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2022年7月号

  • 24年度内に全薬局が導入‐電子処方箋の目標定める(厚生労働省)

    情報提供元:薬事日報社

     厚生労働省は27日、来年1月から本格運用を開始する電子処方箋について、来年3月末時点で全体としてオンライン資格確認等システムを導入した施設の7割程度の導入を目指す方針を公表した。オンライン資格確認等システムを導入した施設のうち、来年度内に9割程度、2024年度内には全ての医療機関・薬局の導入を目標に定めた。

     数値目標は、同日の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」で公表したもの。電子処方箋に関する法改正事項などを示した改正医薬品医療機器等法が20日に公布されたことから、今回初めて導入の数値目標を掲げることにした。

     来年3月末でオン資を導入した施設の7割程度の導入を目標とし、秋口から行うモデル事業で運用改善を行い、医療機関や薬局の使いやすさを高めて導入を進め、来年度内には9割程度、24年度内には全ての医療機関・薬局の導入を目標とした。ただ、これらの目標は新型コロナウイルス感染症対策など個別の医療機関や薬局の事情を加味し、必要に応じて見直していく。

     厚労省は、今年度予算で電子処方箋整備に約383億円を計上。昨年12月の規制改革推進会議では、電子処方箋システムの稼働を見据え、紙処方箋から電子処方箋への全面的な転換を実現するため、電子処方箋システムの医療機関・薬局への導入、整備予定の処方・調剤情報のシステムへの登録数に関する年度ごとの数値目標を設定し、毎年度更新することとしていた。

     この日の作業部会では、猪口雄二構成員(日本医師会副会長)が電子処方箋の導入に向けてセキュリティの問題を指摘。「光ファイバーが引けない地域があり、セキュリティがとても弱い。国として医療機関に対するセキュリティに責任を持ってもらいたい」と対応を求めた。

     関口周吉構成員(日本チェーンドラッグストア協会理事)は「ハード面の導入の目安はほぼついているが、電子署名のHPKI発行が律速段階であることが懸念される。来年1月から運用開始だが、HPKIの認証を持たない薬剤師は調剤ができないとなれば一番の問題になる」と指摘した。

     孫尚孝構成員(ファーマシィ医療連携部部長)は、「HPKIカードの発行料が非常に高額であるのが問題。日本薬剤師会に検討してもらいたい」と要望した。

  • 診断関与、薬剤師に要請‐医師診断もタスクシェアで

    情報提供元:薬事日報社

     横浜市等で開かれた日本プライマリ・ケア連合学会学術大会のシンポジウムでは、診断エラーを防ぐ医師と薬剤師の連携をテーマに議論が行われた。医師は、「もはや診断は医師個人が行うものではない」と強調。薬の副作用による症状発現の可能性を指摘するなど、チームの一員として薬剤師の診断への関与に期待を示した。薬剤師からは「臨床推論の能力を磨いたり、意識や考え方を変える必要がある」との声が上がった。

     医師の綿貫聡氏(東京都立多摩総合医療センター・総合診療センター)は、「チームとして診断に向き合うことが重要」と言及。医師業務のタスクシフトやタスクシェアが進む中、「診断も例外ではない。診断においても業務と権限の委譲が必要。多職種の方にもう一歩診断に関わっていただけないか」と呼びかけた。

     薬剤師に向けて「診断エラーは多重の背景が重なって発生する。特に医師が弱点としている薬剤性の鑑別診断の見落としや診断の遅れについて、薬剤師が活躍できる幅は広い」と説明。医師が副作用や相互作用を見落としている時などに、その可能性を指摘するよう求めた。

     医師の原田拓氏(昭和大学江東豊洲病院総合診療科)も同様に、「もはや診断は医師個人で行う時代ではない。高齢化によって複雑性を増す患者ケアにおいて医師は薬剤だけにフォーカスできない。安易に薬剤性と決めつけたり、認知エラーで他の可能性を見逃したりすることも多い」と報告。「薬剤性の診断は添付文書で解決するほど簡単な話ではない。どの薬でどの時期にどんな症状が出るのか、薬ごとに違うため多様性に富む」と述べ、「医師1人で判断するのは不可能に近い。医師と薬剤師が相談しやすい環境やシステム構築が重要」と語った。

     一方、薬剤師の榎本貴一氏(練馬光が丘病院薬剤室)は「薬剤師が処方の見直しについてタスクシェアすることで、薬剤が関連する診断エラーの予防に貢献できる」とし、「診断は医師だけで行うものという認識を改めることが重要」と強調。薬剤師が診断に関わるには「薬剤有害事象の頻度や症例報告を検索する能力や、診断における薬剤性の可能性について言及する訓練も必要。臨床推論の能力や、薬剤性と薬剤性以外の鑑別について議論する能力も重要になる」と話した。

     診療所に勤務する薬剤師の八田重雄氏(多摩ファミリークリニック)は、外来診療の同席や訪問診療の同行で、医師の診療を支援していると報告。医師に近い距離で副作用や相互作用の情報を提示したり、適切な治療薬を提案したりすることが、診断エラー低減に役立つ可能性を示した。

     シンポジウムでは、診断をめぐる医師と薬剤師の良好なコミュニケーションのあり方も論点になった。

     榎本氏は「薬剤師として薬剤有害事象の見逃しは避けたいが、不確実性がある中で指摘しにくい」と言及。

     医師との論争を回避するため薬剤師は「有害事象が軽微な場合などはそのまま経過観察したり、確実に有害事象と評価できるまで経過観察したりすることも少なくない」とし、「薬剤師が診断するのではなく、診断における重要な情報を提供するという認識に改めるよう後輩を指導している」と語った。

     綿貫氏は「医師は決断することが多く、知らず知らずのうちに権威勾配が生じやすい。多職種は医師にものを言いづらい。それを認識してコミュニケーションを取ることが医師側に求められる」と投げかけた。