2025.08.08クリニック開業

クリニック開業を決めたあとは現職の後任の先生へスムーズに引継ぎを行う

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病院に勤務されている先生の中には、開業を目指す方も多くいらっしゃると思います。開業を決めた際には、物件選びや経営知識の習得だけでなく、実際に開業する前に勤務先に対して退職の旨を伝えることも必要です。

本記事では、クリニック開業を決めたあとに実施する、現職の後任となる先生方へのスムーズな引継ぎ方法について解説します。

引継ぎ時におけるトラブル事例

引継ぎ時には、有休消化及びそれに伴う退職期間に関するトラブルが発生する可能性があります。開業を予定している先生は、有給休暇を利用してクリニックの開業準備を進める方が多い傾向にあります。

しかし、中には引継ぎをせずに有給休暇を使用してから開業する方もいらっしゃいます。有給休暇は労働者の権利であり、民法では期間が定められていない労働契約は退職を申し入れてから2週間で終了することが明記されています。

また、勤務先の病院の中には就労規則に「退職の際は、〇日前に申し出、病院の承認を得ること」と明記していることもあります。勤務医である労働者には上記のような退職期間が設けられていますが、引継ぎをせずに有給休暇の消化や退職をしてしまうと、残されるスタッフや現場に混乱を招いてしまいます。

このような混乱を避けるために、有給休暇や退職までの期間を考慮した引継ぎスケジュールの立案が求められます。

 

参考ページ:法務省ホームページ「民法第627項」

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_2-Se_8-At_627

 円満退職の難しさと重要性

自分のクリニックを開業したいと考えていても、以下の問題から円満退職が難しいことがあります。

医師不足により引き留められる

厚生労働省の調査結果では、令和4年度の医師数は34.3万人であり、令和2年度と比較すると3,600名ほど増加しています。

しかし、病院や診療所によっては、医師が一人退職するだけでも診療体制に大きな影響を与えることがあります。

そのため、退職の意向を伝える際には、後任の確保や引継ぎを考慮し、慎重に計画を立てる必要があるでしょう。

また、そうした医師不足の背景には、医療需要の増加や医師の働き方改革があります。高齢化社会の進展により、患者数は増加の一途をたどっており、それに伴い医療提供の負担も大きくなる一方です。

さらに、長時間労働を改善するための法改正などにより、勤務医の負担を分散させる必要性も生じています。

後任者の負担を考慮する

医師が退職する際、後任者への負担を最小限に抑えることが重要です。特に診療所や小規模の医療機関では、医師の人数が限られており、一人の退職が残るスタッフに大きな負担を強いる可能性があります。

後任者がスムーズに業務を引き継げるよう、以下の配慮が必要です。

  • 引継ぎ期間の確保:退職前に十分な引継ぎ期間を設け、後任者に業務の流れや患者情報を丁寧に伝える。
  • マニュアルの整備:必要に応じて、診療方針やカルテ管理のルールを文書化し、後任者が参照しやすいようにする。
  • 患者とのコミュニケーション:長年のかかりつけ患者に対して、担当医の交代について適切に説明し、安心感を与える。

 

後任者の負担を考慮せずに退職すると、医療の質が低下し、患者の満足度や信頼に影響を与える可能性があります。

円満退職を実現するためには、後任者の立場を考慮した計画的な準備が必要です。

退職時の伝え方によりクリニック開業後にも影響が及ぶ

先述のとおり、勤務先の病院は、医師不足や後任者の負担などを理由に退職を引き留めることがあります。その際に退職を強行すると悪評が広がったり、連携が必要な場合にスムーズなコミュニケーションが取れなかったりする可能性があります。

退職の際には退職理由や退職までのスケジュール、引継ぎ方法・内容などを冷静に話し合うことが重要です。誠実な対応で後任者へ引継ぐことで退職後も良好な関係を維持でき、クリニック開業後でもスムーズにコミュニケーションが取れます。

退職までの流れ

開業が決定し、退職を決めたあとは以下の流れで進めていきます。

1.  退職の意思を上司や院長に伝える

退職は期限を決めて、いつ辞めるのか、それまでにどのような引継ぎを行うのかといった、スケジュールが重要です。

上司や院長に退職の意思を伝える際には、事前に検討しているスケジュールもあわせて、なぜ退職するのかを伝えましょう。

その際、円満退職が出来るように、伝え方には十分に注意しなければなりません。

2.  退職日を決める

上司や院長と協議のうえ、退職に関する了承を得られたら、改めて勤務先と正式な退職日を決めます。場合によっては後任者となる人材を雇用しなければならないことがあるため、お互いの希望に合う落としどころを見つけましょう。

有給休暇が残っている場合は消化するタイミングを決めることもできますが、自分が退職してもスムーズに運営出来るよう配慮しましょう。

3.  引継ぎを始める

退職日が決まり、正式に退職が認められたあとはいよいよ後任者に対して引継ぎ業務を行います。

後任者に迷惑がかからないように、口頭や実演だけでなく、資料などを作成して言語化しておくことも重要です。

退職後は基本的に質問に答えることが難しいため、退職前までに担当業務を漏れなく引継ぐようにしましょう。

4.  備品や借りていたものを返却する

医療機関では健康保険証や職員証、ユニフォームなど、業務のために借りている様々な備品があります。これらの中には紛失したり外部に漏出してしまったりすると甚大な被害が発生するものがあるため、必ずすべて返却しましょう。退職後にうっかり持って帰っていたことが発覚すると、勤務先に迷惑をかけるだけではなく、窃盗と捉えられる可能性もあります。

5.  関係者各位に挨拶回り

勤務中は上司や院長をはじめとしたスタッフだけではなく、院内に出入りする外部の業者の方とも関わりがあったでしょう。

これまでお世話になった関係者に対して挨拶回りをすることも、立派な業務になります。

開業後もお世話になる可能性があるため、これまでの感謝と誠意をしっかり伝えておくことをお勧めします。

おわりに

本記事では、クリニック開業を決めたあとに実施する、引継ぎについて解説しました。引継ぎの際には、経過や処方理由が不十分だった、記載情報に誤りがあった、読解が難しい文章で記載されていたなど、カルテに関するトラブルも発生しがちです。

そのため、引継ぎの有無に関わらず、カルテには常に高い視認性と正確な情報の記載が求められます。

また、勤務環境の医師不足や後任者への伝え方、退職時の伝え方などにより、円満に退職ができない可能性があります。退職の際には、残された先生への負担を最小限に抑え、退職後も良好な関係を維持するために以下の流れで引継ぎを実施しましょう。

  1. 退職の意思を上司や院長に伝える
  2. 退職日を決める
  3. 引継ぎを始める
  4. 備品や借りていたものを返却する
  5. 関係者各位に挨拶回り

クリニック開業を決めたあとは、現在勤務している病院に対して、どうすれば負担を抑えられるのかを考えて引継ぎを実施することが重要です。

 

 

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