2023.09.19調剤機器

超高齢社会における薬剤師の社会的価値とは?
第1回(全3回)

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人口に対する65歳以上の高齢者の割合が21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれます。内閣府が公表した「令和5年版高齢社会白書」によると、日本の現在の65歳以上の人口割合は29.0%を占めており、超高齢社会の状態にあるといえます。少子化によって今後ますます超高齢社会の傾向は強まり、2070年には2.6人に1人が65歳以上になると予測されているほどです。

本記事では、このような社会の変化に対して、薬剤師はどのような立ち位置で社会に関わっていくべきなのかを考えていきたいと思います。

日本における超高齢社会の進展と薬剤師を取り巻く環境

超高齢社会が進展するにつれて、医療のあり方も大きな変化を遂げていくでしょう。たとえば高齢者が増えると薬物療法や在宅医療のニーズがどんどん高まり、医療費の増大が見込まれます。また、働き手の減少によって医療従事者が不足し、国民一人ひとりに医療が十分に行き届かないことも懸念されます。特に、医師の過重労働リスクや偏在問題はますます顕在化してくる可能性が高いと言えます。

一方で、厚生労働省の薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会の資料によると、将来的に薬剤師は需要に対する供給過多の傾向が強まると予測されています。2045年には、最大12万6,000人の供給過多が起こる可能性が示されているのです。

超高齢化社会を救うことが薬剤師の社会的価値へ

前述の通り、社会的な医療ニーズが急速に高まり、人材不足によるリソースの逼迫も懸念されるなかで、薬剤師については将来的に供給過多が予測されている状況です。この要因の一つとして、薬剤師が持つ職能のポテンシャルを正しく社会に発信できておらず、活躍の機会を狭めてしまっていることが挙げられます。つまり、薬剤師の社会的価値を高めることが需要を伸ばし、供給過多の回避につながると言えるでしょう。

薬剤師の社会的価値を高めるには、超高齢社会へのさらなる貢献が求められます。超高齢社会においては、薬物治療を必要とする患者さんが増えることは明らかです。このような状況に対して、調剤だけにとどまらず、医療や社会福祉において業務領域を広げ、薬剤師の持つ薬学の知識や薬理・製剤などのスキルを最大限発揮していくことが重要なのではないでしょうか。

具体的には、近年、患者さんの治療決定の際に臨床で取り入れられつつあるSDM(Shared Decision Making)において、薬剤師が担える役割は少なくないと考えられます。SDMとは、患者と医療提供者が協働し、双方から治療に向き合う関係構築やコミュニケーションのことです。薬剤師は薬学的な判断や評価から患者さん一人ひとりに合った治療法が選択できるように、良質な情報提供や提案を積極的に行える体制をつくっていく必要があるでしょう。こうした貢献の積み重ねが、薬剤師の社会的価値を高め、薬物治療のプロフェッショナルとしてのポジション確立につながっていくはずです。

まとめ

現在も薬剤師のコア業務を対物から対人へとシフトさせていく取り組みは推進されていますが、今後はますます超高齢社会への貢献という視点から、薬剤師の持つ職能を最大化できる業務の充実を図っていくことが大切です。

薬剤師の供給過多への対策として、薬学部の入学定員の規制などについても議論がされていますが、そもそもの供給量の調整だけでなく、従来の業務をどのように変化させていくかも重要な課題となるでしょう。

<編集後記>

  • なぜ対物から対人業務へのシフトが声高に叫ばれてきたのか?需給調査から読み解けば、国民のためでもあり、医療費の抑制のためでもあり、なにより薬剤師さん自身のためでもあると私は思います(学術部:K.M)
  • 超高齢社会では薬剤師の持つ専門性が不可欠になってくるはずなので、その活躍の場をどのように作り上げるかが大きな課題になると言えそうです。(ライター:N.K)

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タグ : 薬剤師 超高齢社会
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