2025.01.24電子カルテ

電子カルテ情報共有サービスにおけるクリニックへのメリットとは

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クラウドのイメージ図

厚生労働省が推進する医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関するビジョンである「医療DX令和ビジョン2030」。

このビジョンは、医療の質向上や業務の効率化を目指し、デジタル技術を活用して医療システム全体を革新することを目的としています。

大きく分けて以下の3つの取り組みがあります。

 

  • 全国医療情報プラットフォームの創設

全国の医療機関や薬局で患者さんの電子カルテ情報を共有するための仕組みを提供します。

この仕組みのひとつに電子カルテ情報共有サービスがあります。

 

  • 電子カルテ情報の標準化

電子カルテの情報を標準化し、異なるシステム間での情報共有を容易にします。

 

  • 診療報酬改定DX

診療報酬の算定や請求業務をデジタル化し、医療機関の業務効率化を図ります。

 

このビジョンの実現により、医療の質向上や業務の効率化が期待される中、クリニックにおいても電子カルテ情報共有サービスの導入は大きなメリットをもたらします。

具体的には、他の医療機関との連携強化や診療の質向上、業務の効率化などが挙げられます。

本記事では、この電子カルテ情報共有サービスにおけるクリニックへのメリットについて詳しくみていきます。

 

参考ページ:厚生労働省「医療DXについて

 

全国医療情報プラットフォームとは

電子カルテを使用する医師

全国医療情報プラットフォームは、厚生労働省が推進する医療DXの一環として、全国の医療機関や薬局で患者さんの電子カルテ情報を共有するための仕組みです。

このプラットフォームの導入により、医療機関間での情報共有が円滑になり、患者さんに対する医療の質の向上や効率化が期待されています。

 

電子カルテ情報共有サービス

全国医療情報プラットフォーム」の仕組みのひとつである電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局などで患者さんの電子カルテ情報を共有・閲覧するための仕組みです。

共有・閲覧できる情報は、3文書6情報といわれる患者さんの情報です。

これらの情報をHL7(Health Level Seven International)によって作成されたHL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)という医療情報交換の次世代標準フレームワークを活用して、登録・保存管理・取得/閲覧ができます。

 

参照ページ:厚生労働省「HL7 FHIRに関する調査研究一式最終報告書

 

3文書6情報

3文書6情報とは、全国医療情報プラットフォームで共有される主要な情報セットを指します。

 

3文書

  • 診療情報提供書

診療情報提供所とは、患者さんの診療情報を他の医療機関に提供するための文書です。

これは、患者さんが他の医療機関に紹介される際に、診療の継続性を確保するために重要な役割を果たします。

別の医療機関に情報を提供するという観点では「紹介状」がありますが、診療情報提供所は紹介状よりも詳細な情報が記載されています。

 

  • 退院時サマリー

退院時サマリーとは、入院していた患者さんの病歴や入院時の状態、検査所見などをまとめた記録です。

正確な情報を共有することで、退院後の診療やケアなどをスムーズに行うことができ、患者さんの健康維持・向上に役立ちます。

患者さんは退院時サマリーを確認することで、何に注意するべきなのかを知ることができます。

 

  • 健康診断結果報告書

健康診断結果報告書とは、常時50人以上の労働者を雇用している事業者が所轄の労働基準監督署に提出する書類です。

正社員だけでなく、アルバイトやパートも労働者の対象となり、労働者の健康状態の把握や適切な労働環境の維持が目的です。

なお、当書類はオンライン資格確認システムに5年間保存することが義務付けられています。

 

6情報

  • 傷病名

患者さんがかかったことがある傷病の名前を指すものであり、「脳卒中」や「糖尿病」などの情報です。

傷病名には現在抱えている「現病名」と、過去に抱えていた「既往歴」の2種類があります。

傷病名についてはオンライン資格確認により、5年間の保存が義務となります。

 

  • アレルギー情報

アレルギーは異物から身を守る仕組みに異常をきたしたものであり、人により要因が異なります。

6情報におけるアレルギー情報とは、食品や飲料、医薬品、環境、生物的など、さまざまなアレルギー症状を発症するものを記載しています。

こちらも傷病名と同様に、現在進行形のものと過去にアレルギーだったもの(既往歴)に分けられます。

 

  • 感染症情報

感染症には、インフルエンザや肝炎、感染性胃腸炎などさまざまな種類が含まれています。

6情報における感染症情報は、対象となる患者さんがかかったことがある感染症についての情報が記載されます。

感染症情報についてもオンライン資格確認により、5年間の保存が義務付けられています。

 

  • 薬剤禁忌情報

薬剤における禁忌とは、医薬品を投与すべきではない患者さんや、併用してはいけない薬剤のことです。

同じ症状でも患者さんによって年齢や性別、現在かかっている疾患などによって、処方箋が異なることがあるのです。

医師や薬剤師は過去の傷病名やアレルギー情報などを参考に、最適な処方箋を出すためにこちらの情報を参照します。

 

  • 検査情報

検査情報とは、臨床検査などを含む、対象となる患者さんが過去にどのような検査を受けたのか、またそれら検査の結果です。

患者さんの容態が悪化したり、急患となったりした際に参照する情報です。

検査項目のなかにはコレステロール値や尿蛋白、血糖値といった各種検査から得た情報が含まれます。

 

  • 処方情報

処方情報は患者さんに処方した薬(処方箋)の情報が記載されている項目です。

先述した3文書の退院時サマリーとあわせて確認することで、薬の有効性などを知ることができます。

 

参照ページ:当社コラム「電子カルテにおける3文書・6情報とはどのようなものなのか?

 

電子カルテ情報共有サービスのメリットとは

看護師

電子カルテ情報共有サービスの導入には、患者さん(被保険者)、医療機関等、医療保険者に多くのメリットがあります。

 

患者さん(被保険者)

  • 医療の質の向上

診療情報が共有されることで、医療機関間での連携が強化され、より一貫した治療が受けられます。

 

  • 医療安全の確保

薬剤アレルギー情報や感染症情報が共有されることで、医療事故のリスクが低減されます。

 

  • 利便性の向上

患者さん自身が診療情報を閲覧できるため、自分の健康状態を把握しやすくなります。

 

医療機関等

  • 業務効率化

診療情報の電子共有により、紙ベースの情報管理が不要になり、業務の効率化が図れます。

 

  • 診療の質の向上

他の医療機関からの診療情報を参照することで、より適切な診療が可能になります。

 

  • コスト削減

情報の電子化により、紙の保存や管理にかかるコストが削減されます。

 

医療保険者

  • データの一元管理

被保険者の健康情報を一元管理することで、保険業務の効率化が図れます。

 

  • 予防医療の推進

健診結果や診療情報を基に、予防医療の推進が可能になります。

 

参照ページ:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービスについて

 

クリニックへのメリット

電子カルテを患者に見せる医師

クリニックにおいても、電子カルテ情報共有サービスの導入は多くのメリットをもたらします。以下に、その具体的なメリットを詳しく説明します。

 

他の医療機関との連携強化

クリニックは、入院設備を持たないため、患者さんが他の医療機関で診療や治療を受けることが多くなります。電子カルテ情報共有サービスを導入することで、以下のような連携強化が期待されます。

 

迅速な情報共有

患者さんの診療情報がリアルタイムで共有されるため、他の医療機関との連携がスムーズになります。例えば、紹介状や診療情報提供書が電子的に送信されることで、患者さんの診療履歴や治療計画が即座に把握できます。

 

一貫した治療

異なる医療機関間での情報共有により、患者さんの治療方針が一貫し、重複した検査や治療を避けることができます。これにより、患者さんに対する医療の質が向上します。

 

診療の質向上

電子カルテ情報共有サービスの導入により、クリニックでの診療の質が向上します。具体的には以下の点が挙げられます。

 

包括的な診療情報の把握

患者さんの過去の診療履歴や検査結果、処方情報などが一元的に管理されるため、医師は患者さんの全体像を把握しやすくなります。これにより、より適切な診断や治療が可能になります。

 

医療安全の確保

薬剤アレルギー情報や感染症情報が共有されることで、医療事故のリスクが低減されます。例えば、アレルギー反応を引き起こす薬剤の処方を避けることができます。

 

業務の効率化

電子カルテ情報共有サービスは、クリニックの業務効率化にも寄与します。以下のような効果が期待されます。

 

ペーパーレス化

診療情報が電子化されることで、紙ベースのカルテや書類の管理が不要になります。これにより、書類の紛失リスクが減少し、保管スペースも節約できます。

 

時間の節約

診療情報の検索や共有が迅速に行えるため、医師やスタッフの業務負担が軽減されます。例えば、過去の診療履歴を探す時間が短縮され、診療に専念できる時間が増えます。

 

コスト削減

紙の保存や管理にかかるコストが削減されるため、経費の節約にもつながります。

 

このように、クリニックにおける電子カルテ情報共有サービスの導入は、他の医療機関との連携強化、診療の質向上、業務の効率化といった多くのメリットをもたらします。

これにより、患者さんに対する医療提供の質が高まり、医師やスタッフの負担も軽減されることが期待されます。

 

電子カルテ情報共有サービスの課題

医師

電子カルテ情報共有サービスの導入には、いくつかの課題も存在します。

 

  • 普及率
  • 電子カルテ情報の「標準化」
  • システムの導入コストと運用コスト
  • 情報セキュリティの確保
  • プライバシー保護

 

これらの課題を克服するため、政府や医療機関、IT企業が連携して取り組む必要があります。

 

おわりに

本記事では、電子カルテ情報共有サービスにおけるクリニックへのメリットについて解説しました。

全国医療情報プラットフォームと電子カルテ情報共有サービスは、医療の質の向上や業務効率化に大きく寄与する取り組みです。

クリニックにおいても、これらのサービスを活用することで、患者さんに対する医療提供の質を高めることが期待されます。

今後の課題を克服しながら、さらなる発展を目指していくことが重要です。

 

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タグ : 電子カルテ メリット クリニック 電子カルテ情報共有サービス
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