現在の日本にあるクリニックの数と今後の推移について解説
病院などの医療機関に勤務医としている医師のなかには、将来的に自分のクリニックを持ちたいと考える方がいらっしゃることでしょう。
開業の際には医療に関する知識だけではなく、経営に関する知識や初期費用など、さまざまなものが必要になります。
クリニックを運営するにあたり、収益は必ず上げなければなりませんが、昨今のクリニックの数はどのような推移をたどっているのでしょうか。
本記事では、現在の日本にあるクリニックの数と今後の推移について解説します。
現在の日本にあるクリニックの数
厚生労働省の調査によると、令和2年でクリニックの数は約102,600件とのことです。
有床クリニックは約6,300件、無床クリニックは約96,300件となっており、無床クリニックが大半を占めています。
実は、クリニックの数は昭和45年から増加傾向にあり、クリニックに高い需要がある状態だといえます。
しかし、有床クリニックの数は年々減少傾向にあり、昭和45年時には29,000件ほどあったものが今は先述の通りです。
病院の数もピーク時の平成2年(10,096件)に対し、令和2年では8,238件と減少傾向にあります。
これらのデータより、病院やクリニックでは病床数を減らす動きが見られるといえます。
さまざまな理由が考えられますが、日本の病床数がほかの国と比べて突き抜けて多いことが挙げられます。
病床数が多くなるほど医療費が増加する傾向にあるため、国の予算を圧迫する原因となります。
つまり、病床数を減らす動きは国を挙げて実施しているともいえます。
また、将来的に日本では高齢化による人口減少の対策として、地域医療構想が策定されています。
病床が必要な方に使ってもらう、正しく使われているかを管理するため、国は医療機関に対して下記の報告を義務付けます。
高度急性期機能
急性期の患者さんに対して、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能です。
小児集中治療室、総合周産期集中治療室であるなど、急性期の患者にして診療密度が特に高い医療を提供する病棟が対象となります。
急性期機能
急性期の患者さんに対して、状態の早期安定化に向けて医療を提供する機能を指します。
回復期機能
急性期を経過した患者さんに対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する機能です。
慢性期機能
長期にわたり療養が必要な患者さんや障害者さん、難病の患者さんなどを入院させる機能です。
医療機関は国に対して、これらに関する現状と今後の方向性をまとめて提出しなければなりません。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「医療提供体制の現状」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001029753.pdf)
今後予想される推移
先述の通り、病院の数は減少傾向にあり、クリニックの数は増加傾向にあります。
具体的には国全体を通して病床数を減らそうという動きが見られているため、無床のクリニックが多くなっています。
また、全国の病院において1日の平均在院患者数は減少傾向にありますが、外来患者は増加傾向にあることも要因のひとつです。
つまり、病院など有床の医療機関で治療を受けなくても、日帰りや定期的な検診で対応することができている状態だといえます。
昭和や平成と比べて医療の技術が進歩していることや、地域間で患者さんの診療情報を共有する動きの結果でしょう。
診療情報の地域連携も国をあげて行っている政策のひとつであり、電子カルテなどが対象となります。
地域連携を実施することにより、医療機関どうしが相互に円滑な連携を図ることができます。
患者さんにとってのメリットは何度も問診表を書かなくても良い、症状をわざわざ伝える必要がないといったものが挙げられます。
以上の理由により、今後もクリニックが増加して病院が減少する動きは継続すると考えられています。
病院が減少している理由
病院が減少している理由のひとつとして、財政難や深刻な医師不足が挙げられます。
現在、日本では医師不足が医療業界の大きな課題となっています。
多忙な割には稼ぎが少ない、そもそも医師を目指していない学生が増えたことが要因です。
そのため、病院では少ない人員でさまざまな対応を迫られているため、過酷な労働環境だといえます。
また、2025年を過ぎると急激な人口減少期に突入するといわれている「2025年問題」が控えています。
人口が減っても病院が増えると需要と供給のバランスが崩れるため、日本では病院を増やさないように施策を行っているところです。
このように、病院の減少は国民の高齢化と国の政策によるものであるといえます。
おわりに
本記事では、現在の日本にあるクリニックの数と今後の推移について解説しました。
令和2年では、クリニックの数は約102,600件、病院の数は8,238件となります。
推移として、クリニックは増加傾向にありますが、病院は減少傾向にあり、この挙動は今後も継続すると考えられます。
また、現代の日本では2025年問題を考慮して、病院を増やさないような政策が行われています。
医師はどのような医療機関に勤務しても、患者さんの健康や回復を第一に考えて業務に臨みましょう。

株式会社ユヤマ

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