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2022年4月号

  • 電子お薬手帳の指針策定へ‐必要な機能、共有化目指す(厚生労働省)

    情報提供元:薬事日報社

     厚生労働省は、来年1月の電子処方箋の運用開始に向け、来年度に電子お薬手帳の必要な機能要件を整理した指針を策定する。各事業者が個別に電子お薬手帳を開発し、様々な機能が提供される中、最低限備えるべき機能や他サービスとの連携を通じて備えることが望ましい付加的機能を検討し、標準化を図る。電子処方箋システムと連携して一般用医薬品の服薬状況を把握できるようにするほか、医師・薬剤師が患者とやり取りを行えるコミュニケーション機能、他のPHRサービスとの連携機能などの実装にも結びつける。

     電子お薬手帳は、紙のお薬手帳に比べスマートフォンを活用するため、携帯性が高く、長期にわたる服用歴の管理や服用歴以外の運動の記録、健診履歴など健康情報の管理が可能となるのがメリット。ただ、お薬手帳のアプリは各事業者から開発され、様々な機能が提供されている一方、薬局での導入率は高くないのが現状だ。

     そこで厚労省は、異なるシステムが利用される環境下でも全国の医薬関係者で必要な情報が共有化される姿を目指し、次世代型お薬手帳の活用を推進する。来年度予算を活用し、一般用医薬品などに関する情報の効率的な把握・管理の方策、今後活用が期待される機能についての調査を行い指針を策定する方向。

     指針では「既に事業者から提供されているアプリで実装されている機能」と「今後新たに実装が必要な機能」に整理し、電子お薬手帳で最低限備えるべき機能や付加的機能を検討する。

     ▽処方情報等の記録や閲覧機能▽データの書き出し・取り込み機能▽要指導医薬品・一般用医薬品等の記録・閲覧機能――などが実装されているが、利活用が進んでいない部分の課題を洗い出して推進を図る。機能が実装されていても、お薬手帳でほとんど管理されていない要指導医薬品・一般用医薬品は、既存機能の改善を図っていく。

     一方で、▽医師・薬剤師と患者間のコミュニケーション機能▽GS1コードの読み取り機能▽他のPHRサービスとの連携機能――などは実装されておらず、今後新たに開発や普及が必要としている。

  • 薬剤師外来で服薬中止抑制‐支持療法を提案、副作用緩和(日本臨床腫瘍学会学術集会)

    情報提供元:薬事日報社

    臨床腫瘍学会で報告
    日本臨床腫瘍学会学術集会が京都市内やオンラインで開かれ、多職種のタスクシフティングをテーマにしたシンポジウムで、橋田亨氏(神戸市立医療センター中央市民病院院長補佐兼薬剤部参事)が薬剤師外来の効果を示した。去勢抵抗性前立腺癌に使用するエンザルタミドの副作用が重篤化しないように、薬剤師が外来で患者と面談して状況を聞き取り、支持療法などを医師に提案。その結果、副作用による服薬中止を抑制できたという。

     エンザルタミドの副作用として食欲不振や倦怠感、高血圧、皮膚障害などが発現するが、副作用が原因となって服薬を中止する患者は少なくない。

     その対策として薬剤師外来を開始した。同薬を服用する患者の受診日などに薬剤師が外来で面談し、常用薬の確認や生活習慣の聴取、薬物治療に対する意識や理解度の把握、副作用症状の評価などを実施する。

     副作用はCTCAEに基づいて重篤度を評価し、患者から聞き取った状況も合わせて電子カルテに記録して医師にフィードバック。必要に応じて、副作用を緩和する支持療法や検査の実施を医師に提案する。

    エンザルタミド投与患者62人に対して実施した面談の結果を評価したところ、薬剤師は合計881回の面談を行い、提案件数は計476件。そのうち72%が診療に反映された。

     提案内容のうち、最も多かったのが副作用の症状に対する支持療法の提案で224件。診療への反映率は79%だった。用法・用量の提案は176件、検査の提案は64件だった。橋田氏は、薬剤師外来導入前後の服薬中止率を比較した結果、「薬剤師外来は明らかに副作用による服薬中止を減らしていることが分かった」と報告した。

    このほか、同院の薬剤師は医師の負担軽減につながる取り組みとして、プロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM)を実践している。

    その一つが、免疫チェックポイント阻害薬の副作用確認に必要な検査の実施である。同薬の多様な副作用を確認するため、どの時期に検査を実施すべきかというテンプレートを作成しているものの、医師は多忙で検査オーダの入力が漏れることがあった。

     薬剤師が入力漏れを確認し、医師に検査実施を提案していたが、それでもオーダ未入力となる事例があったことから、薬剤師が検査オーダを入力できるPBPMを実施したところ、検査の実施率はほぼ100%になったという。

     シンポジウムでは、行政の立場から眞中章弘氏(厚生労働省医政局総務課課長補佐)が、昨年9月に発出した医政局長通知「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」に言及した。

     通知には、薬剤師の業務について、事前に取り決めたプロトコールに基づき「医師による処方の範囲内での薬剤の投与量・投与期間(投与間隔)の変更を行うことは可能である」と記されている。

     以前からPBPMでの協働は認められていたが、眞中氏は「今回の通知は一歩踏み込んで、プロトコールに基づいて薬剤の投与量等を変更することは事前に医師の了解を得る必要はないとするなど、グレーだった部分をしっかり示した。このことでより進むのではないかと期待している」と強調。「医師の時間外労働の上限規制が適用される2024年4月に向けて、多くの医療関係職種が自らの能力を生かし、より能動的に対応できるよう必要な取り組みを進めることが重要」と呼びかけた。

     薬剤師で弁護士の赤羽根秀宜氏(中外合同法律事務所薬事・ヘルスケア・医療グループ)は、医師との協働について、「現時点では最終的に医師が処方したという手続きをどこかで踏んでおくことが必要」と言及。「医師が最終決定したと言えるスキームを作ることが重要」と指摘した。

     一方、医師側にとっては、医療過誤などが生じた場合、他の職種にタスクシフトしていても責任を負う可能性がある。

     赤羽根氏は「どこまでタスクシフトするのか、本当に安全に実施できるのかという土壌を作らなければ、医師も『本当に大丈夫なのか』と思う。安全な体制を作ることも責任の観点から重要で、それがタスクシフトを推進する要因の一つになる」と指摘。

     「責任のことを考えると、プロトコールに沿った運用ができていたかどうかを事後的に確認できる体制も作っておくべきだろう」と話した。

    癌ゲノム医療にSDM‐難しい意思決定、連携を
     シンポジウムでは、医師や薬剤師ら癌ゲノム医療に関わる多職種の連携のあり方も議論した。

     癌ゲノム医療に携わる医師は、「随所に難しい意思決定があるため、各職種の専門家が特徴を生かして治療に関わる必要がある」と強調。医療従事者と患者が協働で治療方針を決定するシェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)の重要性も呼びかけた。

     癌ゲノム医療は、標準治療を終えた患者や終了見込みの患者を対象に癌遺伝子パネル検査を実施し、癌の原因となっている遺伝子変異を調べてその変異に合う効果的な薬を選択して治療するもの。

     ただ、遺伝子変異を検出できても、変異に合った既承認薬や治験の選択肢は少ない。薬の適応癌種と患者の癌種が異なるため、保険が効かないケースもある。医療者は、患者への説明、検査結果の解釈、治療方針の決定など、難しい意思決定を迫られる。

     医師の吉波哲大氏(大阪大学病院癌ゲノム医療センター)は「医療者でも非常に悩む。患者にとってはさらに難しい意思決定の連続になる」と説明。

     個々の患者の希望を共有して意思決定プロセスを支援するSDMの推進を呼びかけた。

     癌遺伝子パネル検査を実施して遺伝子変異に合う治療薬が見つかったとしても、必ずしも有効ではない。

     19年の厚労省調査では、検査の結果、治療に結びついた患者は約11%。さらに治療が有効だった患者はその一部となる。

     18年の米国の調査で、遺伝子変異に合う治療薬が見つかった人は全体の約8%。そのうち効果が示されたのは約5%ほどだったという。

     癌ゲノム医療が標準治療に劣る結果になった臨床試験もあることから、治験への挑戦についても治験薬の有効性や安全性などのほか、患者自身の希望、意欲などを丁寧に確認することが求められる。

     吉波氏は「候補となる治療薬が見つかりましたと言ってしまうと、患者は飛びついてしまう。有効性はなかなか担保しづらいため、勧め方や提案の仕方は、本当にデリケートで、口調や話し方が非常に重要になる」と説明。「医師1人で担うのは難しいため、ぜひ薬剤師が冷静に客観的なデータを示すなど、多職種のいろいろな視点から検査結果を解釈してもらえると、患者に説明する主治医は気が楽になる」と話した。

     上本剛氏(国立がん研究センター東病院薬剤部)は、癌ゲノム医療で薬剤師が果たすべき役割を話した。

     同院を含む癌ゲノム医療中核拠点病院11施設は、癌ゲノム医療における治療選択肢を増やすため、既承認薬を適応外使用して効果を検討する臨床研究を19年に実施した。

     賛同を得られた製薬企業から治療薬の無償提供を受け、マッチした遺伝子変異が見つかった患者には、試験の人件費など一定額を支払ってもらうことで治療薬を提供する仕組み。患者からの申し出を受けて、未承認医薬品等を迅速に保険外併用療養として使用できる患者申出療養制度のもとで実施した。

     薬剤師は医師のレジメン申請の補助、登録のほか、オーダー後の処方内容の確認や患者への服薬指導などの業務を担当した。

     上本氏は、基本的に各診療科は臓器別に構成されているため、癌遺伝子パネル検査を通じて抽出された専門臓器以外の薬の使用について「医師は不慣れな場合があり得る」と説明した。

     同院は治療開始前にカンファレンスを実施し、本来の適応で薬を使用した経験のある他の医師や薬剤師から担当医に注意事項や副作用管理に関する情報を提供しているという。

     適応外使用であったとしても「基本的には既承認薬を添付文書通りに使用するため、薬剤部は薬の扱いに慣れているというメリットがある。必要な情報を薬剤師が提供できる場面があるはず」と話した。