2025年3月号
「DX体制加算1」は10点-調剤基本料の評価見直し
手順書や服薬簡素化が重要-高齢者施設での薬剤師介入

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「DX体制加算1」は10点-調剤基本料の評価見直し

情報提供元:薬事日報社

中央社会保険医療協議会は29日の総会で、調剤基本料の「医療DX推進体制整備加算1~3」の点数を引き上げる評価見直しに関する答申をまとめ、福岡資麿厚生労働相宛てに提出した。薬局における電子処方箋の比較的高い普及状況を踏まえ、導入施設を基本とした評価に切り替え、同加算1は現行から3点増の10点とした。4月1日から適用する。

同加算は、オンライン資格確認で取得した薬剤情報等を診療に活用可能な体制の整備、電子処方箋等を導入するなど医療DXに対応した体制を持つ薬局を評価するもの。施設基準として同加算1ではマイナ保険証の利用について「十分な実績」、同加算2では「必要な実績」、同加算3では「実績」を有していることを求めている。

現行施設基準は電子処方箋の導入が進むまでの経過措置としていたが、薬局については今月12日時点で6割を超える施設が電子処方箋の運用を始めており、3月31日までに多施設で導入が見込まれている。そのため、紙の処方箋を含めた調剤情報を登録する手間を評価する観点から経過措置を終了し、電子処方箋を導入した施設を基本とした評価に切り替える。

具体的には、同加算1の点数を現行から3点引き上げた10点、同加算2と3はそれぞれ2点引き上げた8点、6点とする。

施設基準は、電子処方箋により調剤する体制を有すると共に、紙の処方箋を受け付けて調剤した場合も含め、原則として全ての調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録するよう求めた。

算定月の3カ月前のレセプト件数ベースのマイナ保険証の利用率として、同加算1は現行から15ポイント増加した45%以上を求め、同加算2は10ポイント増の30%以上、同加算3は5ポイント増の15%以上を求める。

求められるマイナ保険証の利用率は4~9月に適用されるものとし、10月以降の利用率は7月をメドに検討・設定することとした。

一方、長期収載品の選定療養において患者への薬局の説明にかかる負担を考慮し、特定薬剤管理指導加算3ロの評価見直しも行う。現行の同加算では5点を算定できるが、今回薬局の説明にかかる負担増を考慮し10点に引き上げる。

 

手順書や服薬簡素化が重要-高齢者施設での薬剤師介入

情報提供元:薬事日報社

日本病院薬剤師会近畿学術大会のシンポジウムで関係者は、薬剤師の積極的な介入が高齢者施設における安心で安全な薬物療法につながると報告した。薬剤師が適切な介入を実践する上で、業務手順書作成や服薬簡素化、ケア移行時の情報共有が重要になるとの考えが示された。

育和会記念病院薬剤部の久岡清子氏は、自身も作成に関わった厚生労働省の「『医薬品の安全使用のための業務手順書』作成マニュアル(医療提供を目的とした介護保険施設版)」の改訂版を示し、「実際に施設で活用されている手順書から参考となる部分を抜粋してまとめた。コピーアンドペーストしてそのまま使うことも可能」と説明した。

介護保険対象の高齢者施設では手順書作成は、任意となっている。手順書作成には、薬の専門知識が必要で時間も要することから、作成していない施設は多い。各施設での手順書作成を推進するため、昨年厚労省の補助事業で同マニュアルの改訂版が策定された。

久岡氏は「薬剤師はもっと退院後の高齢者の薬物療法に関心を持つべき」と言及。「薬剤師から高齢者施設職員へ積極的に声がけをして、一緒に手順書を作成してほしい」と訴えた。

慢性期疾患を対象にした療養型病院である三田高原病院の薬剤部で働く谷野巧氏は、患者のアドヒアランス向上や誤薬回避などを目指して実施した服用回数低減の取り組みを紹介した。

昨年5月に日本老年薬学会が発出した「高齢者施設の服薬簡素化提言」を受けて、全患者の定期薬の見直しに踏み切った。

朝の覚醒が悪い高齢者は多い。昼は施設職員数の多い時間帯であることなどから、薬剤師が介入して服薬回数の減少や、朝夕分を含めて処方を昼食後中心にまとめるよう働きかけた。

その結果、看護師から「余裕を持った与薬準備ができるようになった」「用法が減ることで患者と接する時間が増えた」という声が挙がったという。

谷野氏は「服薬回数を減らす取り組みは有益だが、退院後に高齢者施設や自宅で実施するのは難しい。入院中に薬剤師が介入して処方整理しておくことが大切」と見解を述べた。

育和会記念病院薬剤部に所属し、介護老人保健施設で在宅復帰に向けた支援業務も行っている大荒政志氏は、ケア移行時の情報共有の重要性について語った。老健にはケア移行を繰り返した後で入所する高齢者が多く、医療や薬剤情報が欠落していることが多い。大荒氏は、適切な薬物療法を行うため薬剤調整に務めており、薬剤費の低減などにも寄与できたという。

大荒氏は、「老健は病院等からの情報の受け手となる一方で、退所時には情報を渡す側にもなる。薬剤調整や現在の服薬状況、今後確認してほしいことなどをまとめて伝えることが大事」と語った。

やわらぎクリニックの院長で老健でも業務を担う医師の北和也氏は、「高齢化に伴って老健の医療高度化に対応できる薬剤師の需要が増している。中堅薬剤師は、なかなか高齢者施設に目が向かないかもしれないが、活躍できる場なので高齢者施設で働くという選択肢も検討してほしい」と言及。高齢者施設に関わる薬剤師に、看護師等スタッフと積極的にコミュニケーションを図って薬について相談しやすい環境を作ったり、薬剤負担軽減の処方提案を行ったりする役割を求めた。

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