クリニック閉院理由と経営リスクのマネジメント

クリニック経営を取り巻く環境は、かつてないほどの激動期にあります。医師の高齢化や後継者不在、深刻化する医療人材の不足、診療報酬改定による影響や物価高騰による資金繰りの難しさなど、さまざまな理由で閉院してしまうクリニックも少なくありません。本記事では、近年のクリニック数の推移に関する統計も交えながら、クリニックの閉院理由と、それらに対応する経営リスクのマネジメント方法について解説します。
クリニック数の推移
まず、近年のクリニック数と倒産件数の推移を示します。
以下は、厚生労働省が公表した「医療施設動態調査(令和7年8月末概数)」の抜粋です。2025年8月末時点で、全国の一般診療所の総数は105,519施設、うち無床診療所は100,336施設でした。※1

引用元:厚生労働省. 医療施設動態調査(令和7(2025)年8月末概数) ※1
近年の医療機関数の推移として、以下の傾向がみられます。
- 病院数は長年にわたり減少傾向が続いている
- クリニック数は全体として微増傾向。ただし、内訳をみると無床のクリニックが増加する一方で、有床のクリニックは減少傾向にある
関連記事:【2025年最新】クリニックの数と今後の推移|開業医の経営課題は医療DX対応が鍵
クリニックの倒産件数の推移
帝国データバンクが発表した最新の調査結果によると、2024年の医療機関の倒産件数は64件でした。これまで最多だった2009年(52件)を大幅に上回り、過去最多となっています。休業・廃業または解散の件数は722件に達し、こちらも過去最多を更新しています。いずれも業態別では診療所が最も多く、倒産は31件、休業・廃業または解散が587件でした。業態別の内訳は以下の通りです。※2
| 2024年 | 病院 | 診療所 | 歯科医院 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 倒産件数 | 6件 | 31件 | 27件 | 64件 |
| 休業・廃業または解散 | 17件 | 587件 | 118件 | 722件 |
帝国データバンク. 医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)をもとに作成
倒産件数の10倍以上もの医療機関が、水面下で休業・廃業または解散を選択している実情が浮き彫りとなっています。特に、近年は新型コロナウイルス感染症流行に関連したさまざまな支援の終了に伴い、診療を続けられなくなった医療機関数は増加し、高止まりしていました。この傾向は2025年に入っても加速しており、過去最多を記録した2024年をさらに上回るペースで推移することが予測されます。
クリニックの閉院理由

無床のクリニックの新規開業が増加する一方で、倒産や休業・廃業・解散など事実上の閉院を余儀なくされる医療機関数も近年増加傾向にあることから、開業医を取り巻く経営環境の厳しさがうかがえます。では、具体的にどのような理由でクリニックは閉院に至るのでしょうか。ここでは主な閉院理由を7つご紹介します。
1.医師の高齢化と後継者不足
日本の開業医の高齢化は深刻で、後継者不在の問題と表裏一体です。
厚生労働省は、2年ごとに日本国内の医師・歯科医師および薬剤師の性別や年齢階級、施設・業務の種別などを調査し、「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」として公開しています。令和6年(2024)年の統計によると、クリニック開業医(診療所の開設者または法人の代表者)のうち70歳以上が26.6%、60代が34.3%を占めています。つまり、開業医の約4人に1人が70歳以上であり、一般的な定年とされる60歳以上の医師は全体の6割を占めているということです。※3
帝国データバンクの調査では「医業承継実態調査」(2020年)の結果を挙げ、「現時点で後継者候補がいない」と回答した診療所経営者は50.8%にのぼると報告されています。開業医の高齢化および深刻な承継者不足は明らかです。※2
多くの先生方は、一般的な定年とされる年齢を超えて現役を続け、地域医療に貢献し続けています。しかし、肝心の後継者が見つからなかった場合、院長先生の引退とともにクリニックは閉院せざるを得ません。結果として地域の医療を担う開業医が減少し、地域コミュニティの医療提供体制に大きな影響を及ぼす可能性があります。
2.医療人材不足
経営の中核を担う後継者の不足だけでなく、クリニック内の人材不足も閉院の理由になり得ます。特に、小規模なクリニックではスタッフ一人ひとりの役割が大きく、医師はもちろん看護師や受付スタッフが欠けると日常業務に支障をきたします。医療業界全体でも慢性的な人手不足が問題となっており、都市部・地方を問わず医師や看護師の確保競争が激化しています。
こうしたなかで、院内の人間関係や労働環境が悪化すると、貴重な戦力であるスタッフの離職につながり、人手不足に拍車をかけてしまいます。スタッフの不満の蓄積やコミュニケーション不足などにより、職場の雰囲気が悪くなってしまうと、モチベーションの低下につながり離職率が高まります。スタッフの大量離職によって十分な医療サービスを提供できなくなれば、患者満足度も低下し、経営維持が難しくなるでしょう。新たな人材の採用・育成には時間とコストがかかるため、慢性的な人手不足に陥ったクリニックは最終的に閉院を選択せざるを得ないケースもあります。
3.資金繰りの悪化による経営難
クリニック経営は、地域医療への貢献であると同時にビジネスでもあることから、資金繰りの安定が非常に重要です。しかしながら、近年の世界的なインフレ傾向は、クリニック経営に多大な影響を与えています。
物価高騰
医薬品、医療材料、検査試薬、光熱費、さらにはクリニックの建築・内装資材費まで、あらゆるコストが上昇しています。
人件費の高騰
全産業的な賃上げの流れに加え、医療業界における看護師や医療事務スタッフの人手不足は深刻です。優秀なスタッフを確保・定着させるためには賃上げが不可欠ですが、これが固定費を増大させ、収益を圧迫しています。
安定した経営を実現するためには、ある程度の患者数を確保して収入を維持し、支出とのバランスを保たなければなりません。資金繰りが悪化すると、院長先生ご自身の収入が減ったり、スタッフへの給与支払いが滞ったりするほか、医療機器への投資もできなくなるため、質の高い医療サービスを提供し続けることが難しくなります。経営難が長引けば、最悪の場合、黒字であっても支払いのタイミング次第で資金ショートを起こし、結果的に閉院に至ることもあります。
4.診療報酬改定の影響
一般企業の場合、物価高騰や人件費の高騰に伴うコスト増を商品価格に転嫁(値上げ)して対応することができます。しかし、保険診療を主体とするクリニックの場合、価格は「診療報酬」という公定価格で決まっているため、コスト上昇分を価格転嫁できず利益の減少に直結してしまう構造にあります。
特に、令和6年度(2024年度)の診療報酬改定では以下の項目が見直され、多くの内科系クリニックにとって大きな衝撃を与えました。
特定疾患療養管理料の見直し
糖尿病・高血圧・脂質異常症が特定疾患療養管理料の対象から除外され、新たに「生活習慣病管理料(Ⅱ)」へ移行することになりました。これに伴い、療養計画書は簡素化されたものの、作成および患者への署名・交付が必須となりました。現場の実務負担が増えた一方で、実質的な算定点数は以前よりも減収となるケースが発生しています。※4
特定疾患処方管理加算の廃止・見直し
症状が安定している慢性疾患の患者に対するリフィル処方および長期処方の推進に伴い、特定疾患処方管理加算の廃止や見直しが行われたことも、クリニックにとっては減収要因となっています。※4
これらの改定が、何とか経営を維持していたクリニックの赤字転落を招き、閉院を検討するきっかけとなっている可能性があります。
5.集患力不足
開業医としてクリニックを経営するにあたっては、地域住民に自院の存在をアピールし、診療圏の患者層に自院の強みや役割を認知してもらうための努力が欠かせません。クリニック経営には医療技術や質の高い診療はもちろん、地域医療マーケティングの視点が必要といえます。万が一、宣伝・広報やサービス展開がうまくいかず患者数が伸び悩むと、収入減によって経営が苦しくなってしまいます。また、一時的に集患に成功しても、患者満足度が低ければ再診につながりにくく、ネガティブな口コミが広がれば新患率の低下にもつながります。
6.経営判断に必要な知識や情報の不足
長期にわたりクリニックを安定経営するためには、医療者としての専門知識だけでなく、経営に関する知識も必要です。経営について体系的に学ぶ機会としては、書籍やセミナー、研修などが挙げられます。
効果的な戦略を立案し、的確な経営判断を下すためには、診療データの収集・分析も欠かせません。患者数やレセプト枚数、患者の待ち時間や曜日ごとの動向、設備や人員の稼働率など、多岐にわたるデータを正確に取得する必要があります。しかし、日々の診療に追われて診療データに基づく経営分析を行わず、勘や経験に頼ったクリニック経営をしているケースも少なくありません。気付いたときには収支悪化に陥っていた、経営面の知識不足や情報不足によって黒字経営のチャンスを逃したということがないよう、客観的なクリニック経営が求められます。
7.周辺環境の変化や政府方針への対応力
これまで順調に患者数を確保できていて経営が安定していたクリニックでも、その状況が永続する保証はありません。地域の人口減少や高齢化、競合となるクリニックの新規開院など、外的な環境変化によって患者が減少する可能性があります。その結果、周辺環境の変化についていけず最終的に閉院へと至るケースも考えられます。
また、医療DXや地域医療構想を始め、政府が推進するさまざまな施策に柔軟に対応できるかどうかも重要です。令和6年度診療報酬改定でいえば、医療DX推進体制整備加算や地域包括診療加算など、政府が推進する方針に準じた加算を取りこぼしてしまうのは、重大な機会損失といえます。
閉院を含む経営リスクのマネジメント

クリニックを取り巻く経営リスクに適切に対処し、閉院といった事態を防ぐためには、日頃から以下のポイントを意識することが大切です。
1.定期的な経営分析の実践
クリニックの安定経営を実現するには、収支バランスや予算管理といった経営に関する基本的な知識が不可欠です。毎月どれくらいの新患・再診があれば黒字を維持できるのか、固定費を含め支出はいくらに抑えるべきか、そのために具体的に何をすべきかといった戦略を立てる際に、経営知識が役立ちます。
また、的確な経営判断を下すためには、自院の経営指標を可視化し、さまざまな診療データを収集・分析する必要があります。データの収集・分析には、電子カルテや経営支援ツールが活用できます。
特に、現行の経営戦略で目標とする業績が達成できていない場合は、思い切って戦略そのものを練り直すことも重要です。必要に応じて外部の経営コンサルタントや専門家に相談したり、開業後も定期的に経営状態をチェックしたりすることで、将来の閉院リスクを回避することができます。
関連記事:クリニックにおける経営分析の基本と電子カルテによる実践手法
2.認知拡大・マーケティングの実施
現代の医療機関経営では、地域の患者に自院の存在やサービス内容を知ってもらい、信頼して選んでもらうためのマーケティングが欠かせません。ターゲットとなる患者層への認知拡大策としては、ホームページやSNSでの情報発信や、地域住民向けの健康イベントの開催などが挙げられます。また、質の高い受診体験やニーズに合致したサービスの提供は、患者満足度の向上に直結します。再診率の向上だけでなく、ポジティブな口コミによって「患者が患者を呼ぶ」好循環が生まれます。
さらに、クリニックの強みや地域における役割を明示するのに役立つのが、2025年(令和7年)4月から施行された「かかりつけ医機能報告制度」です。自院が提供するかかりつけ医機能として、対応可能な診療領域および対象疾患などを都道府県知事に報告します。報告された情報は、「医療情報ネット(ナビイ)」などを通じて公表され、地域住民や患者が自身のニーズに合わせて、適切な医療機関を選択できるようになります。※5
関連記事:2025年4月施行!「かかりつけ医機能報告制度」完全解説|クリニックに求められる役割と対応
3.診療報酬改定や政府方針への柔軟な対応
前述のように、令和6年度診療報酬改定は特に内科系クリニックにとって大きな影響がありましたが、診療報酬全体では+0.88%のプラス改定であり、適正化された項目や新設された加算など、クリニックにとって良い影響のある改定内容も含まれています。※4
例えば、医療DXの推進を後押しする医療DX推進体制整備加算や、「かかりつけ医」としての機能を評価するための地域包括診療加算などが挙げられます。政府方針に柔軟に対応し、診療報酬の加算を適切に取得することは、クリニック経営の安定化につながります。診療報酬改定の動向や制度変更に関する情報収集を徹底し、届出や申請の責任者を設置することなどが、クリニック経営の強化につながります。
関連記事:令和7年10月改正!医療DX推進体制整備加算について
関連記事:【2024年度改定対応】クリニックのかかりつけ医機能を評価する「地域包括診療加算」とは?算定要件や施設基準を徹底解説
4.スタッフとの適切なコミュニケーション
スタッフとの良好な関係構築は、スムーズで安定したクリニック運営の土台です。そのためにも日頃から適切なコミュニケーションを取り、スタッフの意見や要望を積極的に経営改善に役立てるのがよいでしょう。
働きやすい職場環境づくりは離職率の低下につながり、結果的に人材確保コストの削減や医療サービス品質の維持にも寄与します。院内の雰囲気が良くなることで、患者にとっても居心地の良いクリニックとなり、患者満足度やリピート率の向上が期待できます。スタッフ・患者双方から信頼される職場環境を育むことも、経営におけるリスク管理の重要なポイントといえます。
5.後継者の確保
院長先生ご自身が高齢となり、今後の経営継続が難しくなる場合に備えて、早い段階から後継者候補を見つけておくことも重要です。クリニックの存続を願いながらも、状況次第では閉院もやむなしと考えておられる先生方も少なくないかもしれません。しかし、親族内での承継が減少している昨今では、自院に勤務する医師や地域の若手医師など、第三者への事業承継(M&A)をはじめ、さまざまな選択肢があります。後継者の不在による閉院を避けるためには、計画的かつスムーズに事業承継を進められる体制を整えておくことが望ましいでしょう。早めに後継者問題に着手することで、患者にとっては診療の継続の安心感があり、勤務するスタッフにとっては失職や転職の不安がなくなります。結果的に、長期的なクリニック経営の安定につながるといえます。
ユヤマの電子カルテのオンラインデモ

クリニック経営の効率化や課題解決には、電子カルテをはじめとするITツールの活用が有力な手段となります。ツールの選定においては、「自院が求める機能が搭載されているか」「誰もが使える操作性か」「いざというとき頼れるサポート体制か」などを確認するため、デモンストレーションの実施をおすすめします。
当社の無床診療所様向け電子カルテシステム「BrainBox」シリーズは、開業準備や日々の診療で多忙な先生方にも気軽に体験していただけるよう、オンラインデモを随時実施しています。

時間や場所の制約なく電子カルテを体験できる
当社のオンラインデモは、先生のご都合の良い時間帯に合わせて、30分から1時間程度で効率よく実施できます。PCまたはタブレットとインターネット環境があれば、どこからでも接続可能です。体験会のようにご足労いただく必要はなく、休憩時間や診療終了後などのスキマ時間も活用いただけます。
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オンラインデモでは、製品の特徴や導入事例、実際の使い方を丁寧にご紹介します。気になることがあれば気軽にご質問ください。また、当社の営業担当者が、現在抱えている経営課題(事務負担の軽減、集患対策など)や目指しておられる診療スタイルなど、ご要望を丁寧にヒアリングします。その上で、画一的な説明ではなく、貴院に最適な「BrainBox」の活用方法と具体的な運用イメージをご提案します。
クリニックの閉院を回避するために
本記事では、クリニック数の推移や倒産件数に関するデータとともに、閉院理由と経営リスクのマネジメントについて解説しました。病院や有床診療所が減少傾向にあるなかで、無床診療所は増加傾向が続いています。その一方で、医師の高齢化や後継者不足、医療人材の不足、物価高騰や人件費高騰による資金繰りの悪化、診療報酬改定による影響などさまざまな要因が絡み合い、やむなく閉院してしまうケースも増えています。
地域の医療を支えてきたクリニックの閉院は、転院を余儀なくされる患者にとって、治療の中断や健康への影響にもつながりかねません。経営に関する知識を身に付け、定期的な経営分析を実施することはもちろん、マーケティングの強化や早めの後継者確保などにより、クリニック経営の安定化を図ることが大切です。
参考資料
※1 厚生労働省. 医療施設動態調査(令和7(2025)年8月末概数).
※2 帝国データバンク. 医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年).
※3 厚生労働省. 令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況.
※4 厚生労働省保険局医療課. 令和6年度診療報酬改定の概要【外来】
※5 厚生労働省. 医療機関の皆様へ かかりつけ医機能報告制度が始まります!
株式会社ユヤマ
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