくことが予想されます。
特に、これから開業するクリニックでは、クラウド型電子カルテを選択する施設が増えるでしょう。
電子カルテは長く使用するものです。
導入後に後悔しないためにも、今回紹介した比較ポイントを押さえて電子カルテを選ぶようにしましょう。
株式会社ユヤマ
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