2025.08.19薬剤師 , 調剤機器

薬剤師に期待される「医薬品リスク管理計画(RMP)」の活用とは

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医療現場で患者さんの健康を守る薬剤師にとって、医薬品の知識は不可欠です。添付文書だけでは知りえない情報として重要なのが「医薬品リスク管理計画(RMP)」です。

今回はRMPの基本から、薬剤師のDI業務や服薬指導での具体的な活用方法までをお伝えします。

リスク管理計画(RMP)とは


リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)とは、製薬企業が医薬品の開発段階から市販後まで一貫してリスクを管理するための計画で、厚生労働省に提出する文書から構成されています。その医薬品が持つ重要なリスクとそのマネジメント計画を提示し、それに対してどのような安全対策を講じるかを関係者間で共有する役割を果たします。

リスク管理計画(RMP)は、各医薬品について「安全性検討事項」「医薬品安全性監視計画」「リスク最小化計画」という3つの要素をまとめたものです。

安全性検討事項(Safety Specification)

医薬品ごとに特定されたリスクや不足している安全性情報についてまとめた項目です。

  • 重要な特定されたリスク:これまでに根拠をもって特定された、有害な事象のリスク
  • 重要な潜在的リスク:関連性が疑われるものの、まだ明確な根拠が確認されていないリスク
  • 重要な不足情報:RMP作成時点において、医薬品の安全性評価を行う上で情報が不足している領域

医薬品安全性監視計画(Pharmacovigilance Plan)

安全性検討事項で挙げられたリスクや不足情報に対し、どのような方法で情報を収集・評価していくかを定めた計画です。

  • 通常の活動:副作用症例の収集(自発報告など)など、恒常的に実施される情報収集活動
  • 追加の活動: 市販直後調査、使用成績調査、製造販売後臨床試験など、医薬品の特性に応じて個別に実施される情報収集活動

リスク最小化計画(Risk Minimization Plan)

収集された情報に基づき、医薬品のリスクを最小化するために実施される具体的な活動計画です。

  • 通常の活動:添付文書の作成・提供、患者さん向け医薬品ガイドの提供など、一般的な情報提供活動
  • 追加の活動:市販直後の情報提供活動、適正使用のための資材(適正使用ガイドなど)の配布、特定の患者層への使用条件の設定など、より積極的にリスクを軽減するための情報提供や使用制限に関する活動。RMPマークが付された資材がこれに該当する

リスク管理計画(RMP)の目的

RMPの主な目的は、医薬品のベネフィットとリスクのバランスを最適に保ち、患者さんがより安全に医薬品を使用できるよう支援することです。具体的には、以下の3点が挙げられます。

  1. ①開発段階から市販後まで、医薬品の有効性と副作用を含むリスクを継続的に評価し、新たなリスクの早期発見に努める
  2. ②収集・蓄積された情報に基づき、必要な安全対策をタイムリーに講じ、副作用の発現を未然に防いだり、重症化を回避したりするための具体的な計画を定める
  3. ③小児や高齢者への使用、長期投与など、特定の条件下で懸念されるリスクや情報が不足している領域について、追加的な情報収集を計画し、より詳細な安全情報を得ることを目指す

薬剤師はRMPをどのように活かしていくべきか


薬剤師はRMPに記載された情報をDI業務に積極的に取り入れることで、患者さんへの医薬品情報の提供や服薬指導の質を向上させ、医薬品の安全使用に貢献できます。主に以下のような場面での活用が推奨されます。

情報源としての活用

新薬の採用検討時や新しい情報を得る際、RMPはリスクに特化した情報源として非常に有用です。添付文書だけでは予測しにくい未知の副作用のリスクや、特定の患者群における注意点などを事前に把握できます。

PMDAのウェブサイトなどでRMP本体や関連資材を確認することで、製薬企業がその医薬品のリスクをどのように評価し、管理しようとしているかを深く理解できます。

患者さんのモニタリングの充実

RMPに記載されている「重要な特定されたリスク」や「重要な潜在的リスク」を把握し、服薬指導時にこれらの兆候がないか患者さんに問いかけることで、副作用の早期発見につなげられます。

「重要な不足情報」として挙げられている特定の患者群(高齢者や特定の疾患を持つ患者さんなど)に対しては、より重点的な副作用モニタリング計画を立て、積極的に情報収集を行うことが重要です。

服薬指導・情報提供の強化

RMPに基づいて作成された「RMPマーク」付きの資材(患者向け医薬品ガイド、適正使用ガイドなど)は、服薬指導時の強力なツールとなります。これらの資材を患者さんに提示し、内容を丁寧に説明することで、患者さんの理解を深め、適切な服薬行動を促すことができます。

資材を熟読し、RMPの内容を踏まえた上で服薬指導を行うことで、より専門的で質の高い説明が可能になり、患者さんの不安軽減にもつながるでしょう。

医療事故防止への貢献

RMPには、過量投与や投与量不足を防ぐための表示・容器包装の工夫などが記載されている場合があります。これらの情報を患者指導に取り入れることで、服薬過誤の防止に役立てることができます。

副作用報告と情報共有

RMPで示された重要なリスクや不足情報に関する副作用が疑われる事例が発生した際には、積極的に副作用報告を行うことで、医薬品の安全性情報の蓄積に貢献します。

RMPの情報を院内で共有し、医師や看護師など他の医療従事者との連携を強化することで、医療チーム全体での医薬品安全管理体制を構築できます。

まとめ

薬剤師がRMPを深く理解し、その情報を日々のDI業務や服薬指導に積極的に活用することは、患者さんへの適切な医薬品情報の提供、副作用の早期発見、そして医薬品の安全で効果的な使用を促進するために欠かせません。

RMPを活用することで、薬剤師は医療現場における医薬品リスク最小化の重要な担い手として、その専門性を最大限に発揮できるでしょう。

 

<編集後記>

  • ドラッグラグの解消がRMP策定の背景にあると思われます。医療現場を預かる薬剤師さんの双肩にかかる責任は増し、期待も大きくなる一方ではないでしょうか。(学術部:K.M)
  • 充実した服薬指導は薬剤師さんの重要な役割の一つ。なるべくRMPを最大限活用できるようになると、患者さんの安心感はより高まっていくと感じました。(ライター:N.K)

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タグ : 薬剤師 RMP
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