2025年5月号
【厚労省調査】後発品供給「悪化した」4割-選定療養で浸透も在庫なく
病棟業務立ち上げなど成果-向上加算、出向先に初調査
【厚労省調査】後発品供給「悪化した」4割-選定療養で浸透も在庫なく
情報提供元:薬事日報社
昨年11月における後発品の供給状況が2023年11月時点に比べて「悪化した」と答えた薬局が全体の約4割に上ることが、厚生労働省の24年度診療報酬改定の結果検証にかかる特別調査で判明した。長期収載品の選定療養制度の導入もあり、後発品調剤割合が「90%以上」の薬局は66.1%に急拡大した一方、後発品の調達には大きな不安を抱えているようだ。一般診療所、病院に対する調査でも23年6月時点に比べ「悪化した」との回答がそれぞれ53.4%、63.3%に達し、歯科診療所では「後発品処方割合が減った」が約15%と大幅に増えるなど、多方面で医薬品不足が深刻化している。
9日の中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会で報告した。調査は、昨年6月に実施された24年度診療報酬改定による後発品の調剤状況や備蓄状況などを調べ、610薬局、339診療所、229病院、240歯科診療所から回答を得た。
昨年11月時点の後発品調剤割合が「90%以上」の薬局は全体の66.1%を占め、前回調査の33.3%から急拡大した。ただ、後発品の供給体制に対する認識では84.1%の薬局が「支障を来している」と回答し、「影響はあるが大きな支障はない」の14.9%を大きく引き離した。
23年11月と昨年11月を比較した後発品の供給体制では、「改善した」はわずか6.4%にとどまり、「変わらない」が49.5%、「悪化した」が43.1%となった。
一般名処方の処方箋を持参した患者のうち後発品を調剤しなかった理由についても、「患者の意向」が53.4%から33.3%へ減少し、「保険薬局の備蓄」が30.2%から37.8%に増加するなど安定供給が課題となっていた。
長期収載品の選定療養導入を受け、長期収載品の銘柄名で処方された医薬品のうち「後発品へ変更して調剤した」は73.6%、「長期収載品を調剤した」は25.4%だった。長期収載品を調剤した医薬品のうち「処方箋に『患者希望』が指示されていた」のは17.8%、「処方箋に『変更不可(医療上必要)』が指示 されていた」は23.3%だったが、「後発品の在庫状況等を踏まえ、後発品の提供が困難で長期収載品を調剤せざるを得なかった」は43.9%に上った。
一般診療所・病院に対する調査でも、昨年11月と23年6月を比較した後発品の対応における業務量が「増えた」と回答した施設が診療所では54.6%、病院では72.1%と多かった。
後発品の供給体制の変化についても診療所調査では「改善した」が5.0%、「変わらない」が35.7%、「悪化した」が53.4%、病院調査では「改善した」が0.9%、「変わらない」が31.4%、「悪化した」が63.3%と厳しい状況が続く。
歯科診療所でも23年6月と比較した後発品の供給体制が「悪化した」45.4%、「変わらない」47.1%で拮抗していた。同じ質問を行った前回調査では「悪化した」が15%、「変わらない」が70%との結果だったことを踏まえると、供給状況が悪化している傾向がうかがえた。外来の院外処方の割合が「100%」の施設が全体の5%に上った。
病棟業務立ち上げなど成果-向上加算、出向先に初調査
情報提供元:薬事日報社
日本病院薬剤師会は、基幹病院から地域病院に薬剤師出向した場合、算定が可能となる「薬剤業務向上加算」の出向先施設を対象とした初の調査を実施した。その結果、出向先施設は「病棟薬剤業務実施加算1の算定再開」や「病棟業務の立ち上げ」など、薬剤師出向を通じて病棟業務が行えている成果が確認された。
同加算算定施設から薬剤師の出向を受けた14施設の薬剤部長が回答した。算定している薬剤師に関連する診療報酬算定項目を見ると「薬剤管理指導料」は10施設、病棟薬剤業務実施加算は5施設あった。
出向受け入れ期間は「3カ月」が5施設と最も多く、出向期間は「適切であった」が6施設、「短かった」が8施設だった。出向者の給与の負担元は「出向元」が1施設、「出向先」が10施設となった。
出向者の業務内容と成果を聞いたところ、「病棟薬剤業務実施加算1の算定再開」「病棟業務の立ち上げ、業務マニュアルの策定」「人員不足でできなかった病棟業務の再開」「病棟業務、訪問服薬指導業務、鑑査業務」などが目立った。
そのほか「疑義照会簡素化マニュアル」「院外処方箋における事前合意に基づく処方変更に関するプロトコル」など、出向先で薬剤師業務を整備した薬剤師もいた。
薬剤部全体の業務向上への貢献では「薬剤師間のコミュニケーションが改善され、薬剤師間のタスクシェアが進んだことにより残業時間が軽減した。今後病棟薬剤業務実施加算取得などが期待できる」「病棟業務の実施」「病棟業務の拡大」など、手薄だった病棟業務の実施・拡大が成果として挙げられた。
他職種からの評価について複数回答で聞くと、医師は「薬物治療の質が向上した」が5施設、「医薬品に関する業務の負担が軽減した」が4施設あった。看護師の評価では「医薬品に関する業務の負担が軽減した」が5施設、「薬物治療の質が向上した」が4施設あった。
しかし、「特段の評価はない」と回答した医師は5施設、看護師は6施設とそれぞれ最も多く、同加算のメリットを発信していく必要性も浮かび上がった。
武田泰生会長は2日の定例会見で「調剤など対物業務に費やされると思ったが、病棟業務や服薬指導が充実したというコメントを見ると、われわれが期待したことをやっていただいた」とコメント。「出向期間は半年から1年間が多いと思った。期間を長くすることでいろんなものを学んでもらうと同時に、出向薬剤師が持っているものを置いてもらうにはそれくらいの期間が必要ではないか」と長期出向を要請した。
また、2026年度診療報酬改定の議論に向けては、「出向した薬剤師が出向元施設に戻った後の出向先・ 出向元施設の業務の質向上がポイントになる」とし、「日病薬の特別委員会でアウトカム評価を考えてもらっている。ハードルを高くしても出向元・出向先施設が大変だし、ハードルを低くしてもいけない」と語った。