2025年10月号
【NPhA調査】個人宅在宅に重い負担-作業時間は外来の8倍
院内処方一部は閲覧制限-癌未告知患者の薬剤情報
【NPhA調査】個人宅在宅に重い負担-作業時間は外来の8倍
情報提供元:薬事日報社
日本保険薬局協会(NPhA)は、1件の訪問にかかる個人宅への在宅業務の作業時間が外来業務における処方箋処理時間の約8倍とする調査結果を公表した。薬剤師3.6人、薬剤師以外2.9人の平均的な薬局において薬剤師1人が1時間の在宅業務で得る収益は4715円と、薬剤師1人が1時間換算した給与費を下回るとの結果も示した。
次期調剤報酬改定では、個人宅への在宅訪問薬剤管理にかかる運営コストに見合った持続可能な評価を求めている。
調査によると、個人宅1訪問にかかる在宅業務の作業時間は平均98分で、厚生労働省タイムスタディ調査における「薬局における処方箋1枚の処理時間」である12分41秒の約8倍に相当するとした。
「訪問調整や事務連絡・問い合わせ」が8分、「調剤業務」が24分、「移動」が25分、「患者や患者家族とのコミュニケーションや薬学的管理業務」が16分、「在宅訪問の報告書作成」が11分、「訪問に紐付く多職種とのコミュニケーション」が6分、「訪問に紐付かない他職種とのコミュニケーション」が8分となっている。
NPhAは「薬局全体のリソースが大きく割かれている。1訪問当たり在宅業務の作業時間が100分かかるのは大きな負担になる」としている。
また、終末期ケア患者は117分、癌患者、腎不全患者は106分と特に長い作業時間を要しており、終末期ケアの訪問では無菌調剤業務やPCAポンプ利用にかかる業務に長い作業時間がかかっていた。
「精神的負荷を感じる認知症患者」は128分となった。認知症患者で精神的負荷を感じる在宅業務については、「薬の過量服用を起こしたり、それを起こさないように対策を講じてもうまくいかなかったり、予定外の受診が多くなったりした場合は負荷を感じる」などの理由が挙げられた。
医療経済実態調査をもとに、薬剤師3.6人、薬剤師以外2.9人を配置している平均的な薬局をベースに、在宅1訪問当たりの収益5815円を調剤時間を抜いて薬剤師1人、1時間換算した収益を算出したところ4715円となり、薬局の年間給与費3662万円から薬剤師1人・1時間換算した給与費4890円を下回った。
効率が悪い在宅業務は「患者の個人宅往訪のための移動時間」「訪問時に患者が不在なための待ち時間」「報告書の作成、FAXを利用した送付」などとなった。
NPhAは、給与費以外に家賃や水道光熱費、交通費など様々な費用が発生していることを踏まえると、「在宅業務では大きな赤字が生じている」と考察。個人宅の在宅業務に適した対価を求めている。
院内処方一部は閲覧制限-癌未告知患者の薬剤情報
情報提供元:薬事日報社
厚生労働省は1日の電子処方箋等検討ワーキンググループで、院内処方情報の登録について、患者に伝達・閲覧させたくない薬剤情報を「未告知の情報」として患者が閲覧できないよう来年3月メドにシステム改修する方針を示した。マイナポータルでレセプト由来の薬剤情報は閲覧できるため、「混乱が生じる」との意見が構成員から相次いだことから、厚労省で改善策を検討することとした。
現行の電子処方箋管理サービスに登録された処方箋情報は、医療機関・薬局、患者が全て閲覧できる仕様としている。一方、院内処方情報では、重複投薬等チェックや薬剤情報の閲覧など、医療機関等の間では活用したいものの、癌の告知をしていない状態における院内での抗癌剤の投薬情報など、患者に伝達・閲覧させたくない医薬品も含む場合が想定されている。
そのため厚労省は、来年3月メドに、患者に伝達・閲覧させたくない薬剤情報(院内処方薬剤、傷病名)を「未告知の情報」として管理サービスに登録できるよう改修し、院内処方の情報を登録する医療機関で、薬剤ごとに未告知フラグの記録を可能とする方針を示した。
他医療機関・薬局が患者に伝達することを防止するため、薬剤名に未告知フラグ情報を付加するほか、患者による閲覧を防止するため、フラグが設定された情報はマイナポータルと連携しないとした。
長島公之構成員(日本医師会常任理事)は「マイナポータルでレセプト由来の薬剤情報は閲覧可能で、電子処方箋由来のものだけ表示されなくなると不一致が生じて患者が混乱する。丁寧に検討して進めるべき」と指摘した。
川上純一構成員(日本病院薬剤師会副会長)の代理として出席した舟越亮寛氏(亀田総合病院薬剤部部長)も「レセプト由来の薬剤情報だけ閲覧できると、医師のミスで流された情報と受け取られかねない。医師や医療従事者への不信感につながるため、情報開示のあり方は十分に注意が必要」と訴えた。
ベンダーの視点から、新垣淑仁構成員(保健医療福祉情報システム工業会事業企画推進副室長)も「電子カルテ登録時に薬剤ごとに未告知フラグの構築が求められるため、開発規模が大きくなることが想定される。ベンダーは慎重な開発検討が必要となるので、慎重に必要性を議論してほしい」と述べた。
これら構成員の指摘を踏まえ、山口育子主査(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「今のままでは問題が起こる可能性がかなり高い。一度立ち止まって改善策を練ってもらい、報告してほしい」とまとめた。