2022.05.23電子カルテ

電子カルテシステム稼働へのフローをご紹介

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電子カルテのマネジメント

厚生省(当時)から『診療録等の電子媒体による保存について』の通知が出されて約20年、電子カルテシステムを導入する診療所は日を追うごとに増えてきています。また、電子カルテ各社製品もどんどん使いやすく便利なものへと進化し続けています。

本記事では、診療所で一体型電子カルテシステムを立ち上げ、稼働させる為の手順についてご紹介します。

 

システムは「立ち上げる」為の手順が必要

システム立ち上げ

買ってすぐに使える家電製品とは異なり、電子カルテなどのような業務支援システムは相応の時間を費やし、手順を踏んで立ち上げていかなければ稼働させることができません。また、大まかなフローは同じであっても、新規開業時の導入か、中途からの導入かなどのように診療所の状況によってその手順が異なる部分があります。

以下、新規開業に合わせて導入する場合や既に運営中の診療所で中途から導入する場合などについてご紹介します。

 

診療所の新規開業時に電子カルテを導入する場合

機種選定

デモを交えたメーカー商談を行い、機種を選定します。自らのやりたいことができるのか、どこまでどのようにできるのかを各社比較することが重要です。

 

工事等図面打合せ

導入する電子カルテシステムに合わせて以下のような確認・変更を打合せします。

・機器設置場所の什器等寸法数量や配置に変更の必要があるか

・電源コンセントの位置や数量に変更の必要があるか

・LAN配線配管や配電盤寸法等に変更の必要があるか

・プロイバイダ、キャリア契約に変更の必要があるか

 

搬入設置日打合せ

相互接続(連携)先各社との日程調整含めて搬入設置日程を打合せします。

 

出荷時初期設定事項、各種マスタ設定情報打合せ

システムの初期設定事項、頻用する病名、医薬品とその組合せ、処置や手術などの診療行為(と用いる医薬品や医療材料及びその数量との組合せ)、画像診断オーダ(撮影部位、撮影方向、撮影枚数などの組合せ)などの設定について打合せを行います。多忙な中でのマスタ整備は少々負担がかかりますが、メーカー出荷前にある程度の設定を済ませておけば稼働直前期の負担や混乱を回避できます。

 

工事作業中の確認

図面打合せ通りに施工されているか必ず確認します。工事が済み、システム納品設置時になってから施工の誤りが発覚すると、工事のやり直しが発生します。

 

搬入設置

電子カルテシステムの搬入と設置を行います。システムの機器類についての導通試験も行います。

相互接続(連携)先との接続設定作業及び試験も同日に実施するのか後日なのか、あらかじめ決めたスケジュールに従い実施します。

 

操作練習(レクチャー)

医師、事務員、看護師等コメディカル毎に日時を設けて実施します。設定やマスタの変更、追加登録等微調整作業を併行して行います。

関連事項として、運用ルールについての打合せ(設定やマスタ調整との組合せで最適化)も行います。次回のレクチャーまでに操作練習(自習)の為の時間もスケジューリングしておくのが理想的です。

 

模擬診療(シミュレーション)

実稼働を想定した模擬診療を行います。院長以下スタッフ全員参加で問題点を洗い出し、解決策を協議します。可能であればメーカー担当者も同席させることにより、動作設定変更や採用マスタ調整などで解決できる場合があります。

 

内見会

内見会開催時に来院申込も行う場合は申込者の新患登録や予約入力などを行う必要があり、開院日よりも前に運用を開始することになります。

 

開院(本稼働)

開院日から3日程度メーカー担当者による稼働立会いが行われます。動作設定見直しやマスタ追加などの微調整を行います。また、実稼働の中で生じた具体的・個別的な事柄について操作方法などを習得します。

 

初回レセプトレクチャー

当月診療、翌月請求のレセプト業務について稼働立会いの後日にメーカー担当者からレクチャーを受けます。この時にオンライン請求設定作業を併せて行う場合があります。

 

初回レセプト作成、送信(請求)

レクチャーを受け作成した初回レセプトデータを出力し送信(請求)を行う現場にメーカー担当者が立ち合います。

 

既存診療所で電子カルテを導入する場合

機種選定~搬入設置日打合せ

(新規開業の場合と同じです)

 

出荷時初期設定事項、各種マスタ設定情報打合せ

新規開業の場合と基本的には同じですが、現在行っている診療の中で使用している採用マスタ情報(投薬オーダセット、検査オーダセット、画像撮影セット、処置や手術セット、他)は漏れなく登録しておく必要があります。メーカー出荷前に大半の登録が完了できるよう準備しましょう。

 

移行可能なデータの出力

レセコンなど旧システムから移行可能なデータを出力し、出荷までに取込みを行います。患者属性情報に加えてレセプト電算ファイルから抽出した病名情報やオーダ情報なども活用します。どこまで移行可能であるかはレセコンの状況により差異があるのでメーカー担当者に相談しましょう。

 

搬入設置(仮・本)

電子カルテシステムの搬入と設置を行います。システムの機器類についての導通試験も行います。相互接続(連携)先との接続設定作業及び試験も同日に実施するのか後日なのか、あらかじめ決めたスケジュールに従い実施します。本稼働日の前日までは現行のシステム(レセコンなど)による業務が継続するので、一旦は別室に仮設置して準備を進め、稼働前日に本設置を行います。

 

操作練習(レクチャー)

新規開業の場合と基本的には同じですが、院長以下全員が日々実務に携わる中で、場合によっては勤務シフトの調整なども行いながら計画的に時間枠を設けて実施していく必要があります。

 

事前入力

稼働当初の負担軽減の為に、患者毎にコピー元となるオーダデータ等を入力し保存します。すべての患者について事前入力を行うのではなく、例えば「過去3か月以内に来院歴がある」かつ「慢性疾患で定期通院している」などのように条件を設けて対象患者を絞り込むことによって「稼働初日からコピー入力などで負担少なく操作」できてほしい患者についてのみ行います。

 

模擬診療(シミュレーション)

新規開業前のような大々的な模擬診療は不要ですが、スタッフの動線や患者の動線がどのように変わるのかを中心にシミュレーションを行います。問題点の洗い出しと解決策の協議、システム設定の調整による改善の有無などは新規開業の場合と同じです。

 

本稼働

稼働開始日から3日程度メーカー担当者による稼働立会いが行われます。動作設定見直しやマスタ追加などの微調整を行います。また、実稼働の中で生じた具体的・個別的な事柄について操作方法などを習得します。なお、システム稼働当初は以下のような「並行運用」を行います。

診療回数を重ねて充分な電子カルテ情報が蓄積できた患者から順に「並行運用」を終了させていきます。

 

1)「紙カルテ+レセコン」運用からの移行の場合

→過去情報は紙カルテを参照しながら当日情報を電子カルテに入力します。

 

2)「電子カルテ(旧システム)からの買い替え稼働の場合(その1)

→旧電子カルテ情報がPDFファイル化など出力可能な仕様である場合はこれを取込み、参照しながら当日情報を新電子カルテに入力します。

 

3)「電子カルテ(旧システム)からの買い替え稼働の場合(その2)

→旧電子カルテ情報が出力できない仕様の場合は新旧2台を並べ、旧カルテ情報を表示しながら当日情報を新電子カルテに入力します。

 

旧システムでのレセプト業務

新システムが稼働する月初は、同時に旧システム(レセコンや買い替え前の電子カルテ)でのレセプト業務(前月診療、当月請求)を行う時期でもあるので、新システム端末との入れ替えの際はこれらレセプト業務に支障を来さないよう撤去後の移設スペースを確保しておく必要があります。

 

初回レセプトレクチャー

新規開業の場合と基本的には同じです。オンライン請求の設定変更など、関連する作業も併せて行う場合があります。

 

初回レセプト作成、送信(請求)

(新規開業の場合と同じです)

 

旧システム取扱いの注意点

レセコンや買い替え前の旧電子カルテシステムで作成出力されたレセプトについて返戻が発生した場合、そのシステムを起動させて業務を行う必要があります。期間は院長判断となりますが、返戻時の対応を見越して旧システムは直ちに廃棄処分せず、いつでも使用できるように保管しておきます。

 

おわりに

本記事では一体型電子カルテシステムを稼働させる為の手順をご紹介しました。電子カルテシステム立上げの大まかなフローは共通していても、新規開業時の稼働と既存診療所(紙カルテ運用or旧電子カルテ運用)での中途からの稼働では踏むべき手順やスケジューリングなど異なる点が多くあります。診療所ごとに状況は異なりますので、特に既存診療所で新システムを導入する際はメーカー担当者から最適な提案を受けるようにしましょう。

 

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タグ : マネジメント 電子カルテ
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