2025年6月号
適切な禁煙治療提供も-電子処方箋の活用例公表
【日病薬 武田会長】専門薬剤師の国家資格化を-制度乱立で質保証に課題
適切な禁煙治療提供も-電子処方箋の活用例公表
情報提供元:薬事日報社
厚生労働省は、薬局が電子処方箋を活用して医薬品の不適切な使用や副作用を防ぐためのプレアボイド事例を公表した。現在電子処方箋に関するホームページ上で10件を掲載しており、マイナンバーカードから過去の薬剤情報を閲覧することで相互作用や重複投薬を回避した事例や、過去の禁煙治療歴から適切な禁煙治療の提供に結びついた事例などが紹介されている。
過去の薬剤情報を閲覧することで併用禁忌の相互作用を回避した事例では、普段から複数の薬局を利用し、その薬局には久しぶりに来局した患者を紹介。発熱症状で内科クリニックを受診し、コロナウイルス感染症の診断でニルマトレルビル錠が処方されていた。
お薬手帳を持参していなかったがマイナンバーカードによる受付で同意を得て、過去の薬剤情報を閲覧したところ、他の医療機関でニルマトレルビル錠との併用禁忌の関係にあるスボレキサント錠とエスタゾラム錠の処方履歴が確認された。患者にも現在服用中であることを確認した。
疑義照会を行い、患者はニルマトレルビル錠と併用禁忌の薬剤を2剤も服用中であることから、患者の服用薬に影響を与えないモルヌピラビルカプセルへの変更を提案。薬剤変更となった。
マイナンバーカードを活用した過去情報閲覧で薬剤情報を把握することで併用禁忌の相互作用を防ぐことができたとしている。
一方、マイナンバーカードを活用した過去情報閲覧を通して適切な禁煙治療の提供に結びついた事例もある。新規で禁煙治療(経皮吸収ニコチン製剤)を開始した50歳代の男性患者に薬局薬剤師がマイナンバーカードで過去の薬剤情報の閲覧をしたところ、前月、前々月に他院において経皮吸収ニコチン製剤が処方されていたことを確認した。
患者に確認すると、「概ね禁煙できているが、治療終了後も喫煙したくなることがあるため受診した」と回答したため、直近で他院において禁煙治療が終了していることを踏まえて、今回の処方箋発行元の診療所に疑義照会を行った。
医師と相談し現状禁煙が継続できていることも踏まえ、自信を持って禁煙を続けるように薬剤師から伝え、今回の処方は削除することとなった。その後、薬局においてフォローアップを続け、その後も禁煙が続いていることを確認しているという。
【日病薬 武田会長】専門薬剤師の国家資格化を-制度乱立で質保証に課題
情報提供元:薬事日報社
日本病院薬剤師会の武田泰生会長は17日、盛岡市内で開催された日病薬東北ブロック学術大会で講演し、専門薬剤師の国家資格化の実現に向け、日病薬内でも検討に着手したい意向を明らかにした。各領域で学会・団体による専門・認定薬剤師制度が運用されているが、「制度が乱立しており、専門・認定薬剤師を認定する第三者機関がない」と課題を指摘。薬剤師免許に加えて専門薬剤師免許を国が認定し、上位の国家資格とする二段階の仕組みを実現させることで「専門薬剤師の質をしっかりと担保し、専門薬剤師を国民から認めてもらい、処遇を付けてほしい」と要望した。
専門・認定薬剤師は各種学会・団体によって認定されており、2022年7月時点で30以上に上る。武田氏 は「医療は専門領域に細分化されている。医師のみならず、薬剤師にも専門性が求められ、医師と共に問題抽出、問題解決能力を持った薬剤師が専門領域で必要となっている」と述べ、専門性の高い病院薬剤師の育成に意欲を示した。
一方、「それぞれの団体が専門・認定薬剤師制度を運用しているので質保証がされていない」と課題を指摘。専門薬剤師の質保証には統一した基準のもと、認定していく体制が必要との考えを示した。
その上で「質の高い薬剤師の資質が高くなれば、その資質に対してきちんと評価を得ていく。評価を得た薬剤師の処遇がきちんと付いてくる仕組みを作っていかないといけない」と主張。資質の高い薬剤師が手厚く処遇されるための仕組みとして、専門薬剤師の国家資格化を提言した。既に韓国では、24年度に世界で初めて専門薬剤師が国家資格となり、第1回試験では481人が合格し、医療現場で活躍している。
武田氏は、韓国における専門薬剤師の国家資格化について「最初の薬剤師免許はジェネラリストとしての免許であり、専門性を高めた薬剤師に対して一段階上の国家資格を与えるということで薬剤師資格が二段階になった」と説明した。
薬剤師の処遇改善に向けては薬剤師俸給表の創設や医師と同じく医療職(一)の適用を目指し、人事院や厚生労働省などに働きかけているが、武田氏は「32万人いる薬剤師の底上げはもちろんしていかないといけないが、難しい。32万人いる薬剤師の底上げを待つよりも、資質の高い薬剤師をしっかりと国民から認めてもらうことを考えると、二段階制度の国家資格があってもいい」と語り、専門薬剤師の国家資格化によって薬剤師の処遇改善につなげるシナリオを方向性の一つに挙げた。
制度のあり方については、「専門薬剤師制度の評価・認定は国から委託を受けた第三者機関が行い、専門薬剤師に対するインセンティブを付与する」との私見を語った。
病院薬剤師確保に向けた今後の取り組みにも言及。修学資金貸与などの奨学金制度は14自治体、病院薬剤師出向・派遣制度は薬剤業務向上加算の算定施設が4月中にも30施設に拡大していると見られ、今後も広げていく方針も示した。