電子カルテとは?導入において抱える課題と導入後に得られるメリット
紙のカルテを作成・保管するためには多くの手間や時間を要するため、効率良く運用することができる電子カルテへの切り替えが2000年頃から始まっています。
それでも完全に普及しているわけではないのは、いくつか原因があります。
電子カルテを導入したら得られるメリットと合わせて考えてみましょう。
電子カルテとは
電子カルテとは、旧来紙のカルテで管理していた医療情報を電子データとして管理・編集・記録するシステムです。
医療情報を電子データとして管理することができるため、旧来の紙のカルテと比較して効率面や管理面など様々な面でメリットを得ることができます。
医療の発展に伴い、業務効率化やミスをよりゼロに近づけることの必要性が高まり、紙のカルテから電子カルテへの移行が進んでいるのです。
電子カルテ導入後のメリット
電子カルテの導入には多くのメリットがあります。
電子カルテは多くの医療機関で導入されていますが、そこには紙のカルテと比較して非常に多くのメリットがあることがあげられます。
紙のカルテで医療情報を管理していた際の問題点の改善や、新たにできるようになったことなど電子カルテには多くのメリットがあるため、様々な医療機関が導入しているのです。
電子カルテ導入後にはどのようなメリットがあるのかをご紹介いたします。
情報整理の時間短縮ができる
患者の記録をデータにすることで得られるメリットとして、情報整理をするための時間が短縮できます。
そもそもカルテは患者の病気や怪我の症状や治療の内容などを記載するものです。
紙のカルテだと細かい部分まで人の手で書き込んでいかなければならず時間がかかります。その上、作成したカルテは、適切な保管場所に置かれなければ意味がありません。
1つ1つの作業を人が行うので、かなりの時間が必要になります。
電子カルテにデータ入力するのであれば、用意されたテンプレートに必要なことを入力していくだけの簡単な作業でカルテが仕上がるので必要な時間は紙のカルテに比べて短いです。
しかも、保管する場所を探す必要はなく、作成したら自動的に情報がデータベースに整理されます。
それが数百件、数千件という数になるので、節約できる時間はかなりの分量です。
多忙な医師などは、電子カルテを導入して情報整理にかける時間を短縮できればかなりの負担を軽減できます。
管理の効率が上がる
必要な情報をすべて紙の書類でまとめるとすれば、患者の数によっては膨大な量になります。
しかし電子カルテであれば、検査データも薬のデータもすべて紐づけすることでまとめて管理ができます。
簡単に管理できるということは、その情報を閲覧する時も、知りたい情報をすぐに見つけ出せるということです。
一度作成したデータは、削除しない限り残り続けます。
これにより業務を効率的に行うことができます。
また紙のカルテだと取り寄せた後に返却して、もとのところに戻さなければいけません。
そういった流れの中で、管理が行き届かなくて紛失するリスクもあります。
電子カルテはデータが保管されているサーバーにアクセスできればいいので、カルテを移動させる時間と手間は必要なく、紛失する恐れもありません。
このように管理が非常に簡単で、業務が効率化されます。
データの共有で診察の質が向上する
データの共有ができる仕組みが最初からつくられていれば、過去の既往症やアレルギーなどをより簡単に知ることができ、適切な治療を行えます。
他にもデータの共有により電子カルテを使用している場合、他の医療機関で処方されている薬と一緒に飲んではいけない薬を処方しようとすれば、警告が出てきます。
それを見て医師は別の薬を考えたり、他の治療法を行ったりします。
このように電子カルテを導入することでデータの共有ができるようになり、医師の判断ミスによる医療事故が防げます。
また、患者に病気や治療についての説明をする時にも、データにある画像や数値を提示しやすくなります。
これにより患者は説明を理解しやすくなり、治療を始めるのか・やらないのかの選択をする時に後悔することがなくなります。
スムーズな情報共有
電子カルテは紙のカルテと異なり、複数の場所で同時に複数の人物が同じ医療情報を閲覧することができます。
そのため、その医療情報が見たい時に閲覧をすることができないということがありません。
また、その医療情報を格納している場所に探しに行くための時間も不要となるため、知りたいと思ったときにスムーズにその医療情報にアクセスすることができるのです。
紙のカルテの医療情報が手元に届くまでのタイムロスをなくすことができるため、医療そのものにかけることのできる時間を増やすことができるのは電子カルテならではの強みだと言えるでしょう。
また、電子カルテは複数のフォーマットの作成が可能なため、症状や疾病ごとに決まったテンプレートを作成しておくことで改めて資料を確認した際に知りたい情報が資料のどこに書かれているのかを直感的に認識することができるようになります。
必要な情報の記入と直感的な検索の両立によりスムーズな情報共有ができるようになるのです。
電子カルテ導入時のデメリット
電子カルテ導入にはメリットばかりように思えますが、そうではなくデメリットもあります。
電子カルテ導入時にはそのようなデメリットについてもしっかりと知ったうえで導入をするようにしたほうが良いでしょう。
電子カルテ導入のデメリットとは下記のようなことです。
電子カルテが抱えている課題
電子カルテが抱えている課題はなにかというと、多額の費用がかかることです。
費用がかかる理由は、必要な時に情報の閲覧ができるよう、システムを構築して運用するからです。
そのシステムの開発やデータを保管しておくサーバーの設置、そしてメンテナンスとやるべきことが数多く、そのために費用がかかります。
それが原因で、中小規模の病院や街の診療所では積極的な導入ができていません。
結果として、日本での普及率は政府の目標を大幅に下回っています。
それから、すべての患者のデータが電子カルテとしてまとめるにあたって、統一規格がありません。
各医療機関で異なる規格を使っていると、強みである情報の共有ができなくなり、紙のカルテとたいして変わらない利便性になります。
その課題を受けて、安価で使えるシステムの開発や統一規格をつくろうという動きがあります。
それらの努力により将来的には、普及が進む可能性はあります。
クラウド型電子カルテとは
クラウド型電子カルテとは、インターネット回線を通じて情報のやり取りを行う電子カルテを指します。
情報を保存するサーバーは電子カルテのメーカーが保有しているため、停電や機器の故障といったトラブルに見舞われても、情報を保持することができます。
また、高齢化や流行病などにより外出ができず、訪問診療を受ける方が多くなっている昨今では、クラウド型の電子カルテを導入することによって院外でタブレットやノートパソコンなどを使用し、電子カルテに情報を書き込むことができるようになります。
オンプレミス型電子カルテとは?
オンプレミス型電子カルテとは、院内にサーバーやネットワークを設置・構築して運用する電子カルテを指します。
医療に関する情報には患者さんの住所や診療内容、支払い内容など個人情報なども含まれます。
そのような情報が外部に漏えいしてしまった場合、患者さんを危険にさらしてしまうことによって、診療所やクリニックの信頼を失う可能性があります。
オンプレミス型電子カルテの場合、院内でサーバーやネットワークを設置・構築するため、外部に情報が漏えいしにくいといった特徴があります。
参考ページ:電子カルテとは?クラウド型とは?基礎を理解して活用しよう(https://www.yuyama.co.jp/column/medicalrecord/electronicmedicalrecord-katsuyou/)
電子カルテで守るべき三原則
電子カルテには医師法第24条によって、後述する「真正性」「見読性」「保存性」の三原則を守らなければならない旨が明記されています。
真正性
真正性とは、記載した電子カルテが改ざんされないように情報を保護することと、電子カルテに記載した方の特定といった、責任の所在を明確にする必要がある旨をまとめたものです。
電子カルテは患者さんに関する情報を記載しているため、改ざんされた場合は命の危機にさらしてしまう可能性があります。
そのような事態を防ぐために、こちらの真正性が設けられています。
見読性
見読性とは電子カルテに記載された情報を誰でもはっきりと読むことができ、正しい理解を得ることができるようにしなければならない旨を指します。
急患などに対応する場合、過去の電子カルテを参照しても何を記載しているかが分からなかった場合、正しい診療を行うことができません。
こちらの見読性を踏襲した電子カルテのデータを使用することで、最適な診療を行うことができるようになります。
保存性
保存性とは、電子カルテなどのデータを指定された期間中、いつでも閲覧、復元できる状態で保存する必要がある旨を定めたものです。
紙カルテ同様、電子カルテは5年間の保存期間が医師法によって定められています。
保存性を確保するため、こまめにバックアップを取ったり、機器に不具合が起きた場合はすぐに対処したりといった対応を取る必要があります。
参考ページ:「【電子カルテ】電子保存の三原則についてご紹介」
(https://www.yuyama.co.jp/column/medicalrecord/electronicmedicalrecord-principle/)
電子カルテシステムEMRとは?
診療情報をデジタルデータにて管理、確認している方もいらっしゃるかと思います。
デジタルデータは紙と違って保管場所を取らない、いつでも確認ができる、院内の関係者に共有しやすいなどさまざまなメリットがあります。
こちらでは、そんな医療のデジタルデータを指すEMRや、似たような言葉であるEHR、PHRとの違いについてご説明いたします。
EMRとは?
EMRとは、Electronic Medical Recordsの略で、電子化された医療の記録、つまり電子カルテのことを指します。
政府が導入率の目標を掲げるなど普及の後押しをしていることもあり広まってきました。医療機関ごとにそれぞれ独自のシステムを構築しており、即座にデータ共有できないなどの課題がありましたが、近年「地域医療ネットワーク」の取り組みとして複数の医療機関での情報共有が実現するようになってきました。
EHRとは?
EHRとは Electric Health Record の略で、電子健康記録のことを指します。
EHRは言葉通り、過去の病歴、診断結果、投薬、アレルギー、検査データ、などの人の健康情報のデジタル化です。
EHRの特徴として情報共有の手軽さやデータ確認の簡易を挙げることができます。
前者は患者が医療機関を変えた場合でも追従が可能となり、また後者では患者自身が自らの健康状態を管理する目的で運動実績や血圧などを確認することが可能となります。
PHRとは?
PHRとは、Personal Health Recordの略で、日本語訳すると「個人健康記録」になります。
病気や服薬履歴など、異なる施設に分散している健康、医療情報を個人レベルに収集し、管理する仕組みになります。
また、患者自らが医療、健康情報を収集し保存することもPHRとなります。
身近なところではPHRのアプリや、電子お薬手帳や電子母子手帳など、従来は患者自身が紙媒体で管理していたものが電子化されたものが該当します。
これにより、万が一の場合でも、手持ちのスマートフォンやPCからデータを共有することが出来るようになるので迅速な救援活動を行うことが出来ます。
EMR やEHR よりも患者、一般ユーザーに近いデータの集合体といえます。
EMRをEHRとして使用することができるか
優れた電子カルテのシステムですが、EHR システムとしてデータを共有、確認する為には互換性が担保されていなければなりません。
というのも、本来EMRは院内のみでの情報共有に使用されるもので、院外での使用は考慮に入れていません。
なので、他のEMRシステムと相互連携が可能なEMRシステムを備えている場合に限りデータを授受することが出来ます。
関連記事:【電子カルテコラム】電子カルテシステムEMRとは?
電子カルテを導入したお客様の声
かつては紙カルテで管理をしていた診療所でも、電子カルテを導入することによって業務改善ができた事例がございます。
こちらでは、電子カルテを導入したことによって、業務がどのように変わったのかを事例とあわせてご紹介します。
事例1:診療スピードが向上した
診療所において診療スピードは、診察できる患者さんの数が変わるため、収益に関わる重要な要素です。
紙カルテで管理している場合、対象となる患者さんのカルテを探す際に多くの時間を要するものです。
また、過去の情報を参照する際に、必要事項が記載されている箇所を探す際にも時間がかかります。
電子カルテを導入することで、検索機能を使うことにより必要な情報を必要なときに参照することができます。
診療スピードが向上することにより、紙カルテで管理していたときよりも多くの患者さんを診察することが可能となります。
その結果、患者さんは待ち時間が短縮されるため満足度が向上し、診療所は収益性が改善されます。
当社の電子カルテは、直感的に操作しやすいという理由から多くのお客様に採用いただいております。
ペンタブ対応のものがあるため、紙カルテと同様の記載方法にも対応している点に魅力を感じる方も多くいらっしゃいます。
事例2:使いやすさ・カスタマイズ性
業務効率の改善における重要な要素として、電子カルテの使いやすさが挙げられます。
使いにくい電子カルテは入力や情報検索の際に多くの時間を要してしまうため、業務効率改善を実現しにくいものです。
電子カルテの使いやすさには簡単にSOAP入力ができたり、定型文の学習や呼び出しができたりする機能などが含まれています。
また、診療所によって求められる機能が異なるため、カスタマイズの自由度を重視する方がいらっしゃるものです。
表計算ソフトのデータを電子カルテ上で確認できるようにするなど、カスタマイズは診療所により異なります。
当社では診療所やドクターからのニーズをくみ取り、最適な形式でカスタマイズをしてから納品いたします。
多くのドクターから頂いたリクエストのなかには、バージョンアップ時に対応するものもあります。
そのため、電子カルテは導入して終わりではなく、その後も使いやすいように日々アップグレードに臨んでいます。
事例3:既存システムとの連携性
電子カルテは単体でも業務効率に貢献しますが、さまざまなシステムと連携することで利便性が向上します。
診療所内には、心電計やレントゲン、画像ファイリングシステムといった、さまざまなシステムが導入されています。
これらが独立していると、必要なたびにそのシステムのもとへ足を運び、データを閲覧しなければなりません。
電子カルテとさまざまなシステムを連携することで、医師をはじめとして看護師さんや事務さんの手間を削減できます。
また、手作業が減ることによりヌケモレなどのヒューマンエラーを抑えられるため、正しいデータを得られる点もメリットです。
ミスがあった場合、そのデータの信ぴょう性そのものを疑わざるを得ません。
当社の電子カルテはさまざまなシステムと連携し、診療所全体における業務効率の改善を実現できます。
導入後も担当者が真摯に対応しており、その点についても多くの医師から支持を得ています。
当社ページ:電子カルテ ドクターリポート
(https://www.yuyama.co.jp/product/products/karte_user-report/)
電子カルテに関するよくある質問
下記は、電子カルテに関する質問と、その答えになります。
Q1:オンプレミス型とクラウド型はどちらが良い?
結論として、導入する診療所によってどちらにもメリットやデメリットが発生するため、一概にはいえません。
オンプレミス型は自院にサーバーを設置し、そちらにデータを保管したり記録したりするものです。
インターネットに接続しないため高いセキュリティ性を保持している一方、サーバーの設置場所などを考えなければなりません。
クラウド型は電子カルテメーカーが管理しているクラウド上にデータを保管し、さまざまな端末でデータを確認することができます。
サーバーの保管場所を気にする必要はありませんが、インターネットを利用するためセキュリティには注意が必要です。
このように、オンプレミス型とクラウド型にはさまざまな特徴があるため、自院に合ったものを検討・選定しましょう。
当社コラムページ:クリニック用電子カルテの選び方についてご紹介
(https://www.yuyama.co.jp/column/medicalrecord/electronicmedicalrecord-clinicselect/)
Q2:IT導入補助金について
電子カルテは、国が推進している医療DXの一要素に含まれます。
しかし、電子カルテを含めたITツールは、導入時に多額の費用を必要とします。
導入の際、国や自治体が補助金や助成金といった、金銭的な支援を行っていることがあります。
そのなかにはIT導入補助金と呼ばれるものがあり、条件を満たしたうえで申請することで受け取ることができます。
Q3:オンラインデモは実施している?
当社では、電子カルテのオンラインデモを実施しています。
電子カルテ以外にも、調剤薬局様向けレセコンシステムや、病院向けシステムもオンラインデモができます。
導入前に操作感覚を理解しておきたいという方は、お気軽にお申し込みください。
オンラインデモはこちらから(https://www.yuyama.co.jp/online/)
おわりに
電子カルテは、導入に多額の費用がかかることや統一規格がないといった課題を抱えており、普及率がそれほど高くありません。
しかし、導入すれば、作業効率が良くなって時間の節約になりますし、作成から閲覧までの管理が簡単です。
情報の共有も瞬時にできますから最適な治療を行えます。データに含まれる画像などを使えば患者自身の理解も深められます。

株式会社ユヤマ

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