クリニックのかかりつけ医機能を評価する地域包括診療加算について
クリニックの主な収入源は、患者さんの診療や治療を行うことで得られる診察料と、公的な機関に申請して得られる診療報酬です。
診療報酬は医療行為ごとに点数が決められており、1点は10円として換算されます。
クリニックが対象となる診療報酬のなかには、「地域包括診療加算」と呼ばれるものがあります。
本記事では、クリニックのかかりつけ医機能を評価する地域包括診療加算についてご説明します。
「地域包括診療加算」とは?
地域包括診療加算とは、かかりつけ医機能を持つクリニックを評価するための加算方法で、クリニックの収益に関与する要素です。
厚生局に届け出を提出することで、再診料の計算をする際に地域包括診療加算1・地域包括診療加算2の加算が可能になります。
下記、対象となる患者さんの症状です。
- 高血圧症
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 慢性心不全
- 慢性腎臓病(透析を行っていないもの)
- 認知症
これらのうち、2つ以上の疾患を持つ患者さんが対象です。
また、地域包括診療科さんは1と2で、下記のように点数が異なります。
- 地域包括診療加算1:25点
- 地域包括診療加算2:18点
ただし、どのようなクリニックでも申請できるものではなく、後述する研修や届け出を行った医療機関に限ります。
地域包括診療加算による患者さんのメリット
こちらでは、地域包括診療加算によって得られる患者さんのメリットをご紹介します。
医療費の削減
先述した症状を持つ患者さんを治療する際、病院など大規模な医療機関では複数の医師が診察を行うことがあります。
しかし、病院と比べると規模が小さいクリニックでは、それぞれの患者さんに同じ医師が診療を行います。
いわゆるかかりつけ医と呼ばれる存在で、患者さんのことをよく理解しているため治療効率が改善されます。
「〇〇さんは高齢だから大きな声で話す」「〇〇さんは咀嚼がしにくい」といった情報は、かかりつけ医が管理しておくべき情報です。
診察の負担が減る
大規模な医療施設では、同じような検査を何度も受けさせられることがあります。
いわゆる過剰検査と呼ばれるもので、ほかには薬を過剰投与される可能性も少なからず存在します。
これは複数の医師がひとりの患者さんを診療することであり、都度患者さんの状態を確認することが原因です。
診療や検査の数が増えると、患者さんは金銭面だけではなく、心身にも大きな負担がかかります。
そのため、医療機関は最小限の診療回数と薬の処方で患者さんを回復させなければなりません。
かかりつけ医は患者さんの情報を理解していることから、診療の回数を最小限に抑えることができます。
また、薬についても最適な数を処方しやすいため、患者さんは早期回復が期待できるでしょう。
このように、地域包括診療料加算はかかりつけ医に診療を依頼するため、患者さんはさまざまなメリットを得ることができます。
地域包括診療加算に関する研修・届出
地域包括診療加算を受けるためには、所定の研修を受けなければなりません。
また、研修は2年ごとに受講しなければならず、都度研修を受講する必要があります。
下記、届け出に必要なものの詳細です。
区分 | イ.項目 | ロ.届出対象 | ハ.2年ごとに届出を行うこととされている要件(概要) | |
基本診療料の施設基準 | 初・再診料 | 地域包括診療加算 | 前回の届出から2年が経過しようとする保険医療機関 | 当該医療機関に、慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了した医師を配置している。 |
特掲診療料の施設基準 | 医学管理等 | 地域包括診療料 | 前回の届出から2年が経過しようとする保険医療機関 | 当該医療機関に、慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了した医師を配置している。 |
また、届け出を出すためには、厚生労働省が定めている9つの条件をすべて満たしている必要があります。
一例として、クリニックであることや慢性疾患の指導に係る適切な研修を就労した担当医を配置していることなどが挙げられます。
これらの条件を満たしていない場合、厚生労働省が定めている辞退の届け出を提出しなければなりません。
地域包括診療加算はクリニックの経営に関わる重要な要素であることから、条件を満たして報酬を受け取りましょう。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「地域包括診療加算及び地域包括診療料の施設基準に係る研修実績の届出について」
おわりに
本記事では、クリニックのかかりつけ医機能を評価する地域包括診療加算についてご説明しました。
地域包括診療加算は特定の機能を持つ医療機関に、点数を加算するものです。
こちらを対象となる機関に申請すると、点数に応じた診療報酬を受け取ることができます。
対象となる症状は高血圧症・糖尿病・脂質異常症・慢性心不全・慢性腎臓病(透析を行っていないもの)・認知症が挙げられます。
加算を受け取るには特定の研修と、2年ごとの更新が必要となる点には注意が必要です。
条件を満たしているにもかかわらず申請をしていない医師は、これを機に申請をしてみてはいかがでしょうか。

株式会社ユヤマ

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