2021.01.08電子カルテ

電子カルテのクラーク運用で業務効率化を図る

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電子カルテのクラーク

電子カルテのクラーク運用は、診療録の入力業務を効率化し、医療機関における労働環境の適正化を実現します。医師の事務作業を補助するクラークを活用して電子カルテ業務を分担することで、医師は医学的判断や患者との対話など本来の医療業務に集中できるようになり、診療の質の向上にもつながります。

本記事では、電子カルテのクラーク運用がクリニックにもたらす効果や、2024年4月から始まった医師の働き方改革との関連性、令和6年度(2024年度)の診療報酬改定で新設された「ベースアップ評価料」の恩恵について解説します。

電子カルテクラークとは

医師の事務作業を補助する専門スタッフ「医師事務作業補助者(クラーク、医療クラーク、ドクターズクラーク)」のなかでも、特に電子カルテに関連する業務を担当するクラークのことを、電子カルテクラークと呼ぶ場合があります。電子カルテへの入力や各種文書作成など、医師が行っていた事務作業を電子カルテクラークが担うことで、医師は本質的な診療行為に専念できるようになります。

電子カルテクラークがいれば、電子カルテの導入・運用がスムーズになり、医師の負担が軽減します。医師は診察や患者との対話などに集中でき、電子カルテに入力するための時間がなくなる分、患者の待ち時間短縮やクリニック全体の業務効率化、診療の質の向上にも貢献します。

近年、医師事務作業補助者を配置する医療機関数は増加しています。後述する「医師事務作業補助体制加算」の届出状況を見ると、平成20年度(2008年度)の診療報酬改定で新設されて以来、一貫して増加し続けており、令和元年(2019年)時点では加算1・加算2を合わせて2,848施設が医師事務作業補助体制加算を届け出ていることがわかります。診療報酬の改定のたびに評価が進み、医師の負担軽減策としてクラーク配置は多くの医療機関で当たり前になりつつあります。※1

医師事務作業補助体制加算の届出医療機関数の推移
引用元:厚生労働省. 個別事項(その8)働き方改革の推進について(その2) ※1

電子カルテクラークはなぜ必要?

「電子カルテ専門のクラークが効果的なのは、規模の大きい病院だけでは?」
「わざわざ電子カルテ専門のクラークを雇わなくても、うちのクリニックには必要ないのでは?」

このように考える先生方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、日々の診療録の入力を負担に感じておらず、電子カルテ入力や文書作成のための残業もなく、医師の事務負担がクリニックの課題になっていないのなら、電子カルテ専門のクラークは不要です。

しかし、実際には、外来患者数が増加するにつれて電子カルテ入力の負担が増大します。特に、一日の外来患者数が100人を超えるような繁忙な状況では、カルテ入力だけでも相当な作業量になります。1件あたりの入力時間は短くても、積み重なれば膨大な時間となってしまうのです。

2012年に行われた「医師が電子カルテ操作に費やす業務時間に関する調査」によると、医師の1日あたり事務作業時間は平均で約2時間57分に上ると報告されています。なお、電子カルテ導入済みの病院において、医師が電子カルテを操作する時間の内訳としては、「外来診療録」が27.6分と最も長く、次いで「入院診療録」が14.1分、「オーダーエントリ」が9.0分でした。この調査では、これらの事務作業が医師の業務負荷の一端になっており、医師事務作業補助者によるサポートの必要性が示唆されています。※2

医師の仕事は、診察・処置・検査・患者説明など多岐にわたります。これらの診療行為と並行しながら、電子カルテへの入力や紹介状などの文書作成などの事務作業をこなすのは大変です。診療の合間に事務作業を済ませようとして、患者の待ち時間が徐々に伸びてしまったり、診察時間が終了した後にまとめて電子カルテへ入力しようとして、結果的に残業時間が長くなってしまったりします。

医師の働き方改革とタスクシフト/シェアの潮流

2024年4月から適用された医師の時間外労働上限規制は、医療界におけるタスクシフト/シェアの流れを決定的なものにしました。医師の働き方改革のため、事務作業の負担をいかに減らすかは喫緊の課題となっています。※3

医師の働き方改革
引用元:厚生労働省. 医師の働き方改革 ※3

これまでの医療現場では、「医師がやったほうが早い」「医師がやるべきだ」という固定観念の下、事務作業も含めたさまざまな業務が医師に集中しているケースも少なくありませんでした。しかし、労働時間の制約の中で医療の質を維持するためには、医師は診断や治療方針の決定、手術などの「医師にしかできない業務」に集中する必要が生じます。
こうした背景から、医師の業務をクラークに委譲(タスクシフト/シェア)する効果に注目が集まっています。厚生労働省の「勤務環境改善に向けた好事例集」でも、医師事務作業補助者の活用は医師の労働時間短縮に最も効果的な施策のひとつに挙げられており、主に以下の業務において負担軽減が図れると紹介されています。※4

  • 診断書や診療情報提供書等の医療文書の作成代行
  • 電子カルテ等の診療記録の代行入力
  • カンファレンス準備やがん登録や外科手術の症例登録 など

特に、書類作成やオーダー入力といった定型的な業務を切り出すことは、タスクシフトの第一歩として非常に有効です。例えば、医療法人財団荻窪病院の事例では、主に「書類作成業務」「診療支援業務」「記録業務」を医師から医師事務作業補助者へシフトした結果、医師の業務量が減少して診療に当てる時間が増加しました。※4

取組
引用元:厚生労働省. 勤務環境改善に向けた好事例集 ※4

クリニックにおいては、開業当初は電子カルテクラークを配置していなくても、患者数の増加や業務拡大とともに必要性が高まるケースも少なくありません。すぐに導入しなければならないわけではありませんが、将来的に業務効率化を図る上で、電子カルテクラークという存在は有力な選択肢となり得ます。

電子カルテのクラーク運用がもたらす効果

電子カルテのクラーク運用がもたらす効果

電子カルテクラークを配置して医師の業務を分担することにより、さまざまな効果が得られます。ここでは代表的なメリットを3つ紹介します。

診療の質の向上

電子カルテクラークがいることで、医師は本質的な診療業務に専念できるようになります。電子カルテクラークが電子カルテへの入力や紹介状などの文書作成をサポートすることで、医師は患者対応に集中できます。パソコンの画面ばかり見つめるのではなく、患者一人ひとりに向き合う時間が増え、説明やコミュニケーションも充実するため、患者満足度の向上にもつながります。

指示の先取り・前準備

電子カルテクラークは、医師の診療現場で判断や指示を間近で見ながら、電子カルテに入力していきます。その経験を通じて医師の思考パターンを理解し、次の指示を先読みして前準備を積極的に行うようになることが期待できます。例えば、診察の流れから必要な検査や処置を予測してオーダー入力の準備を進める、次の患者のカルテや資料をあらかじめ開いておくといったサポートです。こうした先回り対応は、医師にとって非常に心強いものであり、診療の流れがスムーズになることで業務全体の効率化にも寄与します。

医業収入の増加

電子カルテクラークをはじめとする医師事務作業補助者の配置は、人件費の増加を伴う一方で、業務効率化や加算の取得などによる医業収入の増加も期待できます。
実際に、前述の荻窪病院の事例では、医師事務作業補助者へのタスク・シフティングなどの取り組みにより、紹介患者数・手術件数等の増加や医師事務作業補助体制加算による収入など、医業収入が増加したことが報告されました。※4
クリニックにおいて電子カルテクラークを新たに配置する際は、医師の負担軽減や残業時間の削減といったメリットに加え、医業収入の増加の可能性も加味しながら、人件費の費用対効果を慎重に検討することが大切です。

令和6年度診療報酬改定「ベースアップ評価料」のインパクト

令和6年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを支援するための画期的な仕組みとして「ベースアップ評価料」が新設されました。※5

平成20年度の診療報酬改定で「医師事務作業補助体制加算」が新設された当時は、大学病院や総合病院など規模の大きな病院が主な対象施設でした。病床数の少ないクリニックではまだ算定することができず、クリニックがクラークを導入する際の大きな経済的ハードルとなっていました。その後、令和2年度の診療報酬改定によって対象が拡大され、「有床診療所入院基本料」などの入院料に対する加算も算定可能となりました。※6

さらに、令和6年度の診療報酬改定で新設された「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)・(Ⅱ)」では、外来医療または在宅医療を行う無床診療所も算定対象となりました。重要なのは、この評価料の対象職員に、医師事務作業補助者(クラーク)が含まれている点です。※5

これにより、規模の小さい無床クリニックにおいても、電子カルテのクラーク運用を実現しやすくなったといえます。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)および(Ⅱ)の点数と算定要件は以下の通りです。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、対象職員の給与総額の1.2%相当の賃上げを行うための原資として算定できます。

算定要件

  • 外来医療または在宅医療を実施している保険医療機関であること
  • 対象職員(医師・歯科医師・専ら事務作業を行う者を除く医療従事者)が勤務していること
  • 令和6年度および令和7度において対象職員の賃金改善を実施していること(役員報酬や定期昇給による改善を除く)
  • 当該評価料を、対象職員の賃金改善(ベア、賞与、時間外手当、法定福利費等の増加分)に用いること
  • 対象職員の基本給等を、令和6年度に前年比2.5%以上、令和7年度に前々年比4.5%以上引き上げた場合、対象職員以外の職員の賃金改善も実績に含めることができる
  • 「賃金改善計画書」および「賃金改善実績報告書」を作成し、定期的に地方厚生(支)局長に報告すること

点数

  • 初診時:6点
  • 再診時:2点
  • 訪問診療時:同一建物居住者等以外の場合は28点(同一建物居住者等の場合は7点)

外来・在宅ベースアップ評価料(I)の新設
引用元:厚生労働省保険局医療課. 令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】 ※5

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)

外来医療または在宅医療を実施し、入院医療を実施していない診療所において、評価料(Ⅰ)だけでは賃上げ目標に届かない場合に、その不足分を補うために算定可能です。

算定要件

  • 入院基本料、特定入院料または短期滞在手術等基本料(短期滞在手術等基本料1を除く)を算定していない保険医療機関であること
  • 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)を届け出ている保険医療機関であること
  • 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込みの10倍が、対象職員の給与総額の1.2%未満であること
  • 指定の計算式に基づき、該当する区分のいずれかを届け出ること

点数

初診時最大64点、再診時最大8点まで、8段階の区分で設定されています。

賃上げに向けた評価の新設
引用元:厚生労働省保険局医療課. 令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】 ※5

賃金改善の対象職種に関する補足

ベースアップ評価料の対象職種には、「専ら事務作業を行う者」つまり、一般的な医療事務等は含まれません。ただし、事務作業を行う者のうち「医師事務作業補助者(クラーク)」は、医師の負担軽減に資する医療従事者として明確に対象に含まれているのがポイントです。※7

これにより、クリニックはクラークの雇用維持や待遇改善のための原資を、診療報酬から得ることができるようになりました。これは、電子カルテのクラーク運用を検討するクリニックにとって非常に強力な追い風といえます。

ベースアップ評価料の対象職種
引用元:厚生労働省 保険局医療課. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)専用届出様式作成の手引き【令和7年1月改定版】 ※7

チャンスロス(機会損失)の防止

チャンスロス(機会損失)の防止
電子カルテのクラーク運用によって得られる経済的メリットは、得られる利益だけではありません。「失わずに済む利益」、つまり機会損失をいかに防げるかも重要です。

患者離れの防止

「待ち時間が長い」「医師がカルテばかり見ていて話を聞いてくれない気がする」などの不満は、患者離れの大きな原因です。電子カルテのクラーク運用によって、医師の事務作業の負担が軽減し、診察の待ち時間の短縮やより丁寧な患者対応が実現します。患者満足度が向上することで、患者離れを防止し、クチコミによる集患や再来率(リピート率)の維持も期待できます。

医師の健康維持

クリニック経営の中核を担う先生が、万が一にも過労で倒れてしまえば、休診によってクリニックの収入はゼロになります。電子カルテのクラーク運用によって先生方の負担を軽減することは、先生ご自身の健康を守り、長期的に診療を継続するためのリスクマネジメントでもあります。

ユヤマの電子カルテの特徴

ユヤマの電子カルテ

「使い勝手のいい電子カルテを導入し、電子カルテクラークを配置してカルテの入力業務を徹底的に効率化したい」
「万が一のトラブル時にもスムーズに診療を続けられるよう、サポート体制が充実している電子カルテを導入したい」

クリニックにおいては、開業当初から電子カルテクラークを配置するケースや、開業後しばらくして外来患者数の増加による入力業務の負担を軽減するために新たに配置するケースもあるかもしれません。いずれの場合も、電子カルテクラークの力を十分に発揮するには、電子カルテそのものの使い勝手やサポート体制が重要です。また、クラークだけでなく医師や看護師、事務スタッフ全員が円滑に電子カルテを使いこなせれば、業務効率化の効果は一層高まります。
当社の無床診療所様向け電子カルテ「BrainBoxシリーズ」の使いやすさの特徴と、導入後の運用を強力に支える充実したサポート体制についてご紹介します。

入力効率を徹底追及した「ユヤマ・キーパッド」

クラークが迅速かつ正確に電子カルテに入力するためには、ショートカット機能やテンプレートの活用などが欠かせません。当社独自の「ユヤマ・キーパッド」は、電子カルテの入力効率を徹底的に追求し、シンプルで簡単に操作できるのが特徴です。

  • 紙カルテ2号紙のイメージを踏襲した、必要な情報が一目でわかるレイアウト
  • 必要なときに必要なボタンのみを表示
  • サイズ可変のショートカット機能
  • よく使う入力項目のセットメニュー登録 など

【症状入力画面の例】
ユヤマキーパット
【Plan入力画面の例】
ユヤマキーパット

クリニック様ごとに専任営業を配置

当社では、専用コールセンターによる電話サポートや、全国各地の営業拠点およびアフターサービス拠点による迅速なフォロー体制を整えています。さらに、クリニック様ごとに専任営業を配置し、導入後も同じ担当者が責任を持ってクリニック様に寄り添いながら、日々の運用に伴走いたします。

これらの万全なサポート体制により、万が一、トラブルが発生したときも迅速に解決できるので、安心して電子カルテを運用いただけます。

▶ まずはオンラインデモで、実際の操作感やサポート体制をご体験ください。

電子カルテのクラーク運用はクリニック経営における重要な選択肢のひとつ

本記事では、電子カルテのクラーク運用について、メリットや事例、医師の働き方改革や診療報酬改定にも触れながら解説しました。電子カルテクラークを配置することで、医師の負担軽減や診療の質の向上などさまざまなメリットが得られます。医師の働き方改革が具体的に推進されている今、多くの医療機関がクラークを配置し活用しており、その事例はこれからのクリニック経営においても業務効率化の大きなヒントになるかもしれません。これから開業される先生方や、さらなる業務効率化や働き方改革を図りたい開業医の先生方は、電子カルテクラークという選択肢を、将来の運用プランのひとつとしてぜひ検討してみてください。

参考資料

※1 厚生労働省. 個別事項(その8)働き方改革の推進について(その2).
※2 瀬戸僚馬, 津村宏. (2012) 医療情報学. 32(2):59-63. 春季学術大会論文. 医師が電子カルテ操作に費やす業務時間に関する調査.
※3 厚生労働省. 医師の働き方改革.
※4 厚生労働省. 勤務環境改善に向けた好事例集.
※5 厚生労働省保険局医療課. 令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】.
※6 厚生労働省保険局医療課. 令和2年度診療報酬改定の概要.
※7 厚生労働省 保険局医療課. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)専用届出様式作成の手引き【令和7年1月改定版】.

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