2023.01.17調剤機器

散薬分包機の歴史

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日々の調剤業務に欠かせない「分包機」は、誕生から現在に至るまで医療や社会の変遷、技術の進歩とともに常に変化を遂げてきました。

本記事ではその歴史をたどることで、これから分包機が担うべき役割について考えたいと思います。

黎明期:機械化による利便性の追求から誕生した分包機

分包機が開発される以前は、薬剤師やクリニックの職員が手作業で薬包紙を折り、一包ずつまとめていました。このような煩雑な手作業を解消するため、一連の作業を機械化する開発が進み、1960年代に分包機として世に出されたことから歴史が始まります。

日本初となるロータリー式分包機は、1961年に開発されました。薬品を入れるマスが並ぶ円盤をモーターで回転させるとマスに付属する弁が開き、薬品が薬包紙にセットされて自動で包装されるという仕組みです。実際に大学病院に納入され、実用化に至りました。

これを皮切りに、各社から次々と分包機が販売されるようになりました。湯山製作所では、1966年に業界初のスライドタイプ分包機「TYPE5(自動分割分包機)」を販売開始しています。

1970年代に登場した自動分包機には、経過経路に付着する散剤を吸引できる掃除機が装備され、コンタミネーションを防止する機能が備わりました。その後、掃除機は現在のように機器に内蔵されるようになります。1973年には、湯山製作所が業界初のR円盤式分包機「YS-42」を販売開始しました。

このように、分包機は誕生から20年ほどで、各社が調剤業務を行う現場の声に耳を傾けながら技術を高めていくことで、急速に発展していったのです。

転換期:利便性の追求から“患者さん志向”へ

1980年代以降、分包機の機能はさらに飛躍的な向上を遂げていきます。それまでは散剤と錠剤を一包化するだけでしたが、「散剤のみ」「錠剤のみ」「散剤と錠剤を混合させる」といった選択が可能になり、処方内容に応じた柔軟なオペレーションを実現できるようになりました。

また、コンタミネーションを防止する清掃システムも、付着する部位に合わせて吸引する機能が装備されるようになり、利便性はもちろん、安全性も高まっていきました。

同時に、この時期から分包機の変遷は明確な転換期を迎えたと言えるでしょう。分包機のルーツは調剤業務における利便性の追求に端を発していますが、1980年代後半からは徐々に患者さんに対して「いかに安心・安全の処方を行えるか」という視点から開発が進められるようになりました。

技術の進歩に伴い、分包紙に患者さんの名前や薬品名、用法・用量などを印字できるようになるなど、薬の取り違いや誤った用法・用量の防止といった安全な服用に貢献する機能の装備が進みました。

1990年代後半になると錠剤カセット付きの散薬分包機が開発され、大型の錠剤分包機がなくても錠剤を自動で分包できるようになります。分包機で調剤業務を効率化し、薬剤師は正しく調剤できたかどうかの鑑査や患者さんへの服薬指導に時間を充てるという現在の流れに繋がっていきました。

そして未来へ――これからの分包機が担うべき役割

 

散薬分包機は粉薬の量を細かく調整して服用する日本で独自に発達した機器であり、海外ではあまり例を見ません。そういった意味でも、分包機の誕生からの歴史は非常に興味深いと言えるのではないでしょうか。

各社が独自技術を以て互いに切磋琢磨しながら薬剤師のニーズに応えることで、分包機は今日まで進化してきました。初めは分包の精度や速度、機械の小型化、清掃のしやすさなどの機能面で競い合っていましたが、さらに自動化が進むにつれて、間違いなく分包できたことのエビデンスを残せる仕組みの開発が進みました。

2015年には薬剤の選択、秤量、分包まですべてを自動化した調剤ロボットが登場し、薬剤師が専門性を活かして患者さん一人ひとりに向き合う時間の創出に貢献しています。これからも分包機は、社会の変容に寄り添いながら医療の未来を担う薬剤師を縁の下の力持ちとして支え続けていくことでしょう。

 

<編集後記>

  • 過去に触れることで現場営業をしていた頃を思い返し、懐かしくまた初心に返り気持ちを引き締めようと思いました。(編集担当:K.S)
  • こうして分包機約60年の歴史をさかのぼると、それだけ先生方に使っていただけていることに改めて感謝の気持ちが大きくなりました。(編集担当:M.S)
  • 近年さまざまなプロダクトが機能性よりもユーザー志向になってきていますが、分包機も例に漏れず、薬剤師の方々や患者さん目線で改良が重ねられていることを改めて認識できました。(ライター:N.K)

 

 

※この記事は情報提供を目的としており、株式会社ユヤマ・株式会社湯山製作所の企業としての見解を示すものではございません。記事に関するご意見・ご感想はお気軽にお寄せください。

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タグ : 分包機 歴史
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