標準型電子カルテとメーカーが提供する電子カルテの違いとは
現代の日本では、質の高い医療を受けながら生活できる社会を実現するため、医療機関の間でシームレスかつ正確な情報連携の施策が進んでいます。
その一環として、これまで紙媒体で行われていたやり取りを、インターネット上でのやり取りに転換する動きがみられます。
ICTを活用したネットワークを構築することで、情報連携を効果的に進め、地域における質の高い医療の提供を支援しています。
これらを実現するために導入される政府規格の標準型とメーカー提供のものが含まれています。
本記事では、標準型電子カルテとメーカー提供の電子カルテの違いについて解説します。
※本記事は令和6年11月までの、政府の決定事項や発表内容を基に作成しています。
標準型電子カルテとは?
標準型電子カルテは、政府が定めた規格に基づいて開発された電子カルテシステムです。
電子カルテの導入は医療DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する施策の一環であり、以下の目的を実現するために推進されています。
- 国民のさらなる健康増進
- 切れ目なく質の高い医療等の効率的な提供
- 医療機関等の業務効率化
- システム人材等の有効活用、
- 医療情報の二次利用の環境整備
これらの目的を達成するためには、サーバーセキュリティを確保しつつ、医療情報を保険・医療・介護に活用できる体制とデータ形式が求められます。
標準型電子カルテについては、2023年に案件定義に関する調査研究が行われ、2024年中に開発に着手するスケジュールで決議されました。
遅くとも2030年には、ほぼすべての医療機関で電子カルテの導入を目指しています。
また、医療DXには診療報酬改定DXや医療DXの実施も含まれており、医療業界にはこれらへの対応が求められています。
標準型電子カルテの目的
政府が推進している標準型電子カルテは、下記2点を目的としています。
全国医療情報プラットフォームにつながり、情報の共有が可能
医療機関ごとの情報共有にタイムラグが発生すると、その分だけデータ確認や診療・治療が遅延し、質の高い医療を提供しにくくなります。
切れ目なく質の高い医療を効率的に提供するためには、各医療機関が医療DXのシステム群、いわゆる全国医療情報プラットフォームにつながり、有効活用することが必要です。
情報共有と情報収集を効率良く行うために、政府は標準型電子カルテの導入を推進しています。
民間サービス(システム)との組み合わせが可能な電子カルテ
医療機関は電子カルテの診療情報だけでなく、診療報酬の算出や処方箋データなど、さまざまな情報を使用しています。
レセコンを使用することで診療報酬を受け取り、処方箋データからはいつ・どのような薬を処方したのかを確認できます。
これらを実施するためには専用のシステムが必要ですが、各システムが独立しているとさまざまなエラーが発生します。
ヒューマンエラーやヌケモレが発生すると診療報酬を得られなかったり、処方ミスによる問題が発生したりする可能性があります。
これらのミスやエラーを防止するため、標準型電子カルテはさまざまな民間サービス(システム)と組み合わせが可能であることが求められます。
標準型電子カルテ導入前後で見る診療所での業務の流れ
こちらでは、標準型電子カルテを導入前後でどのように業務が変わるのかをご紹介します。
受付から処方までの流れ
業務 | 導入前 | 導入後 |
受付 | 患者さんは免許証や保険証などで医療機関に本人確認を行います。 | 患者さんはマイナンバーカードリーダーにマイナンバーカードを差し込むだけで、本人確認ができるようになります。 |
問診 | 医師は患者さんの問診情報を紙カルテに記載します。 | 医師は患者さんの問診情報を、3文書6情報を基に電子カルテへ記載します。 |
診察 | 医師は患者さんから問診した情報を紙カルテに記載し、処方箋も紙媒体に記載します。 | 医師は患者さんから問診した情報を電子カルテへ記載し、直近の処方情報などを参考に処方箋をオーダーします。 |
会計 | 紙カルテの情報をレセコンに記載し、医療機関は患者さんから診察料を受け取ります。 | 電子カルテと連携しているため別途入力は不要です。医療機関は患者さんから診察料を受け取ります。 |
院外薬局 | 薬局は紙媒体で診療所から指示があった薬を患者さんに処方します。 | 診療所が電子データとして処方を指示した薬を患者さんに渡します。 |
他医療機関への紹介
業務 | 導入前 | 導入後 |
診療所から病院 | 診療情報を紙カルテに記載するのと同時に、病院に対して「診療情報提供書」を記載します。病院は紙媒体の資料を受け取り、それらの情報を参照して診療・治療を行います。 | 診療情報を標準型電子カルテに記載するのと同時に、病院に対して「診療情報提供書」を記載します。病院はデータをシームレスに取得し、それらの情報を参照して診療・治療を行います。 |
病院から診療所 | 患者さんが退院したあとに診療所を受診する際は、病院での診療内容が書かれた退院サマリーを診療情報提供書とともに紙媒体で作成します。 | 患者さんが退院したあとに診療所を受診する際は、病院での診療内容が書かれた退院サマリーを診療情報提供書とともにデータ上で参照できます。 |
参考ページ:厚生労働省ホームページ「第1回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ資料」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001178649.pdf)
参考ページ:厚生労働省ホームページ「標準型電子カルテベンダー向け説明会資料」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001183270.pdf)
標準型電子カルテに搭載するべき機能
J-STAGEによると、標準型電子カルテには下記の機能が必要とされています。
- 情報の記録、編集、保持、管理、検索、出力、加工、通知、転送
- 医療者の診療上の思考の流れと整合性を持ったマン・マシンインターフェイス
- ソフトウェア部品の流通路安全な利用手法
- 安全性が確認され、使用実績があるソフトウェア部品
- 医療用語・コードの標準マスター
- 異なるシステム間での相互性確保や新旧システム間での円滑なデータ移行
これらの機能の策定や課題抽出の際には、政府関係者だけでなく、電子カルテメーカーやベンダーも同席して協議を行いました。
令和5年5月に厚生労働省が発表した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」では、改定の趣旨や概要などが記載されています。
このガイドラインは、安全管理の実効性を高め、医療機関への認知拡大を目的として見直しが行われました。
ガイドラインは以下の4つの編に分かれています。
- 概説編
- 経営管理編
- 企画管理編
- システム運用編
それぞれの編でリスクや課題と解決方法が記載されています。
医療機関は患者さんの診療情報や、医療DXが進行すると処方データなど、重要な情報を保有します。
これらのデータが外部に漏出すると、社会的な信用の失墜や経済的な損失、事業承継へのダメージが発生します。
このようなリスクに備えるため、政府は特に情報の安全性に関するガイドラインを設けています。
ユヤマの電子カルテ
当社ではオンプレミス型電子カルテの「BrainBox V4」と、クラウド型電子カルテの「BrainBox Cloud」をご用意しています。
下記に、それぞれの電子カルテの特徴をご紹介します。
BrainBox V4
BrainBox V4はオンプレミス型電子カルテで、以下の特徴があります。
- AIによるオーダー支援「AIチェック」
- 医薬品データベース「MDbank」に加え、「アラカルトBank」の情報も参照可能
- 見た目の圧倒的なシンプルさ
- カンタン操作を実現した代名詞「ユヤマ・キーパッド」
- 初めての方でも安心の手厚いサポート
通常、診療受付から会計完了までは、受付→問診→診察→(調剤→)会計の順で進行し、それぞれで入力作業が発生します。
電子カルテの場合、カルテ記載に並行して調剤や会計、処方指示が可能となります。
紙カルテはベテランスタッフにとって安心感がありますが、業務効率に課題が残ります。
電子カルテの運用はデータの一元化、入力ミスの軽減、機能強化により業務効率の改善が実現しやすくなります。
BrainBoxではレセコンから電子カルテにシステムを移行し、予約システムや自動精算機と連携して改善を実現した例もあります。
また、患者さんの待ち時間を短縮することで顧客満足度を向上させることができます。
さらにBrainBox V4では、AIを用いた業務改善が可能となります。
AIがカルテ、会計、レセプトの内容を解析し、違和感があった場合は医師に改案を提案します。
提案に対する評価も可能であり、評価結果をAIが学習することで次回の診療に活かすことができます。
詳しくは当社サービスページをご覧ください:BrainBox V4
(https://www.yuyama.co.jp/product/products/brainboxV4.html#modal01)
BrainBox Cloud
BrainBox Cloudはクラウド型電子カルテであり、どこでもリアルタイムで最新情報を参照できます。
サブサーバーの標準装備により、高セキュリティなクラウド環境を実現し、安心・安全なシステムを提供しています。
BrainBox Cloudの特徴
- 医療行為を熟知したAI機能によるクラウドのインサイト・サポート
- 安心・高セキュリティな環境を実現
- オンプレミス型と変わらない操作性を実現
- ドクター好みのカスタマイズ可能なインターフェイス
- 文書作成支援機能や簡単貼り付け機能
AIが搭載されており、電子カルテから得られる数値データを分析し、提案や予測を行うことができます。
また、キーパッド・画面配色といったインターフェイスをドクターの好みに合わせてカスタマイズ可能です。
文書作成支援機能や簡単貼り付け機能も搭載されているため、業務効率の改善が期待できます。
導入前にはオンラインデモも用意しているため、一度試してから導入を決めていただけます。
詳しくは当社サービスページをご覧ください:BrainBox Cloud
(https://www.yuyama.co.jp/product/products/karte_cloud.html)
おわりに
本記事では、標準型電子カルテとメーカーが提供している電子カルテの違いについて解説しました。
標準型電子カルテとは、政府が定めた標準規格に準拠したクラウド型電子カルテを指します。
標準型電子カルテは国民のさらなる健康増進や切れ目なく質の高い医療の効率的な提供、医療機関の業務効率化、システム人材の有効活用、医療情報の二次利用の環境整備などを目的としています。
2023年に案件定義に関する調査研究を行い、2024年中に開発に着手、遅くとも2030年にはほぼすべての医療機関で導入予定です。
安全性の確保や医療機関の理解を得るために、ガイドラインも用意されています。
電子カルテを導入する際は、標準型・メーカー品を比較して、自院に合ったものを選びましょう。
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