2025.04.25電子カルテ

電子処方箋の仕組みや導入によるクリニック・薬局・患者のメリットとは?

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従来の処方箋は紙媒体で発行され、患者がそれを薬局に持参して処方薬を受け取る形式が一般的でした。

紙の処方箋は手軽に内容を確認できるという利点がある一方で、手書きの場合には視認性が低下したり、記入漏れや転記ミスが発生したりするリスクがあります。さらに、紛失や第三者に処方内容を見られるといった情報漏洩のリスクも懸念されます。こうした課題を背景に、電子処方箋の導入が徐々に進んでいます。

電子処方箋は、これらのリスクを軽減し、患者の利便性を高めるとともに、医療機関と薬局間の情報伝達を効率化できる点が注目されています。

本記事では、電子処方箋の仕組みと、導入によって得られるクリニック・薬局・患者それぞれのメリットについて解説します。

電子処方箋とは?

電子処方箋とは、これまで紙で発行していた処方箋を電子化したものになります。

医療機関において、患者が服薬情報の提供に同意することで、医師は電子的に処方箋を作成し、その情報が暗号化された形で薬剤師に共有され、安全かつ効率的な調剤が実現されます。

従来の紙媒体の処方箋は、患者が自ら薬局に持参する必要があるため、万が一の紛失や第三者が処方内容を見てしまうリスクが存在します。「紙を薬局に持参する」とはいっても、意外と患者の手間になってしまうものです。

また、患者のなかには忙しくてなかなか医療機関を訪問出来ないという人もいらっしゃいます。原則として、処方箋の使用期間は休・祝日を含む4日以内とされており、それ以降は無効となるため、患者は処方薬を受け取れなくなります。

その際は医療機関で再発行してもらわなければならないため、余計な手間が発生してしまいます。電子処方箋についても上記条件は該当しますが、紙媒体ではないことから持参に要する負担が軽減されます。

会社帰りや帰宅途中に処方箋を受け取れる薬局を訪問することで、容易に受け取ることが出来ます。

 

電子処方箋の導入状況

以下は2025年3月現在における、クリニック(医科診療所)、および薬局の電子処方箋の導入状況です。

導入率

2025年3月 2024年4月
クリニック 16.0% 2.5%
薬局 76.5% 31.9%

上記の表より、電子処方箋は1年間でクリニック・薬局ともに導入率が向上していることがわかります。

しかし、未導入の施設も多数あり、特にクリニックにおいては8割以上が電子処方箋を導入していない状況です。

クリニックが電子処方箋で処方内容をデータ送信した場合、電子処方箋に対応していない薬局では、調剤をしてもらえません。そのため、クリニックでは現在も紙媒体の処方箋を発行しております。

また、クリニックや薬局が電子処方箋を導入していても、全ての患者がマイナンバーを持参しているわけではなく、保険証での受付も行われています。

紙処方により他院で処方された薬品との重複投薬チェックはお薬手帳のみとなっており、より直近で確認できる処方情報は薬局レセプトデータを閲覧します。

これらのことから、導入数や導入率が伸びないのではないかと考えられています。

 

参考ページ:デジタル庁ホームページ「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」

https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/electronic-prescription)

 

電子処方箋の仕組み

電子処方箋は、紙媒体を使用せず、医師が電子カルテから処方情報を入力し、その情報が「電子処方箋管理サービス」を通じて安全に登録・共有される仕組みです。

その後、患者を受け付けた薬局の薬剤師が、処方情報を電子処方箋管理サービスから処方情報を取得して調剤する仕組みです。

処方薬の受け取りには、保険の確認に加えて、医療機関で交付される引き換え番号および本人確認のためのマイナンバーカードもしくは資格確認書が必要です。

以下が、診療から処方薬を受け取るまでの流れです。

  1. 医療機関において、オンライン資格確認システム等による患者の本人確認を実施し、診療を受ける
  2. 医療機関が電子処方箋管理サービスに処方箋情報を登録する
  3. 薬局において、オンライン資格確認システム等による患者の本人確認が実施され、電子処方箋管理サービスへアクセスし、処方情報を受け取る
  4. 薬剤師は処方薬を渡す際に、患者に対して服薬指導を実施する
  5. 処方薬を渡したあと、薬剤師は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する
  6. 登録された調剤情報が医療機関と共有される

医療機関に調剤情報をシームレスに共有することで、使用禁忌や重複投薬を防ぐことができます。飲み合わせの確認は、従来では患者の記憶やお薬手帳をもとに確認していました。「確か○○の薬を処方されていたような…」といったように、患者の記憶があいまいで正確な確認が行えない人もいれば、お薬手帳に記載漏れやシールの貼り忘れが発生することもあります。なにかを覚えてもらうという行為は負担が大きいもので、処方された薬をすべては覚えられない、という患者は少なくありません。

一方、電子処方箋の場合は電子処方箋管理サービスに情報が登録されており、医療機関はすぐに確認が出来ます。医療機関が処方箋を発行する際、使用禁忌や重複投薬に抵触する可能性がある薬の処方を事前に防ぐことが出来るのです。

上記より、電子処方箋を使用することで医療機関および薬局は、薬に関する事故を防ぎやすくなります。

 

電子処方箋を導入することで得られる患者・医療機関・薬局のメリット

電子処方箋を導入することで、患者・医療機関・薬局は以下のメリットを得られます。

患者

  • 全国どこの薬局でも調剤履歴を確認できるため、診療の継続性を確保出来る
  • 事故や災害時でも、常用している薬を医療機関が把握しやすくなる
  • 自身の治療歴や調剤情報が蓄積されるため、自己管理に役立てられる

医療機関

  • 薬局とリアルタイムで調剤情報の共有が行えるため、質の高い診療が実現できる
  • 電子処方箋管理サービスに情報を蓄積することで、使用禁忌や重複投薬といった薬に関するリスクを抑えられる
  • 自院だけでなく、他院での処方情報を確認することで、患者への処方を考えることができる

薬局

  • 他の薬局の調剤情報を閲覧できるため、質の高い服薬指導を実現出来る
  • データは改ざん出来ないため、医療機関が求める処方内容で調剤できる
  • 災害をはじめとした緊急時でも、患者の処方箋情報を参照することで継続的な処方が実現しやすくなる

 

おわりに

本記事では、電子処方箋について解説しました。

電子処方箋は医療機関において、患者が服薬情報の提供に同意することで発行される、電子データの処方箋です。患者から了承を得た場合に限り、医師は電子的に処方箋を作成し、その情報が暗号化された形で薬剤師に共有され、安全かつ効率的な調剤が実現されます。

電子処方箋の情報は「電子処方箋管理サービス」に保管されており、当サービスを通じて安全に登録・共有される仕組みです。

一方、2025年3月現在の導入率についてはクリニックが16.0%、薬局が76.5%となっており、課題が残る結果といえます。

電子処方箋を導入することで、以下3点のメリットが得られます。

  • 全国どこの薬局でも処方箋を受け取れるため、診療の継続性を確保出来る
  • 事故や災害時でも、常用している薬を医療機関が把握しやすくなる
  • 自分の医療・薬剤情報が蓄積されるため、自己管理に役立てられる

未導入の場合は電子処方箋を導入し、質の高い医療を提供するためのきっかけとされてはいかがでしょうか。

 

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