2025年11月号
【厚労科研】薬剤師介入で歯科受診率増-口腔健康サポートに効果
薬剤師の実習受入を要件に-特定機能病院指定で

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【厚労科研】薬剤師介入で歯科受診率増-口腔健康サポートに効果

情報提供元:薬事日報社

健康サポート薬局の薬剤師が地域住民の口腔の健康サポートを半年にわたって実施することで歯科受診率が上がり、受診によりオーラルフレイル(口腔機能の低下)でない者の割合が増加することが、2024年度厚生労働科学研究(研究代表者:慶應義塾大学薬学部山浦克典教授)で明らかになった。研究開始時点で定期歯科健診受診者は、非受診者に比べて非オーラルフレイルの割合が大きかったが、薬剤師の介入により非受診者が受診行動を起こすことで非オーラルフレイルの割合が定期歯科健診受診者と同程度まで増えた。

厚労科研の1年目事業では、薬局薬剤師の口腔の健康サポート能力向上を目的に歯科医師監修のウェブ・実地研修で構成されたプログラムを構築した。

2年目となる24年度は研修を修了した健康サポート薬局の薬剤師39人に参加してもらい、27薬局の来局者のうち同意を取得した314人を無作為に介入群と非介入群に分け、薬剤師が両群に対して口腔の健康状態に関する調査とパンフレット配布を行い、介入群には口腔の健康サポートを行った。

介入内容は支援資材を用いた薬剤師による説明やセルフチェックの指導等となっており、6カ月間に初回、約3カ月後、約6カ月後の計3回行い、定期歯科健診の受診率向上と口腔の健康状態の変化等を比較した。

データ解析対象者は254人だった。初回時点で定期歯科健診の非受診者は介入群で31.8%、非介入群で28.8%だった。非受診者のうち6カ月時点で予約・受診をしていた者は介入群で34.1%、非介入群で16.7%と介入群のほうが有意に多かった。

一方、介入群と非介入群を合わせた対象者全体で解析すると、初回から6カ月後の非オーラルフレイルの割合の変化は、初回の非受診群のうち6カ月間で受診・予約した者では30%から60%へと有意に増加し、定期歯科健診受診者と同レベルまで改善した。

最後まで受診しなかった者の非オーラルフレイルの割合は、初回の33.3%から6カ月経過後では47.4%と受診者群に比べて小さい伸びにとどまった。

研究班は「定期的に歯科健診を受診していない人だけで見た場合に介入群の方が6カ月後までの受診・予約者が多く、薬剤師が口腔健康サポートすることで受診行動を起こす動機づけになる」と考察。

健康寿命延伸に向けた施策の一環として健康サポート薬局の活用が期待されるとした。

また、「薬局における非歯科健診受診者の洗い出しが重要」と指摘。現状では薬局において歯科受診を確認するのは薬剤師が意識的に口頭で行うしかなく、マイナ保険証の紐付けによる健診の確認が可能になるのと同時に、歯科健診の受診の有無に関しても確認できるような仕組みの構築を求めた。

一方、健康サポート薬局に勤務する薬剤師を対象に口腔の健康サポートに特化した研修プログラムを実施したところ、受講した薬剤師では口腔の健康サポートに関する自信が付き、薬局で口腔の健康サポートを行う意識が向上する効果も確認された。

今後、薬剤師向けの研修プログラムの内容や構成を検討し、研修を全国に展開していく必要性も示している。

 

薬剤師の実習受入を要件に-特定機能病院指定で

情報提供元:薬事日報社

厚生労働省は19日の社会保障審議会医療部会で、医療法に基づく特定機能病院の指定に関する「基礎的基準」として、新たに薬剤師の実習受け入れ・育成を大学病院に求める方針を示した。薬学生の実務実習受け入れ体制の整備、免許取得直後の薬剤師の病棟業務等に関する総合的研修提供体制を求めつつ、1年間程度の経過措置期間を設ける。関係省令の改正など必要な手続きを進める。

特定機能病院は、高度な医療の提供や研究等の実施能力を持つ全国88病院が指定され、このうち大学病院が79病院を占める。指定には厚労省の関係省令・通知等に記載された承認要件を満たす必要がある。

他方で、高齢化の進展で医療ニーズが増加し、病院には医師の卒前・卒後教育、他の医療職種の育成等を総合的に担うことも期待されている。そのため、厚労省の検討会が昨年7月から特定機能病院のあり方を議論し、見直しに関する考えをまとめた。

具体的には、大学病院について、現行の承認要件を全ての大学病院が満たすべき「基礎的基準」として整理すると共に、個々の病院が地域の実情も踏まえて自主的に実施している高度な医療提供・教育・研究・医師派遣に関する取り組みを「発展的基準」で評価し、結果を公表するとした。

基礎的基準は、教育に関する項目に「看護師・薬剤師の実習受け入れ・育成」を追記した。薬剤師養成課程に在籍する学生の実務実習を受け入れる体制を整備していること(認定実務実習指導薬剤師の配置)、免許取得直後の薬剤師を対象とした病棟業務等に関する総合的な研修が提供できる体制を有していること(責任者・委員会の設置、プログラム作成)を求めるが、1年間程度の経過措置期間を設ける。

医師派遣に関する基準も新設し、地域に一定の医師派遣を行っていることを追記するほか、医療安全に関する基準では、医療安全管理責任者の配置要件に「医療安全にかかる経験」を求める。

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