2024.07.16薬剤師 , 海外

オランダの分包センターについて

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世界的に人口の高齢化が進むなか、多くの国が医療や社会保障に関する課題解決に取り組んでいます。国⺠の暮らしをより便利で豊かなものにするためにさまざまな取り組みが行われていますが、その一つが欧米で推進されている調剤の外部委託です。

今回はその一事例として、欧米のなかでも特に調剤の外部委託が普及しているオランダの「分包センター」という仕組みについて紹介したいと思います。

オランダの薬局事情〜⽇本との違い〜

⽇本の九州と同等程度の国土を持つオランダは人口1,776万人の国で、高齢化率がおよそ20%です。高齢化率29.0%で世界トップクラスの超高齢社会である⽇本に比べると低い数値ではありますが、世界的な基準で見ると比較的高く、高齢化が進んでいます。

オランダ国内における薬局の数はおよそ2,000軒であり、人口を薬局数で割ると、1薬局あたり8,880人の計算になります。⽇本の場合は1薬局あたり2,003人の計算になるため、比較すると薬局の数はかなり少ないと言えるでしょう。

こうした背景のもと、⽇本と同様に薬剤師の対物業務の効率化を図るうえで象徴的なのが「分包センター」です。分包センターとは専業薬局のことを指し、自動の錠剤分包機を導入した施設内で複数の薬局から受託した薬剤の分包を一手に担っています。

ヨーロッパにおける分包センターの仕組みは福祉国家といわれるスウェーデンの国営薬局から始まり、オランダ以外でも主に北欧諸国において取り入れられています。

オランダの分包センターで行われていること

オランダには複数の分包センターが存在します。

例えば、ある分包センターで対応している調剤件数は、1⽇あたり数十万包。薬剤師は数名在籍し、鑑査を含む調剤業務の大半はテクニシャンによって行われています。薬剤師は分包クオリティのチェックと指導を担当し、専門性の高い業務に注力できるように業務の最適化と効率化が図られています。

薬局から薬剤の処方のうち錠剤分包を受託し、分包センターでオペレーションをセントラル化し、薬局に返送する仕組みです。なかには患者さんのご自宅へ直接配送するパターンもあります。

分包センターによる処方期間は1週間で、リフィル処方のみを受託しています。分包が必要かどうかは基本的に医師が決めていますが、薬局薬剤師が介入するケースもあります。なお、アメリカと同様に、患者さんに処方される薬は基本的には保険会社によって決められています。保険のリストにない薬品は、患者さん自身が全額負担しなければなりません。

以上のように、分包センターは調剤業務のオペレーションを一カ所に集約することで合理的な仕組みを実現しています。オランダをはじめ、各国の分包センターでは、⽇本のメーカーが製造した調剤機器も多く稼働しています。このような仕組みを支える存在として、⽇本の技術が貢献しているのです。

<編集後記>

  • 分包は⽇本や韓国で多い調剤方法ですが、欧州ではオランダの規模は大きく、高齢化が進む先進国では脚光を浴びつつあるようです。(編集担当:H.I)
  • ⽇本の調剤機器が世界でも多く導入されていることに誇らしさを感じると同時に、調剤の外注化は同じく高齢化の進む国として参考になるところが多そうです。(ライター:N.K)

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タグ : 薬局 オランダ 分包センター
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