【電子カルテ導入事例:耳鼻咽喉科編】1日最大120人の診療と1週間に最大10件の手術を支える電子カルテ活用術。7台の端末連携とスタッフの要約スキル育成が成功の鍵

耳鼻咽喉科は1日の診療数が多く、花粉症シーズンや感染症の流行期にはさらに患者数が急増します。診療の質を維持しながら、1人あたりの診察時間を短縮して診療効率を最適化するためには、電子カルテの活用が欠かせません。
本記事では、電子カルテを導入して多忙な耳鼻咽喉科診療の業務効率化を実現された、いなば耳鼻咽喉科クリニック様(茨城県取手市)の事例をご紹介します。
いなば耳鼻咽喉科クリニック様は、耳鼻咽喉科の一般診療から、花粉症、めまい、睡眠時無呼吸症候群(CPAP処方)、喉や鼻(副鼻腔や鼻中隔などを含む)の日帰り手術まで、幅広く対応されています。2020年の開業当初から、当社の無床診療所様向けクラウド型電子カルテ「BrainBox Cloud」を導入いただき、現在は「BrainBox CloudⅡ」にアップデートされています。院長の稲葉雄一郎様に、耳鼻咽喉科における電子カルテの具体的な活用方法について伺いました。
【動線と配置】1日最大120人の診療と1週間に最大10件の手術を効率よく進めるため、7台の端末をフル活用
ユヤマ:「耳鼻咽喉科は他の診療科と比べて診療単価が低いこともあり、診察効率の向上がクリニック経営における課題のひとつです。その解決策として、開業されたときに当社がシステムの運用設計と機器構成(動線)をセットで構築させていただきました。現在の電子カルテの配置はいかがですか?」
稲葉先生:「院内には、受付に3台、処置室に1台、2つある診察室に各1台ずつ、さらに診察室間の共有スペースに1台の計7台の端末を配置し、問診の内容や検査データ、オーダー内容をリアルタイムで共有しています。共有スペースの電子カルテは、ユヤマさんの担当の方に『こんな風にしたいんだけど実現できるかな』と相談し、ご提案いただいて今から半年ほど前に増設しました」

ユヤマ:「ミラーリング機能の活用により、入力を補助するスタッフが医師の隣にいなくても、複数の患者様の進行状況を把握して入力できます。離れた場所からも入力補助を可能にすることで、動線を最適化した形です。ちなみに、2つある診察室は、先生が移動して交互に使われているのでしょうか?」
稲葉先生:「いえ、勉強会で『1つの部屋を究極まで効率化したほうが早い』と学んだのもあり、基本的にはメインの診察室を8割方使用しています。もう1つの診察室は、歩行が遅い高齢の患者さんを案内したり、処置で倒れてしまった患者さんを休ませている時間に外来を止めないための予備診察室として柔軟に活用しています」
【スタッフ育成】問診の「2行要約」でSOAPの“S”を極める
ユヤマ:「電子カルテを入力する際に工夫されていることはありますか?」
稲葉先生:「電子カルテ入力においては、SOAPの問診(S)部分をいかに効率化するかが重要と考えています。他社のAI問診も導入しましたが、便利である一方で、診察には直接関連性のない情報まで拾ってしまって問診内容の要約が冗長になってしまうことがあります。そこをうまく省略するのは、まだ人間のほうが上手ですね」
ユヤマ:「具体的には、どのように要約されているのでしょうか」
稲葉先生:「例えば、患者さんが『先週から喉が痛かったんだけど、あそこの病院に行って薬をもらったのに良くならなくて、近所の人に聞いたら別の病院もおすすめされたけどやっぱりダメで、ネットで調べたらここが出てきたんです。何とか休みが取れたからやっと今日来れました』みたいに長く話されたときも、要点を考えれば『1週間前から喉が痛い。他院で治らない』といった短い文章で済みます。スタッフには、病歴を簡潔に2行でまとめる情報要約のレクチャーを徹底的に行いました」
ユヤマ:「スタッフの方たちの要約スキルを育成することに注力されたんですね。電子カルテの入力をされているスタッフの方は、何名いらっしゃいますか?」
稲葉先生:「現在は、スタッフ全員が入力作業を行っています。医師は私1人で、看護師が1名、医療事務が常勤・パート合わせて3.5名、処置室の助手が4名います。ただ、いきなりシステムへの入力を任せたわけではありませんでした。開業から3~4年の間は、小さな受付票にスタッフが手書きで要約した問診内容のメモを、私がタイピングで入力するというフェーズがありました。診療がスムーズに回るようになってから、スタッフのみんなにも直接タイピングしてもらうようにしました」
ユヤマ:「スタッフの方たちが情報を省略・凝縮して要約するスキルを完全に身につけてから、電子カルテに直接入力するフローへ移行するというのは、画期的なプロセスですね。電子カルテ導入直後の他のクリニック様においても応用しやすい方法です」
【電子カルテの機能活用】診療効率の向上と患者様からの信頼を両立する活用法
ユヤマ:「電子カルテのセット展開をはじめ、先生ご自身で使いやすくカスタマイズされていますが、具体的なカスタマイズと運用について教えてください」
稲葉先生:「ワンクリックでコスト、コメント、シェーマ、点滴などをすべて出せるよう、自分好みに細かくセット展開を組んでいます。当初は、『中耳炎のセット』のように病名でセットを構築していましたが、それだとセット登録が五十音順に並んでしまうんですよね。実際の診察では、診断から治療までの思考を巡らす際に解剖学的部位に沿って考えることが多いため、今は耳・鼻・喉などの解剖の部位ごとに階層を分けています。そうしたらしっくり来るようになり、柔軟に運用できています」
ユヤマ:「耳鼻咽喉科は診療部位を右・左で分けるため、セット数が多くなりやすいですよね。当社のシステムは、別画面に遷移せずにカルテ画面内で診療行為と病名を一括登録することができるので、セット登録も簡単にできます」


ユヤマ:「耳鼻咽喉科には欠かせない、シェーマ描画の使いやすさはいかがでしょうか?」
稲葉先生:「診察室には何枚もモニターを置きたくなかったのもあり、大型モニターを備えた一体型PC『Surface Studio』を採用しています。推奨機ではありませんが、ユヤマさんのシステムとの相性が良く、描きやすいですね」
ユヤマ:「広いシェーマ領域に直接ペンで書き込めるため、鼓膜や副鼻腔、咽頭などの複雑な描画も非常にスムーズな点が強みです。他にもよく活用されている機能はありますか?」
稲葉先生:「カルテの下部にある『備考欄』をけっこう活用しています。2つの診察室の間にある共有スペースに増設した端末の前に、スタッフが1人常駐していて、SOAPのSを入力してもらっているのですが、備考欄には他院からの紹介の経緯や既往歴、患者さんの特徴などをドラッグ&ドロップしてもらっています。診察のときに出た雑談や患者さんのパーソナルな情報なども備考欄にメモしてあるので、久々に来院されたときに声をかけると『先生、なんで覚えてるの?』と喜ばれます」
ユヤマ:「診察はもちろん、患者様からの信頼獲得という点でも備考欄を活用されているのですね」

ユヤマ:「今後、当社のシステムに期待されている機能はありますか?」
稲葉先生:「システムの機能そのものは、現状で大変満足しています。強いて言うなら、忙しくて気が滅入るような診療の中で、ふっと肩の力が抜けるような画面上の遊び心が欲しいかもしれません。おしゃれなオフィスのような空気感を味わいながら診療ができたら楽しそうです。例えば、文字色や背景色のカスタマイズとか、お気に入りの音楽が10秒流れるみたいな癒し機能にも期待したいです」
スタッフの地道な育成とクリニックの運用フローの最適化が重要
本記事では、いなば耳鼻咽喉科クリニック様の導入事例をご紹介しました。
1日最大120人の丁寧な診療を、診察室や処置室、共有スペースに配置した7台の電子カルテが支えています。複数の電子カルテをただ導入するだけでなく、スタッフの要約スキルの育成や、クリニックの運用フローに合わせたセット展開のカスタマイズなどが、電子カルテ導入による業務効率化を成功に導いたといえます。これからクリニックを開業する先生方や電子カルテの導入を検討中の先生方は、クリニック経営や業務効率化の課題を洗い出し、理想の診療スタイルを追求しながら、オンラインデモやメーカー担当者へのご相談に臨まれることをおすすめします。
Clinic Profile
いなば耳鼻咽喉科クリニック
URL:https://inaba-ent.clinic/
所在地:茨城県取手市中央町2-25取手iセンター3階
院長:稲葉 雄一郎 様










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