2026年4月号
「調剤の概念」新たに策定-薬剤師は処方意図を評価
サリドマイド院外調剤へ-病院、薬局の連携体制必須

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「調剤の概念」新たに策定-薬剤師は処方意図を評価

情報提供元:薬事日報社

日本薬学会は、近年の薬剤師に求められる調剤業務を可視化し、薬剤師の行動目標を示すと共に、社会に対して説明責任を果たせるようにするため、「調剤の概念」を新たに策定した。薬剤師の調剤業務については、医薬品情報・患者情報を用い、薬学的観点から「処方の意図を評価し、処方を通じて患者に対して個別最適化された薬物療法を提供する」と明記。薬剤師がプロフェッショナルとしての意識を持ち、地域医療で多職種連携を通じて社会的責任を果たせるようにする狙いがある。「処方内容の監査」「薬剤調製」「薬剤等の監査」が示す業務も定義し、今後改訂される調剤指針に反映する予定だ。

薬剤師業務を取り巻く状況が変化する中、調剤を明確に定義した法令や通知は確認されておらず、薬剤師や医師をはじめ多職種の間でも、「調剤業務は薬剤調製のみ」といった狭義の理解にとどまるケースは少なくない。

薬剤師業務が対物から対人にシフトしている状況を踏まえ、薬学会のワーキンググループは日本医師会との意見交換などを通じ「調剤の概念とは、薬剤師が医薬品情報と患者情報を用いて薬学的観点から処方の意図を評価し、必要に応じて照会・提案を行った上で、処方に基づき患者に対して個別最適化された薬物療法を提供する一連の行為である。このプロセスは継続的に行われるものである」とまとめた。

「処方に従って」ではなく「処方の意図を評価し」と記載しているのがポイントだ。石井伊都子会頭は本紙の取材に対し、「『処方の意図を評価する』という業務は、医師に対するものではなく、薬剤師自身が薬学的観点から責任を持って処方の意図を評価し、患者に対して個別最適化された薬物療法を提供していくという決意表明でもある」と強調する。調剤の概念にある一連の行為、さらに1人の患者に対して継続的に行われることになる調剤のプロセスを「薬剤師が患者を見て一つひとつ確認しながら実施する」という意識を醸成していきたい考え。

調剤の概念の作成をめぐっては、昨夏に日本薬剤師会の岩月進会長から薬学会に依頼があり、昨秋に薬学会内にワーキンググループを設置した。2014年の薬剤師法改正、20年9月に施行された改正医薬品医療機器等法で薬剤師の職務像が可視化されたことも、調剤の概念化が必要とされた理由の一つとなる。

薬学教育6年制の導入以降、臨床教育は強化され、病院と薬局において対人業務への期待は高まっている。一方で、現場では対物業務から対人業務への十分な転換が進まず、医薬分業への批判もある。

石井氏は「患者や医師から信頼され、『薬剤師がいて良かった』と思われる成果につなげたい」と述べ、需要が拡大している在宅医療における貢献、真の地域連携への期待を示した。

そのほか、処方内容の監査は「処方内容について、患者情報および医薬品情報に照らし、薬学的観点から確認する行為」、薬剤調製は「処方箋の内容およびそれまでに得られている患者情報と最新の医薬品情報に照らし合わせ、薬学的観点から医薬品を患者が使用できる状態にすること」、薬剤等の監査は「薬剤、薬剤情報提供書等、患者に提供される物品および情報について、最終的に患者にとって最適であるかを確認する行為」とそれぞれ定義した。

 

サリドマイド院外調剤へ-病院、薬局の連携体制必須

情報提供元:薬事日報社

サリドマイド関連製剤について、院外処方や訪問診療での取り扱いを特例的に認め、薬局薬剤師による調剤を可能とする方向で検討が進んでいる。同製剤は、妊娠初期の服用により胎児に重篤な奇形を引き起こす可能性がある催奇形性リスクを有することから、これまで院内処方を前提に、TERMSやRevMateといった厳格な安全管理手順が運用されてきた。今後も院内処方が原則でやむを得ない場合に限って院外処方を認める対応になると見られるが、院外処方や在宅医療に薬局が関与する場合、手順逸脱を防ぐ仕組みの構築が不可欠となる。

検討案では、「責任薬剤師」として登録された薬局薬剤師のみが調剤を行える仕組みとし、処方医療機関と薬局との連携体制を求める方針だ。

サリドマイド関連製剤は1950年代末の販売開始後、胎児の奇形を引き起こす副作用が判明し、社会問題となった。2008年に藤本製薬の「サリドカプセル」が多発性骨髄腫を効能・効果として再承認されて以降、レブラミド(レナリドミド)、ポマリスト(ポマリドミド)が上市され、後発品も流通している。

妊娠回避を徹底する観点から、院内処方を原則とし、使用する医療機関、医師、薬剤師、患者を登録制として、製造販売業者が処方・調剤情報を一元管理してきた。

処方医と同一医療機関に所属する薬剤師が責任薬剤師として登録され、処方時のダブルチェックや服薬指導を担っている。

院外処方を認める背景には、外来から在宅へ移行した患者が医療機関で直接薬を受け取れなくなるケースの増加がある。また、薬剤師を確保できない診療所では、医師が責任薬剤師を兼務している実態もあり、医師とは独立した立場で薬剤師が対応する必要性から、患者が利用する薬局での調剤を特例的に認める。

院外処方の実施には国による特例審査が必要で、責任薬剤師や薬局に一定の要件を課す。処方箋の授受が医療機関外で行われる点を除けば、基本的には現行の安全管理手順に沿って運用される見通しだ。責任薬剤師は処方スキームの運用責任者となるため、研修受講が要件になると見られる。

薬剤師登録が必要な医薬品には「クロザリル」「コンサータ」などがあるが、院内処方原則の薬剤を特例的に院外処方として認めるのは極めて特殊だ。厚生労働省は「当初は医療資源が乏しく、患者アクセスが限られる地域など、やむを得ない場合に限られる」との見方を示す。

一方、レアケースにとどまるとしても、薬局にはサリドマイド製剤の適正使用に関与する意識が求められる。リスク管理が必要な医薬品について、地域で薬局と医療機関が連携し、安全管理手順を遵守しながら患者をフォローする体制は、今後の地域医薬品提供体制において重要となる。

医薬局医薬安全対策課の安川孝志課長は「薬局には実際に処方スキームを運用している病院の取り組みを見ることが必要になるかもしれない。妊娠に関する指導が求められる医薬品も増えている。サリドマイド関連製剤を取り扱うことが薬剤師のレベルアップにつながる」と期待感を示す。

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