2026年9月号
電子カルテ情報共有開始へ-医療の質や安全性向上期待
【オランザピン】糖尿病禁忌解除-抗癌剤投与時嘔吐に限定
電子カルテ情報共有開始へ-医療の質や安全性向上期待
情報提供元:薬事日報社
政府は、電子カルテ情報の標準化など全国医療情報プラットフォームの整備を進めており、電子カルテ情報共有サービスを今冬をメドに開始する。同サービスでは診療情報提供書などの文書情報や傷病名、検査値といった臨床情報の共有を進めると共に、対象情報の範囲を順次拡大していく方針だ。薬局ではオンライン資格確認等システム内でレセプト情報、特定健診情報、電子処方箋の処方・調剤情報が既に共有されているが、今後は電子カルテ情報共有サービス由来の臨床情報も追加される予定である。薬局の電子処方箋導入率が9割を超える中、電子カルテ情報から得られた患者情報をいかに活用し、地域医療の質向上につなげるかが今後の課題となる。
政府が医療DXの推進の一環として構築を進める全国医療情報プラットフォームでは、医療情報を取り扱う電子カルテ情報共有サービスについては今冬をメドに全国運用を開始する予定だ。介護情報を取り扱う介護情報基盤については、今年度以降、準備が整った自治体から順次運用を開始することが想定されている。
電子処方箋は6月時点で薬局の9割超に導入され、ほぼ全ての調剤結果が電子処方箋管理サービスに登録される環境が整っている。調剤結果登録率は94%を超え、薬局における調剤結果登録件数や重複投薬等チェックの実行件数は増加傾向にある。一方、重複投薬等チェックの実行件数は調剤結果登録件数と比べて低水準にとどまっている。
電子処方箋を利用しやすく、安全に運用できる仕組みや環境の整備も進めている。具体的には、▽一般名コードへの対応▽YJコード・レセプト電算コードの廃止年月日の処理▽ダミーコードへの対応▽用法マスタへの対応▽医薬品コードの公開(時限的措置)▽単位チェックへの対応――などを実施。また、マイナポータルにおける薬剤情報の閲覧機能の改善を進めており、電子処方箋管理サービスの調剤情報は従来からマイナポータルで閲覧可能だったが、5月からはホーム画面から直接アクセスできる薬剤情報画面において、診療報酬明細書に基づく薬剤情報と合わせて容易に確認できるようになった。
電子カルテ情報共有サービスは、昨年2月からモデル事業を順次開始しており、現在は10地域31医療機関で実施している。システム面だけでなく、現場の運用や業務フローなどについても検証を進めている。
傷病名やアレルギーを登録‐患者同意取得など課題も
電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局などで患者の電子カルテ情報を共有する仕組みで、国は四つの特徴を挙げている。
まず、診療情報提供書を電子的に共有できる点が利点だ。退院時サマリーについても診療情報提供書に添付して共有する。
さらに、各種健診結果を医療保険者や全国の医療機関、本人などが閲覧できるほか、患者の臨床情報も全国の医療機関や本人などが閲覧可能となる。患者サマリーについても本人が閲覧できるようにし、利便性向上を図る。
登録する傷病名については、医療機関の電子カルテシステムに記録されている全ての傷病名を登録する方針だ。他の医療機関などにも登録した全ての傷病名を共有する一方、患者に対しては医師らが誤解なく情報を受け取れると判断した傷病名に限って共有する。
電子カルテ情報共有サービスに登録するアレルギー等情報は「重篤なアレルギー等」を対象とする。まずはアナフィラキシー(疑いを含む)を登録対象とするが、劇症肝炎などについても、他の医療機関等に共有すべきと医師らが判断した場合には登録が可能となる。
登録時には、他の医療従事者が可能な限り正しく理解し活用できるよう「物質名」と「診断・症状・所見」の両項目が入力された情報を登録する方針だ。
感染症情報については、電子カルテに登録された時点で電子カルテ情報共有サービスに登録する方針である。登録直後は他の医療機関等のみ閲覧可能で、患者には表示されない。当該感染症の検査結果については、医師らが患者に十分な説明を行い、マイナポータルに表示しても誤解が生じないと判断した後、「患者共有」ボタンなどを押下することで、患者自身が閲覧できるようになる。
医療機関で診断された傷病名やアレルギー、検査結果などを薬局側で把握できるようになれば、医療安全の向上や服薬指導の質向上につながる可能性がある。一方で、閲覧には患者の同意が必要であるなど、薬剤師がデータを利活用する上での課題も残る。医療機関、薬局、患者のいずれにもメリットのある制度運用が求められる。
【オランザピン】糖尿病禁忌解除-抗癌剤投与時嘔吐に限定
情報提供元:薬事日報社
薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は7月29日、チェプラファームの抗精神病剤「ジプレキサ錠、同細粒、ジプレキサザイディス錠」(一般名:オランザピン)について、添付文書の「使用上の注意」の改訂案を了承した。抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)に用いる場合に限り、糖尿病患者と糖尿病既往歴のある患者への投与禁忌を解除する。入院下で血糖コントロールが良好な患者に対象を限定し、投与前と投与中に毎日頻回の血糖モニタリングを実施することなどを条件とした。
オランザピンは2000年に統合失調症を効能・効果として承認され、市販後に重篤な高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡の症例が報告されたことから、02年に緊急安全性情報が発出され、糖尿病患者と糖尿病既往歴のある患者は禁忌とされた。その後、17年に抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)が効能追加されたが、禁忌の範囲は維持されていた。
今回、日本癌治療学会が化学療法誘発性悪心・嘔吐(CINV)に同剤を使用する場合に限り、糖尿病患者への投与禁忌を見直すよう要望。高度催吐性リスクの抗癌剤治療では、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾンにオランザピンを加えた4剤併用制吐療法が国内外のガイドラインで標準治療に位置づけられている一方、日本では糖尿病患者が禁忌対象のため、糖尿病を併存する癌患者が選択できないことが課題とされていた。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、国内でCINVの効能・効果により糖尿病患者へ投与された使用経験は少ないものの、入院下で血糖コントロールが良好な患者に対象を限定し、緊急時に十分対応できる体制を整えた上で、投与前と投与中に毎日頻回に血糖値を確認することを前提とすれば、CINVの効能・効果において禁忌から削除して差し支えないと判断した。
海外添付文書では、糖尿病患者や糖尿病既往歴のある患者への使用は禁忌とされておらず、血糖や高血糖症状のモニタリングを求めていることも確認した。
改訂案では、CINVに使用する場合に限って糖尿病患者・糖尿病既往歴患者の禁忌を解除する一方、統合失調症や双極性障害など他の効能・効果では禁忌を維持する。
投与に当たっては、オランザピン投与前および投与期間中に入院下で毎日頻回に血糖モニタリングを行い、投与後も血糖値が安定するまで患者の状態を継続的に観察する。
日本癌治療学会には、血糖管理の必要性や実施頻度を示す医療者向け資料、患者・家族向け資材の作成と周知を依頼する。