【2024年度改定対応】クリニックのかかりつけ医機能を評価する「地域包括診療加算」とは?算定要件や施設基準を徹底解説

令和6年度(2024年度)の診療報酬改定では、「生活習慣病管理料(Ⅱ)」の新設に伴い、「特定疾患療養管理料」の対象疾患から高血圧症・脂質異常症・糖尿病の3疾患が除外されました。これは、特に内科系クリニックにおいて経営戦略の見直しを迫られる重要な転換点だったといえます。こうした状況下で、改めてその重要性が再認識されているのが、かかりつけ医機能をもつクリニック(診療所)を評価する「地域包括診療加算」です。
本記事では、令和6年度の診療報酬改定で注目された地域包括診療加算について、概要や点数、施設基準、患者のメリットやクリニックの経営における意義などを解説します。
「地域包括診療加算」とは? かかりつけ医機能の評価
地域包括診療加算は、複数の慢性疾患を持つ患者に対して継続的・包括的に診療を提供する「かかりつけ医」としての機能を評価するものです。一定の施設基準を満たした医療機関において、対象患者に継続的かつ包括的な指導や診療を行った場合に、再診料に対して所定の点数を加算することができます。
この加算の本質は、単に疾患を診るだけでなく、服薬管理、健康相談、介護保険への対応、在宅医療への架け橋など、患者の生活背景まで含めた「包括的な診療(かかりつけ医機能)」を評価することにあります。
関連記事:2025年4月施行!「かかりつけ医機能報告制度」完全解説|クリニックに求められる役割と対応
令和6年度診療報酬改定による点数の引き上げ
令和6年度の診療報酬改定では、生活習慣病の増加などに対応するための効果的・効率的な疾病管理および重症化予防を推進する目的で、以下の見直しが行われました。※1
- 生活習慣病管理料(Ⅱ)の新設
- 生活習慣病管理料(Ⅰ)の要件および評価の見直し
- 特定疾患療養管理料の見直し(高血圧症・脂質異常症・糖尿病の3疾患を除外)
- 特定疾患処方管理加算の見直し
- 地域包括診療料等の見直し
- 慢性腎臓病の透析予防指導管理の評価の新設
なお、生活習慣病管理料(Ⅰ)および(Ⅱ)に関連する加算には、外来データ提出加算があります。
関連記事:外来データ提出加算とは?算定要件から申請方法、電子カルテ活用法まで徹底解説
今回ご紹介する地域包括診療加算は、平成26年度(2014年度)に新設されてから、改定のたびに要件の見直しや評価の拡充が行われてきました。近年では、令和4年度(2022年度)に対象疾患の追加や要件の強化が行われたほか、令和6年度にはかかりつけ医機能の評価充実という観点から点数が引き上げられました。在宅医療の実績の有無によって「加算1」と「加算2」に区分されており、いずれも3点ずつ引き上げられています。※1
これは、国が「かかりつけ医機能」を持つ医療機関をより手厚く評価しようとする方向性を明確に示したものといえます。
| 区分 | 改定前 | 令和6年改定後 | 主な要件の差異 |
|---|---|---|---|
| 地域包括診療加算1 | 25点 | 28点 | 在宅医療(往診・訪問診療)の実績が必要 |
| 地域包括診療加算2 | 18点 | 21点 | 在宅医療の実績は不要(24時間連絡体制等は必要) |
| 認知症地域包括診療加算1 | 35点 | 38点 | 在宅医療(往診・訪問診療)の実績が必要 |
| 認知症地域包括診療加算2 | 28点 | 31点 | 在宅医療の実績は不要(24時間連絡体制等は必要) |
算定の対象となる患者
本加算の算定対象となるのは、以下の6つの対象疾患のうち、2つ以上を有する患者です。※2
- 高血圧症
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 慢性心不全
- 慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る)
- 認知症
なお、それぞれ確定診断がついている必要があり、「疑い」は対象外となります。また、患者に対して療養上必要な指導および診療を行うにあたっては、説明を行い、同意を得る必要があります。
施設基準と届出のポイント(令和6年度改定対応版)
地域包括診療加算を算定するためには、厚生労働省が定める厳格な施設基準を満たし、地方厚生局へ届け出る必要があります。外来中心のクリニックでも算定しやすい地域包括診療加算2、および在宅医療の実績が求められる地域包括診療加算1について、施設基準を整理します。
地域包括診療加算2の施設基準
地域包括診療加算2は、在宅医療の実績についての要件がなく、往診や訪問診療を行っていない外来中心のクリニックでも比較的算定を目指しやすい区分です。ただし、以下の要件をすべて満たす必要があります。※1、3
| 分野 | 具体的な基準内容 |
|---|---|
| (1)規模 |
|
| (2)医師の配置 |
|
| (3)(4)院内・Web掲示 |
【掲示事項】
|
| (5)薬局連携 |
|
| (6)禁煙 |
|
| (7)介護連携 |
|
| (9)その他 |
|
| (10)担当医の実績や相談体制 |
|
| (12)意思決定支援 |
|
(表内の番号は厚生労働省の通知に準じる)
地域包括診療加算1の施設基準
地域包括診療加算1を算定するには、加算2の全要件に加え、在宅医療(往診・訪問診療)に関する実績として以下の要件も満たす必要があります。
| 分野 | 具体的な基準内容 |
|---|---|
| (11)在宅医療の実績 | 直近1年間に、当該医療機関での継続的な外来診療を経て、往診料、在宅患者訪問診療料等を算定した患者数が一定数以上であること(在宅療養支援診療所は10人以上、それ以外は3人以上) |
| (8)24時間の連絡・往診体制 | 当該患者に対し、24時間対応可能な連絡先を提供し、連絡を受けた場合には往診や外来受診の指示など速やかに対応できる体制を有すること(在宅療養支援診療所以外の場合は、連携する他医療機関による対応も可) |
(表内の番号は厚生労働省の通知に準じる)
令和6年度診療報酬改定での重要な変更点
今回の改定では、地域包括ケアシステムの深化に伴い、以下の点が強化されました。
Webサイトへの掲示義務
従来は院内掲示のみが義務付けられていましたが、自ら管理するホームページを有しない場合を除き、原則として自院のWebサイト等への掲示が求められるようになりました。
リフィル処方箋・長期処方への対応
患者の状態に応じて、28日以上の長期投薬やリフィル処方箋の交付が可能であることを周知する必要があります。これは、医療の効率化と患者の利便性向上を目的としています。
介護連携の強化
ケアマネジャー等からの相談に適切に対応できる体制の整備がより明確に求められています。
地域包括診療加算の届出・運用における注意点
地域包括診療加算を算定する際には、いくつか留意すべきポイントがあります。
定期研修の更新
施設基準にある通り、研修を修了した担当医の配置が求められていますが、2年ごとに講習受講と修了記録の提出が必要です。期限までに研修記録を提出しない場合は届出が取消となり、再届出が必要になります。
算定できるタイミング
地域包括診療加算は、外来再診時のみ算定可能です。初診や電話再診、往診料・訪問診療料では加算できません。対象患者であっても、算定できるタイミングが限られる点に注意が必要です。
患者の同意取得
対象患者には、事前に主治医として包括的診療を行うことについて説明し、同意を得ておく必要があります。口頭でも差し支えありませんが、同意内容を記した書面にサインをもらい、カルテに保管しておくと安心です。
患者のメリットとクリニックの経営的意義
地域包括診療加算の算定は、クリニックの経営安定化だけでなく、患者にとっても大きなメリットをもたらします。
患者視点でのメリット

ポリファーマシー(多剤併用)の解消
クリニックの担当医がかかりつけ医として、患者の服薬状況を一元管理することで、重複投薬や飲み合わせの悪い薬の処方を防ぎ、副作用のリスクを避けることができます。残薬の解消による医療費負担の軽減も期待できます。
ワンストップの健康相談
高血圧や糖尿病といった個別の疾患だけでなく、予防接種や健康診断の結果、介護保険の利用など、患者は健康に関するあらゆる相談を「かかりつけ医」に行うことができます。また、患者の健康状態や病歴を継続的に把握しているかかりつけ医にまず相談することで、必要に応じて適切な医療機関を紹介したり、重複検査を防いだりすることができ、結果的に医療費の削減にもつながります。
安心感の醸成
自身の健康状態や病歴に詳しいかかりつけ医の存在は、患者にとって小さなことでも相談しやすく、安心感につながります。特に、地域包括診療加算1の在宅医療(往診・訪問診療)に関する実績や、連携薬局を含む24時間の連絡体制が確保されることで、夜間や休日の急変時に対する不安が軽減されます。
クリニック経営における意義

特定疾患療養管理料からの移行先
令和6年度の診療報酬改定により、高血圧・脂質異常症・糖尿病の患者は「特定疾患療養管理料」の対象外となり、新たに「生活習慣病管理料(Ⅱ)」が新設されました。※1
しかし、これら3疾患以外に、慢性心不全や慢性腎臓病などを合併している複雑な病態の患者については、包括的な管理を行う「地域包括診療加算」での算定が適しているケースが多くあります。
機能強化加算(80点)の前提条件
初診時に算定できる「機能強化加算(80点)」は、地域包括診療加算の届出を行っていることが施設基準のひとつとなっています。つまり、地域包括診療加算を届け出ることは、再診料への加算だけでなく初診料の単価アップにも直結します。※2
収益の安定化
地域包括診療加算は包括的な管理料であるため、検査や処置の実施に左右されにくい安定した収益基盤を構築できます。
ユヤマの電子カルテの特徴
「地域包括診療加算の算定も含め、レセプト業務を効率化したい」
「電子カルテを通して、今後の診療報酬改定の動向に合わせてサポートしてほしい」
これから開業される先生方や、システムのリプレイスを控えておられる先生方にとっても、地域包括診療加算の評価見直しや算定要件の変更は注目すべきトピックであり、加算の取得や届出について検討しておられるかもしれません。
特に、地域包括診療加算の算定においては、「対象患者の抽出」「療養計画書の作成」「重複投薬のチェック」など、事務作業や管理業務の負担増が大きな課題となります。また、2年ごとに行われる診療報酬改定に関する情報収集も、安定的なクリニック経営においては欠かせません。
当社の無床診療所様向け電子カルテ「BrainBoxシリーズ」は、これらの業務を効率化できるさまざまな機能を搭載しています。
地域包括診療加算の対象患者の管理とフォロー
当社のBrainBoxシリーズでは、電子カルテ上で患者ごとの疾患情報や同意取得状況を記録・共有できます。そのため、地域包括診療加算の対象となる患者リストの抽出や管理が容易です。例えば、複数疾患をもつ患者にフラグを立てておけば、再診時に加算算定を見逃しません。また、リフィル処方箋の交付履歴やケアマネジャーとの連絡記録なども電子カルテ上で一元管理することで、チーム医療における効率的かつ迅速な情報共有が実現します。
電子カルテ情報共有サービスの活用
地域包括診療加算の算定要件のひとつに、患者または家族の求めに応じて、疾患名や治療計画などの文書を交付し説明することが挙げられています。このとき、電子カルテ情報共有サービスが提供するサービスのひとつである「患者サマリー」に入力し、診療録にその記録および患者の同意を得た旨を残している場合は、文書を交付しているものとみなすことができます。※1
当社のBrainBoxシリーズは、電子カルテ情報共有サービスの前提である「オンライン資格確認システム」との連携が可能です。また、地域包括診療加算の算定において求められる指導内容の記録や文書作成もスムーズに行うことができます。
関連記事:電子カルテ情報共有サービス完全ガイド:義務化の真相・補助金活用・経過措置までを網羅的に解説
診療報酬改定に関するさまざまな情報提供
「BrainBoxシリーズ」では、電子カルテ上の「お知らせ」を活用して、診療報酬改定に関する情報提供を行っております。さらに、紙媒体での通知やFAX配信でのフォローも、先生方や事務スタッフの皆様にご好評いただいています。診療報酬改定のポイントや、電子カルテ上の変更点・操作手順を解説した資料・動画も提供しており、クリニック様が診療報酬改定に迷わず対応できるよう丁寧にサポートいたします。
▶ まずはオンラインデモで、実際の操作感やサポート体制をご体験ください。
地域包括診療加算はクリニックの信頼性向上にも役立つ
本記事では、複数の慢性疾患を抱える患者への対応として重要性を増す「地域包括診療加算」について、概要、点数、施設基準に加え、患者のメリットとクリニックの経営的意義などを解説しました。
本加算を算定するには、2年ごとの研修受講に加え、24時間対応薬局や介護関連事業者等との連携、Webサイトでの情報公開、患者の同意の取得などさまざまなハードルがあります。しかし、これらは診療の質の向上や地域連携の強化につながるだけでなく、患者に対する医療サービスの質を保証するものでもあり、クリニックの信頼性向上に直結します。これから開業する先生方や、まだ届出を行っていない先生方は、クリニック経営の安定化や地域医療における役割の明確化のために、地域包括診療加算の算定を検討されることをおすすめします。
参考資料
※1 厚生労働省保険局医療課. 令和6年度診療報酬改定の概要【外来】
※2 厚生労働省保険局医療課. 令和4年度診療報酬改定の概要外来Ⅱ.
※3 厚生労働省. 保医発0305第5号「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」.
株式会社ユヤマ
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