2023.11.17電子カルテ

クリニック用電子カルテの選び方についてご紹介

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クリニックの開業予定がある方の中には、電子カルテの導入を検討しているという方も多いのではないでしょうか?また、既に稼働中のクリニックに電子カルテを導入すべきか迷われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

クリニックに合った電子カルテを取り入れるには選び方にもいくつかポイントがあるのです。

本記事では、そんなクリニック用電子カルテの選び方について、導入検討時の注意点も併せてご紹介していきます。

 

 

電子カルテの種類について

電子カルテの種類として、大きく2つの種類に分けることができます。

「電子カルテと医事会計システム(レセコン/レセプトコンピュータ)とが一緒になっているもの」、「電子カルテと医事会計システムが別々になっているもの」に分けられます。

前者のタイプは「連携」や「データ共有」などという域を超えて電子カルテ機能とレセコン機能がシームレスに統合された「一体型」と呼ばれるものです。どの端末でも全ての業務が行えるので、例えばスタッフが不在となる午後の休診時間帯に急患患者さんが飛び込んできた場合、院長は診察室の端末1台で患者受付から診察入力、会計(領収書や処方箋発行)まで完結させることが可能です。また、万が一の障害発生時も、異なるベンダーのシステムを連携させた場合のような「障害の切り分け」が不要でワンストップで素早くサポートを受けられるなど安心材料も多く、クリニック向け電子カルテの主流となっています。

後者は現在使用中のレセコンに電子カルテ機能部分のみ付け足し導入する場合や、日医標準レセプト(ORCA)の導入を前提として、これと相互接続させて使用する為の電子カルテ機能部分のみからなるシステムです。

 

電子カルテのメリット

こちらでは、電子カルテを導入することにより患者さん、医師、経営者が得られるメリットをそれぞれご紹介します。

 

患者さんのメリット

電子カルテを使用しているクリニックに来院した患者さんは、下記のようなメリットを得ることができます。

 

会計待ち時間の短縮

紙カルテとレセコンからなる従来的な運用シーンでは「医師が書き終えたカルテが窓口に運ばれてくる」→「医事会計担当スタッフがカルテ記載内容や患者の来院情報に基づいて解釈・判断しながら算定すべき事項を逐次レセコンに入力する」というフローですが、電子カルテでは診察入力が終了した患者さんの算定はボタン一つで瞬時に完了します。受診を終えて診察室を出た患者さんが廊下を歩いて窓口に戻ってきたら「領収書や処方箋がもう既に出来上がっていた!」となり、診察終了後の患者さんの会計待ち時間は実質的に「ゼロ」になります。

 

インフォームドコンセント

生活習慣病の治療に代表される慢性期型の医療現場では、医師による医学的アプローチと患者さん自身の日々の努力が車の両輪のように機能し、ゴールを目指します。電子カルテでは「情報を蓄積し再利用する」というコンピュータの最も得意とする仕事のひとつがインフォームドコンセントツールという実装機能として具現化しており、例えばバイタルサインや血液検査結果データなどを時系列で一覧表示(表・グラフ)し、印刷することができます。患者さんが自ら理解し、納得し、心決めをして日常生活の中で取り組んでいる成果が一目瞭然となり、大いに励みとなるでしょう。

 

 

医師のメリット

日々多くの患者さんの診察に従事する医師は、電子カルテを使用することで下記のようなメリットを得ることができます。電子カルテは診療の質の向上に寄与します。

 

診療支援機能

電子カルテには様々な診療支援機能が装備されています。適応傷病名の漏れや誤りを検知してふさわしい候補を提案したり相互作用や入力ミスによる常用量逸脱をアナウンスする処方チェック機能をはじめ、最近では搭載AIによるサジェスト機能も普及しつつあります。

 

過去情報の検索性向上

紙カルテのページをめくりながら記載内容を探すのと比較して、電子カルテでは蓄積された情報の検索性が飛躍的に高まります。必要な情報に素早くアクセスし、より正確な判断を下すことができるようになります。

 

 

経営者のメリット

クリニックの院長は現場医師として患者の診察に従事しながら同時に医療機関の経営者としての役割も担っています。電子カルテを使用することで、経営者としての側面からは下記のようなメリットを得ることができます。

 

作業効率改善

クリニックでは診察に従事する医師や医療事務スタッフ、看護師はじめコメディカルスタッフは多くの作業を行っています。

勤務時間のなかには、患者さんのデータを探す時間やデータを入力する時間なども含まれています。

紙カルテであれば、カルテ棚まで移動し、必要なカルテを探し、元の場所まで移動してから閲覧使用する(そして使い終わったらカルテ棚へ戻しに行く)という手順を踏まねばなりませんが、電子カルテ端末があればその場で即座に閲覧することができます。また、紙カルテであれば院内の「どこか」で「誰か」が使用中は他の全ての者がこれを閲覧使用できないという状態が発生しますが、電子カルテであれば同一患者のカルテを同時に複数の端末で(=複数の者が)閲覧することができます。

このように、医師をはじめとして院内スタッフ全員の生産性が飛躍的に向上し、より低コストでより質の高い医療を提供することが可能となります。

また、紙カルテと比べて、電子カルテは入力補助機能などが搭載されているため、患者さんに関する情報の入力を簡素化することができます。

更に、電子カルテは様々な周辺機器やシステムと連携することができ、入力作業を大幅に減らし、時間短縮のみならず入力ミスなどに起因する患者取り違えなどの事故発生リスクをなくすことができます。

このように、医師やスタッフの作業効率を改善することができるようになるだけではなく、患者さんへのサービスを改善することができるようになります。

 

ペーパレス化の推進

電子カルテを使用することで、クリニック内のペーパレス化を推進することができます。

カルテを電子化することによって少なくとも今後の新たな紙カルテ購入費用はゼロにすることができます。また、紙カルテ保管スペースがこれ以上肥大化することがなくなります。

ただし、「電子カルテ導入=完全ペーパレス化」ではないという点にくれぐれも注意が必要です。院内で扱われる情報や帳票の種類によっては「紙運用」ならではの合理性、利便性、安全性が担保されているものもあります。自院のスタイル(診療フロー、スタッフや患者さんの動線など)に合わせて「電子運用と紙運用の最適な組合せ」を目指すのが正解であり、電子カルテ導入を機に全ての紙媒体運用を廃止しようとするのは非現実的です。

また、「最適な組合せを目指」して段階的に電子運用へと移行させていくという発想も大切です。

このようにして電子カルテ導入により「自院にふさわしいペーパレス化」を行うことが可能となります。

 

2段階選定で失敗をなくす

カルテを「書く」のは医師の専権事項ですが、カルテを「読む」のは医師のみではなく、その内容に従い業務を行う院内スタッフ全員です。従って、電子カルテの入力操作者である医師にとって最も使いやすい(又は自らのスタイルと相性の良い)ものを選定すべきなのは言うまでもないことではあるのですが、併せて院内各部門としても使いやすいもの、総じて院内全体として最もふさわしいものを選定するようにしなければなりません。

クリニックでは医師が診察を行っている診察室以外にも受付・会計などの窓口業務があり、採血室や点滴室や処置室での業務があり、その他レントゲン室やリハビリ室、院内薬局、カウンセリング室での業務があり、それらが医師の指示に従い整然と同時進行することによって診療が成り立っています。

医師である自らにとって最良の電子カルテを選定した筈であっても、そのシステムの仕様・実装機能の有無・操作性の良し悪しが原因となって例えば「受付・会計などの窓口業務が却って煩雑となり、保険算定およびその他事務処理のミスの増加や患者クレームが発生した」り、「リハビリ室の動線が崩壊し業務の遅滞、情報管理の漏れ・誤りが発生しスタッフの残業時間が増加した」り、「処置室・採血室・点滴室での業務に過大な負担がかかり誤実施や患者取り違えなどの事故発生リスクが生じた」りしてしまうとするならば、その選定は「誤り」であり、その投資は「失敗」です。

そのような失敗をしないための手順としておすすめなのが「2段階選定」です。

 

・「第1段階選定」

事務スタッフが専ら扱うレセコンとは異なり電子カルテは医師である自らがその仕事の道具として使用するものです。インターネット広告や他者の評論のみに頼らず、必ずデモを交えたメーカー商談を行い、自分で操作しながら質疑応答を重ねて確認しましょう。

ポイントは「可能な限り数多くのシステムに触れる」こと、選定の基準は「論外なものを除外する」ことです。多忙な中で時間を割くのは大変ですが、選定の精度を高めるためにも分母は大きいほど良いと言えます。数多くのシステムに触れることで「目が肥える」、「自分が本当にやりたかった事がクリアになる」など、次の段階の選定をより成功裏に実施するための準備にもなります。また、「論外なものを除外」するというのは換言すれば「候補をあまり絞り込み過ぎない」ということです。自らにとっての良し悪しの評価はもちろんしっかりとランク付けしつつも、第2段階に向けて最低でも3社は残しましょう。

 

・「第2段階選定」

絞り込んだ数社のシステムについて院内各部門のスタッフも出席してデモを交えたメーカー商談を行います。スタッフは全員出席が望ましいですが、シフトの都合などにより厳しい場合でも各部門の代表者1名ずつは必ず出席します。

院長は各部門に対してあらかじめ指示を出して以下のような確認事項の準備をさせます。

○解決すべき課題であると現在考えている事柄

→それらのソリューションたり得るかについて具体的に吟味します。

○システム導入によって業務手順が大幅に変わったり出来なくなると致命的に困る事柄

→機能の有無、設定変更の範囲、運用による代案を確認し、メーカー担当者の対応力や

提案力もテストします。

○その他の希望事項

→実現可否の先入観にとらわれない「ざっくばらん」なものほど好ましいです。期待して

いなかった思わぬ収穫が得られる場合があります。また、同様にメーカー担当者の

対応力や提案力のテストにもなります。

 

以上のように院内各部門との質疑応答を候補メーカーの各社について行ったのち、院長として「自院にとって最もふさわしい」システムを最終決定します。

スタッフにとって「システム選定のプロセスに関与」した経験自体が導入準備期間や本稼働当初の不慣れな時期の予習となり、「自分事」として積極的に向き合うモチベーションとなって円滑なシステム導入に追い風を吹かせてくれるでしょう。

 

【クリニック用電子カルテ】選び方のポイント

では実際に自院ではどのような電子カルテを導入すれば良いのでしょうか?

選び方のポイントとしては「機能性」「操作性」「価格」「サポート面」の4つが挙げられます。

性能が高くともクリニックの実情に適したものでなければ導入の意味がありません。

電子カルテの価格帯も高い程良いというわけではなく、運用し始めた時の操作のしやすさ・電子カルテの機能が運用現場に適しているかをきちんとチェックしたうえで選ぶようにしましょう。

また見落としがちなのが「サポート面」ですが、手厚いものでなければ導入したとしても運用がうまくいかない可能性が高くなるので注意が必要です。

 

 

電子カルテ導入検討時の注意点

電子カルテ導入検討時の注意点をいくつかご紹介します。

 

自院の診療スタイルに合ったものであるか

自院の診療スタイルに合ったものであるかを確認する必要があります。

患者の来院受付に始まり、診察や検査などを経て窓口会計へと至る患者の動線、スタッフの動線に悪影響を及ぼしてしまうのか、或いは今以上に合理的でスムーズなものへと改善できるのか、各社システムごとに搭載機能や設定変更の範囲は千差万別ですので、しっかりと確認しましょう。

 

使いやすいか・入力操作はしやすいか

診察時は患者さんと向き合わなければならないため、「入力操作がしやすいか」という点は非常に重要なポイントとなります。

キーボード入力が一般的ですが、タッチペンでの操作が可能なものもあります。

できる限り工数が少ないものを選ぶことで、入力時間を短縮させることにつながります。

また「画面が見やすい」「レスポンスが速い」などの項目も確認しておくと、電子カルテの使いやすさに関して総合的に評価することができます。

メーカーによるデモンストレーションを受け、必ずその場で実際に使用感を確かめるようにしましょう。

 

会計事務の実施方法を確認

電子カルテとレセコン(レセプトコンピュータ)が一緒になっているものを選ぶという方法もありますが、医事会計システムが既にあり、使用を継続したいという場合、そのシステムと連携させることができるかを必ず確認しておかねばなりません。連携可能なものが限定されているため、注意が必要です。

 

 

おわりに

本記事では、クリニック用電子カルテの選び方について、導入検討時の注意点も併せてご紹介しました。

電子カルテを導入することで患者さん、医師、経営者など、さまざまな立場の人々がメリットを得られます。

クリニックに合った電子カルテの選び方のポイントとして、「機能性」「操作性」「価格」「サポート面」の4つの面に着目します。

また導入を検討する際には、診療スタイルに合ったものか・操作がしやすいか・会計事務の確認、この3つのポイントに注意しながら自院に合った電子カルテを選ぶようにしてください。

 

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