2023.09.27クリニック開業 , 電子カルテ

【2025年最新】クリニックの数と今後の推移|開業医の経営課題は医療DX対応が鍵

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クリニックの数と今後の推移

クリニックを開業する際は、医療の専門知識や診療報酬についての知識だけでなく、クリニック経営に関する情報や社会的な動向の把握が欠かせません。特に、近年の開業数や閉院数の推移は、医療を取り巻く環境や競合の状況を把握するための重要な手がかりです。

本記事では、厚生労働省の「医療施設動態調査(令和7年8月末概数)」に基づき、日本のクリニック数の最新動向について解説します。施設数の長期的な推移に加え、医療機関を取り巻く厳しい経営状況や医師不足・後継者不在による閉院の増加といった経営課題を分析し、今後のクリニック経営と診療報酬の鍵となる「医療DX」 への対応についてもご紹介します。

日本のクリニック(診療所)数の最新動向

厚生労働省は、医療施設が提出した開設・廃止等の申請や届出に基づき、施設の名称や所在地、診療科目、病床数などをまとめた「医療施設動態調査」を毎月公開しています。この統計に基づき、一般診療所と病院の施設数について最新の状況と長期的な推移を解説します。※1

最新の施設数(令和7年8月末概数)

厚生労働省が発表した「医療施設動態調査(令和7年8月末概数)」によると、全国の主な医療施設数は以下の通りです。※2

  • 病院: 8,004施設
  • 一般診療所(クリニック): 105,519施設
    • うち有床: 5,183施設
    • うち無床: 100,336施設
  • 歯科診療所: 65,645施設

施設数
引用元:厚生労働省. 医療施設動態調査(令和7(2025)年8月末概数) ※2

病院・診療所(有床・無床)の施設数の推移

病院の施設数は、ピーク時の平成2年(1990年)には10,096施設ありましたが、30年以上にわたって減少傾向が続いています。直近3年間だけを見ても、令和4年(2022年)に8,156施設、令和5年(2023年)に8,122施設、そして令和6年(2024年)には8,060施設となっており、令和7年(2025年)8月末時点ではさらに減って8,004施設と、ますます減少しています。令和8年以降は、8,000施設を割り込むことが推測されます。※2、3、4、5

一般診療所全体の数は、昭和63年(1988年)以降増加傾向にありますが、その内訳は大きく変化しています。有床診療所の数は減少傾向にあり、直近3年間を見ると、令和4年には5,958施設、令和5年に5,641施設、令和6年には5,415施設となっています。令和7年8月時点ではさらに5,183施設まで減少しています。※2、3、4、5

その一方で、無床診療所は増加を続けています。直近3年間だけを見ても、令和4年は99,224施設、令和5年は99,253施設、そして令和6年には99,792施設と増加し続けており、令和7年8月末時点では100,336施設と、ついに10万施設を超えました。特に、令和5年以降の増加幅は大きくなっており、現在のクリニックの主流は「無床」であることが明確です。※2、4、5

直近3年間の医療施設数の推移

有床診療所や病院が減少する背景

病床数が多くなるほど医療費が増加する傾向にあるため、国の予算を圧迫する原因となります。有床診療所や病院が減少傾向にある背景には、医療費の適正化を目指して病床数を減らそうとする国の方針があります。

例えば、将来的な人口減少と高齢化に対応するために「地域医療構想」が策定されました。これにより、各医療機関は自院の病棟が担う機能を「高度急性期機能」「急性期機能」「回復期機能」「慢性期機能」の4種類から自主的に選択し、国に報告することが求められています。※6

これは、病床が必要な方に使ってもらうこと、そして病床が適正に使われているかを管理するために必要な報告です。地域医療構想に基づき、機能の転換や病床数の最適化が進められた結果、有床診療所や病院の数は整理されて減少傾向にあると考えられます。

医療機関の経営状況と医師不足・医師の高齢化・後継者不在という課題

病院や有床診療所の減少および無床診療所の増加という動向は、医療機関の経営状況に関する統計からも見てとれます。その一方で、医療機関の形態にかかわらず問題となっているのが、医師不足や医師の高齢化、そして後継者不在による医療機関の閉院の増加です。

深刻化する医療機関の経営状況

中央社会保険医療協議会(中医協)によると、令和7年8月時点で病院(医療法人)の医業利益の赤字割合は過半数を超え、55.2%となっていました。大都市、地方都市、人口少数地域のいずれも赤字割合は過半数を超えており、どの地域においても病院は厳しい経営状況であることがわかります。なお、医療法人の病院だけでなく、自治体病院や大学病院においても同様に赤字傾向が大きく、医療業界全体の課題となっています。※7

 
2 0 2 4 年度病院地域分類別の経営状況
引用元:厚生労働省保険局医療課. 医療機関を取り巻く状況について(中医協 総-4 7.10.29) ※7
 

医科診療所全体では黒字割合が66.6%と過半数を超えている一方で、有床か無床かでその明暗は分かれています。入院収益ありの診療所は、入院収益なしの診療所と比較して利益率が低く、約半数の診療所で医業利益が赤字となっています。地域分類別にみると、大都市型の地域の医科診療所と比べると、地方都市型や人口少数地域型の利益率はやや低い傾向にあります。※7

 

2 0 2 4 年度の医科診療所の経営状況
引用元:厚生労働省保険局医療課. 医療機関を取り巻く状況について(中医協 総-4 7.10.29) ※7
 

医療機関の厳しい経営状況の背景には、近年の物価高や人件費高騰に伴う医業費用の増加も影響していることから、今後の社会情勢の変化によってますます厳しくなる可能性も考えられます。

病院経営を圧迫する「医師不足」と「2025年問題」

病院や診療所(有床・無床)に共通している経営課題としては、深刻な「医師不足」も挙げられます。

団塊の世代が後期高齢者となり、急激な人口減少期に突入する「2025年問題」は、医療業界においても例外ではありません。特に、病院では少ない人員で過酷な労働環境を強いられるケースも珍しくなく、医師不足が経営の課題となっています。

厚生労働省は、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を策定するなどさまざまな施策を行っていますが、医師不足が解消されるにはまだ時間がかかるかもしれません。※8

過去最多を更新するクリニックの休業・廃業・解散

医療機関の「休業・廃業・解散」が過去最多へ

帝国データバンクが公開している「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)」 によると、2024年に休業・廃業または解散した医療機関は過去最多の722件でした。このうち診療所が587件と大半を占め、これも過去最多となっています。なお、2024年に倒産した医療機関は64件、うち診療所は31件でした。経営難による倒産よりも、「自主的な閉院」が圧倒的に多いことがうかがえます。※9

診療所の閉院が増加している最大の要因として、経営者の高齢化と後継者の不在が挙げられます。

帝国データバンクの調査によると、診療所経営者の年齢分布では70歳以上が54.6%と過半数を占めています。また、「医業承継実態調査(2020年)」によれば、診療所経営者が「現段階で後継者候補はいない」と回答した割合は50.8%に上ります。これらを踏まえると、今後、経営者の高齢化と後継者不在によるクリニックの閉院がますます加速することが懸念されます。※9

つまり、クリニック市場は「経営者の高齢化による大量の閉院」と「新規開業の大量参入」が同時に起こる、激しい新陳代謝の時代に入っているといえます。

診療報酬改定でも示された「医療DX」推進の重要性

超高齢社会による医療ニーズの増大と、医師不足や経営状況の悪化に伴う人手不足などの課題に対し、国は「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進を通して業務効率化と医療の質の向上を図ろうとしています。

医療DX推進体制整備加算とは?

令和6年度診療報酬改定で注目された焦点のひとつが、「医療DX推進体制整備加算」の新設でした。※10
オンライン資格確認の体制整備やマイナ保険証の利用率、電子処方箋の導入など、医療DXを推進する体制を整備しているクリニックが診療報酬で評価され、初診料に加算できるという仕組みです。

関連記事:令和7年10月改正!医療DX推進体制整備加算について

関連記事:令和8年度診療報酬改定に向けて議論されているポイントとクリニック経営への影響について解説

2026年6月までに必須となる「電子カルテ情報共有サービス」への対応

「医療DX推進体制整備加算」を算定するための施設基準のひとつに、「電子カルテ情報共有サービスの活用体制」があります。※11
「電子カルテ情報共有サービス」とは、全国の医療機関や薬局が患者の同意に基づき、標準化された医療情報を共有・閲覧できる仕組みを指します。具体的には、以下の「3文書6情報」が共有対象となります。

  • 3文書: 診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果報告書
  • 6情報: 傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報、処方情報

関連記事:電子カルテにおける3文書6情報とはどのようなものなのか?

電子カルテ情報共有サービスの活用体制という要件については、サービスの本格稼働に向けた経過措置が設けられています。7月23日付の中央社会保険医療協議会の発表によって延長され、現在はこの経過措置は令和8年(2026年)5月31日までとされています。
これは、2026年6月1日以降も「医療DX推進体制整備加算」を算定し続けるためには、3文書6情報の共有に対応できる電子カルテシステムの整備が事実上必須となることを示唆しています。紙カルテで運用しているクリニックや、標準規格に対応していない古い電子カルテシステムを使用しているクリニックでは、いずれこの加算が算定できなくなり、収益に直接影響する可能性が考えられます。

関連記事:電子カルテ情報共有サービスにおけるクリニックへのメリットとは?

医療DXと効率化を実現するユヤマの電子カルテの特徴

ユヤマの電子カルテ

「クリニック開業にあわせて、国の医療DX方針や診療報酬改定に対応できる電子カルテを導入したい」
「スタッフの定着や患者満足度の向上のためにも業務効率化を実現したい」

国は今後も医療DXを積極的に推進する見込みであり、診療報酬改定によって関連する点数の見直しや施設基準の変更などが想定されています。これらに対応できる電子カルテを導入することで、診療報酬改定時の迅速な対応やクリニックの増収などが期待できます。さらに、日々の業務効率化はスタッフの働きやすさや患者満足度の向上にも直結します。つまり、これからクリニックを開業される先生方にとって、電子カルテの選定はこれまで以上に重要な課題といえます。

当社が提供する無床診療所様向け電子カルテシステム「BrainBox」シリーズは、これからの医療DX時代に対応し、先生方の診療と経営をサポートします。

診療報酬改定に伴う情報提供と迅速なアップデート

当社では、電子カルテ上の「お知らせ」や紙媒体・FAXなどを通して、診療報酬改定に関する情報提供を行っています。また、診療報酬改定に伴うアップデートを迅速かつ正確に提供します。レセプト帳票関連の変更を含め、診療報酬改定に伴う対応については、月額保守料金以外の別途費用は頂戴しておりません。

受付、診察、処方、経営戦略などクリニックのあらゆる場面で業務効率化を支援

当社のBrainBoxシリーズは、診療シーンにおける入力効率を追求したシンプル&簡単操作の「ユヤマ・キーパッド」や、AIを活用したWEB問診機能「BB問診」(オプション)、処方内容を自動でチェックする医薬品総合データベース「MDbank®」など、クリニックの業務効率化を支援するさまざまな機能を搭載しています。

また、経営支援ツール「Cloud BB.Insight」は、電子カルテに蓄積された診療データをAIが分析・予測し、クリニックの経営判断に役立つさまざまな情報を提供します。また、他院へのデータ提供をすることで、他のBrainBoxユーザーの匿名化された医療統計との比較も可能となります。

 

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クリニック開業においては業務効率化と国の医療DX方針への対応が重要

本記事では、日本のクリニック数の最新動向と深刻化する医療機関の経営状況、その背景にある医師不足や医師の高齢化といったさまざまな課題、そして今後の経営課題となる「医療DX推進体制整備加算」について解説しました。
クリニックの施設数は表面的には無床のクリニックが増加していますが、実際には高齢化や後継者不在による閉院と新規開業が同時に起こる変革期を迎えています。クリニックを開業するにあたっては、日々の診療業務の効率化はもちろん、診療報酬とも連動する国の医療DX政策へいかに対応していくかという視点が欠かせません。それらを実現する電子カルテの選定は、クリニック経営の安定を左右する重要な要素といえます。

参考資料

※1 厚生労働省. 医療施設調査(基幹統計).
※2 厚生労働省. 医療施設動態調査(令和7(2025)年8月末概数).
※3 厚生労働省. 平成15年(2003)医療施設(動態)調査・病院報告の概況.
※4 厚生労働省. 令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況.
※5 厚生労働省. 令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況.
※6 厚生労働省. 地域医療構想について.
※7 厚生労働省保険局医療課. 医療機関を取り巻く状況について(中医協 総-4 7.10.29).
※8 厚生労働省. 医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ.
※9 帝国データバンク. 医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年).
※10 厚生労働省. 医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて.

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