2023.04.18調剤機器

日本とどう違う?アメリカの調剤・服薬事情

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日本とどう違う?アメリカの調剤・服薬事情

医療先進国のアメリカは、医療制度や医療を取り巻く環境において日本とは異なる点が多くあります。しかし超高齢化社会の到来を目前に、医療サービスに求められることが少しずつ変化を遂げている日本にとって、他国の事例を知ることは大切でしょう。

そこで本記事では、調剤や服薬における日本とアメリカの違いや、アメリカにおける薬局の役割についてお伝えします。

アメリカにおける調剤・服薬の特徴とは

合理主義国家と言われるアメリカでは、調剤や服薬においても実利を重んじる傾向が見られます。いくつかの特徴をご紹介します。

ボトルにパッケージした処方が主流

日本では薬剤は粉末や顆粒が多く普及しています。一方、欧米では粉末や顆粒の薬剤はあまり一般的ではなく、錠剤やカプセル剤の方が広く親しまれています。

調剤機器の導入によって業務の自動化が進んでいる点は、アメリカも日本も変わりません。しかし日本では散薬を一包化するタイプの機器が流通しているのに対し、アメリカでは錠剤を「バイアル」と呼ばれるプラスチック製のボトルに封入するタイプの機器が主流で、施設向けにブリスターパックで払い出すタイプの機器も導入されています。錠剤の一包化の機器はこれから広まりつつある状況です。

リフィル処方箋の制度

リフィル処方箋とは、医師の診察を経て処方された薬の服用が終わったあと、一定期間内であれば医師の再診察なしで同じ薬を処方してもらえる制度のことです。受診回数が減ることによって医師と患者さんの双方にとって負担軽減につながり、薬剤師が患者さんの服薬状況を管理しやすくなる点でもメリットがあります。

日本でも2022年4月からリフィル処方箋の制度が導入されましたが、アメリカではカリフォルニア州で1951年から長きにわたって行われてきました(現在、州によって制度は異なります)。また、アメリカ以外に、イギリスやフランス、オーストラリア、カナダなどでも制度の導入がされています。

調剤助手「テクニシャン」の存在

欧米では「ファーマシーテクニシャン」と呼ばれる、調剤業の助手を担う職業が存在しています。テクニシャンは薬剤師をサポートする立場として、薬局の調剤業務には欠かせません。

テクニシャンが患者さんに処方薬を渡すには薬剤師の最終確認が必要ですが、患者さんへのヒアリングや薬の在庫管理、自動調剤機器の操作、会計や処方履歴の入力といった事務作業など、多様な業務を幅広く担っています。日本の調剤事務管理士よりも、ある程度の専門性が必要な業務を広範囲にわたり任されている点で大きな違いがあります。

テクニシャンの存在によって、欧米の薬剤師はより専門性の高い業務に注力できるという環境があるのです。

アメリカにおける薬局の役割

アメリカは医療費が高額であることに加えて、低・中所得者層を中心に医療保険への未加入者が多いとされています。また、加入している保険によって受けられる医療サービスが異なるため、購入できる薬の種類や金額、受診できる医師や薬局まで制限が設けられています。合理的な医療システムが構築されている一方で必ずしも平等に医療を受けられるわけではないという点が、アメリカの医療制度の特徴です。

2014年から開始した医療保険制度改革法(通称オバマケア)によって、2023年の医療保険加入者は1,600万人を超えるなどの進歩を見せつつありますが、医療を取り巻く環境は日本とはだいぶ異なります。

これらの前提を踏まえて、アメリカにおける薬局の役割についてお伝えしましょう。

アメリカには約6万件の薬局が存在し、そのうちの半数を数社の大手チェーン薬局が占めていると言われています。前述の通り医療機関を受診するハードルが比較的高いため、基本的な医療サービスを提供する薬局は日本以上に重宝されていると言えそうです。市販薬の購入はもちろん、インフルエンザなどのワクチン接種も薬局で受けることができます。

また近年はオンライン処方のニーズが高まり、2020年にはAmazonがオンラインで処方箋を注文できるサービスを開始するなど、他業界からの参入も活発化しています。Amazonの参入によって日本のような錠剤分包も増えつつあり、技術革新や社会変革が進むにつれて、さまざまな変化が起こっています。

このように日本とアメリカの違いは多くあるものの、アメリカの合理的なシステムや先進的な取り組みは日本にとって参考となる部分もあるでしょう。高齢化社会が進むなかで、他国の事例も参考にしながら最適な医療サービスのあり方を模索することが大切です。

 

<編集後記>

  • 日本から世界へ、世界から日本へ。それぞれの国の調剤の歴史がありますが、今後がよりよくなることに貢献できたらと思っています。(編集担当:M.S)
  • コロナ禍においても日本とアメリカの医療制度の違いが際立っていましたが、それぞれの国家の価値観や社会構造に鑑みて何が最適なのか、改めて考えていく必要があると感じました。(ライター:N.K)

 

 

※この記事は情報提供を目的としており、株式会社ユヤマ・株式会社湯山製作所の企業としての見解を示すものではございません。記事に関するご意見・ご感想はお気軽にお寄せください。

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タグ : アメリカ 薬局 調剤
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