用法ラインの配色パターンに「統一」は必要ないのか?

「分包紙に引くラインの色、なぜ統一してくれないの?」と思ったことのある薬剤師の方は多いのではないでしょうか。「患者さんによる取り間違いや、施設向けのセットし間違いなどのリスクもあるのでは?」という声もあるかもしれません。
今回のコラムは、そんな用法ラインの配色パターンに関するテーマをお届けします。
分包紙への印字機能とともに進化したカラーライン
皆さんもご存じの通り、分包紙には朝・昼・夕の服用時点にあわせた色のラインを分包機で引くことができます。すべての分包紙で引かれているわけではありませんが、患者さんが用法を間違えないための工夫としておなじみですね。そもそも、いつ頃からこのようなラインが引かれるようになったのでしょうか。
実は、分包機に「印字装置」と称するオプションが装備されだしたのは元号が平成に変わる前後のこと。当初は黒単色での対応でしたが、医薬分業の進展とともに保険薬局で服薬コンプライアンスが盛んに謳われ始めたこともあり、平成15年~17年頃には2色や4色のカラー印刷が可能になりました。
病院やクリニックで受け取っていた薬が、市中の保険薬局に移っていくことで、「服薬コンプライアンス」という付加価値を提供しようという意思の表れだったとも言えるのではないでしょうか。
ルールなく運用されてきた配色パターンの実態とは?
実際の配色パターンはどのような運用になっているのでしょうか。なんとなく「朝は赤」といったように、人それぞれのイメージがあるかもしれませんが、それは普遍的なものなのでしょうか。この疑問について、興味深いデータが2点あるので紹介します。
一つは千葉県薬剤師会と千葉県病院薬剤師会による「調剤の手引き」(2016年)*1 。この資料によれば薬局(約1,100施設,服用時点によって回答数は異なる)「朝=赤系(72.3%)」「昼=黄系(45.2%)」「夕=青系(60.1%)」「就寝前=黒系(35.9%)」と、明らかな色系統の偏りをみせており、トップの色系はすべて病院でも同じ。
ただし、病院で特徴的なのは過半数で「色なし」、つまりラインを引いていないとの回答です。おそらく院外処方率が高くなって以降、病院での分包は主に入院患者のものであり、病棟でしっかり管理されているからではないかと想像します。
配色パターン問題を世に問う論文の存在
もう一つのデータは、ずばりこの「配色パターン」の問題を世に問うた田中秀和らの論文に掲載されています。
「一包化された分包紙に付す色線の配色パターンに関する調査(田中ら,2021)」と題した論文*2 にあるアンケート結果(用法ごとに色線を設定している施設,n=45)によれば、「朝食後=赤系(66.7%)」「昼食後=黄系(28.6%)」「夕食後=青系(50.0%)」「就寝前=黒系(28.6%)」が最多の回答となっています(図)。

いずれの服用時点もトップの色系は先述の千葉県のデータ(調剤の手引き)とまったく同じ結果です。しかも、やや低値だった昼食後の黄系も、調剤の手引きにはなかった緑系を加えれば54.8%と、就寝前以外はすべてトップの色系が50%超を占めます。
この結果をどう捉えるべきでしょうか。どうやら、服用時点と色系との関係には、圧倒的とは言えないものの一定の偏りが存在するようです。
複数の医療機関や保険薬局を使うことはリスク?
田中らの論文が、配色パターン問題を真摯に取り上げていると感じたのは以下の点です。
- ① 配色パターンの統一への賛否やその理由も尋ねている
- ② 未統一である現状のメリットとデメリットをフリーで記述させており、配色パターンの背景に切り込んでいる
当然、配色パターンが統一されていないがゆえのリスクは常に潜んでいます。病院や保険薬局など調剤側にも、調剤を受ける病棟・高齢者施設や患者側にも、機器の操作ミス、トレイへのセットミス、分包紙の取り間違いなど、勘違いを生じる可能性は否めません。
配色パターンが統一されていれば、異なる医療機関や保険薬局で一包化薬を受けとっても、常に服用時点ごとに決まった色でラインが引かれて間違いづらいでしょうし、持参薬を複数持ち込まれた病院も混乱しないで済む可能性が高くなると考えられます。「統一されていない状態にメリットはない」と、現状を憂いた明確な意見も高い比率で見受けられるほどです。
真の目的は「調剤過誤や患者の服用ミスを減らすこと」
配色パターンが統一されていれば、あらゆる過誤が減少する可能性がある。それがわかっていても、なぜ今まで統一されてこなかったのか。田中論文はそのあたりにも切り込んでいます。
たとえば、患者や高齢者施設の利便性を重視する意見があるとしつつ、「利便性が真に患者から得た意見に基づくとの報告は自由記入内に見当たらず、薬局・薬剤師の思い込みである可能性を否定できない」としています。
もちろん、実際に統一するとなれば現場では過渡期ならではの問題が生じることは予見できます。その点を踏まえたうえで、同じ調査で「配色パターン統一賛成派」が66.3%(大いに16.9%,概ね49.4%,他方反対派は15.6%)にものぼることから、超高齢社会の調剤における具体的な課題として取り上げても良いのではないか、個人的にはそう考えています。
拙稿をお読みになってどう感じられましたか?よければご感想をお寄せください。
文責:森 和明(株式会社ユヤマ学術部)
参考文献
- *1:千葉県薬剤師会 千葉県病院薬剤師会編,“調剤の手引き”,https://www.c-yaku.or.jp/160210_tebiki_TOTAL.pdf
- *2:田中秀和,石井香奈子,若林進.一包化された分包紙に付す色線の配色パターンに関する調査.薬局薬学.2021;13:27-38.
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