2023.10.17調剤機器

超高齢社会における薬剤師の社会的価値とは?
第2回(全3回)

Pocket

前回のコラムでは、将来的に供給過多が予測されている薬剤師の社会的価値を向上させるには、医療や社会福祉において業務範囲を広げ、超高齢社会への貢献を高めていく動きが必要と提言しました。この社会的な貢献は、「臨床」と「経済」の2つの領域に大別できると考えます。

ポリファーマシーを改善

2023年現在、65歳以上の人口割合が29.0%を占める超高齢社会の日本では、今後ますます薬物治療を受ける患者が増加していくことが予測されます。この背景を踏まえ、より注視すべきリスクとして挙げられるものの一つが、ポリファーマシーの発生です。

もちろん現在も、医療機関や薬局におけるポリファーマシーへの注意喚起と防止に対する取り組みは行われています。しかし一般的に見ると患者側の危機意識はそれほど浸透しておらず、慢性疾患を抱える高齢者が増えるほどリスクは大きくなっていくでしょう。

こうした課題に対して、薬剤師の介入により適切な服薬指導や処方提案が現在以上に実施されると、ポリファーマシーの改善が期待できます。薬剤師がポリファーマシーのリスクがある患者に対して働きかけるのはもちろん、患者自身にも服薬情報を専門家に管理してもらうことの重要性や価値を理解してもらうことが大切です。

慢性疾患患者の臨床アウトカムを改善

慢性疾患で長期にわたり薬物治療を受けている患者の場合、明らかな症状の改善が見られるケースは少なく、悪化まで至らずとも変化がないことも多くあります。たとえば高血圧や糖尿病の患者は起こり得る合併症を防ぐため、健康的な生活習慣を維持し、血圧や血糖値を良好な状態に保つようにコントロールする必要がありますが、患者自身のコントロールがうまく機能せずに検査値の改善がなかなか見られないといったケースはよく見受けられます。

患者自身がある程度自立してセルフコントロールできるようにするには、専門的知識を持った医療従事者の手助けが有効であることが示唆されています。この場面では、まさに薬剤師の職能を最大限活用できると言えるでしょう。実際に前京大SPH薬局情報グループの岡田浩先生(現和歌山医大教授)が主導してきた研究プロジェクト「COMPASS project」では、糖尿病患者と高血圧患者の治療に薬剤師が介入することによって患者の臨床検査値などが改善することが明らかになっています*。したがって、慢性疾患患者の治療において薬剤師が介入することには大きな価値があるのです。

*https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/142/3/142_21-00174-2/_pdf

まとめ

冒頭でもお伝えした通り、少子化によって超高齢社会が続いていくことが予測される日本では、医療体制強化の重要性がますます高まることは明らかです。一方で働き手の減少によって医師の人手不足や過重労働リスク、偏在問題なども浮き彫りになるなかで、2024年4月からは医師や看護師の働き方の見直しが厳格に行われることとなり、医療提供体制の質をどのように担保していくかという課題は複雑さを帯びていくでしょう。

このような観点から、薬剤師が従来の業務領域を超えてより深く薬物治療に介入することができれば、独自の価値を発揮しやすく、社会的な評価にもつながっていくと考えられます。

<編集後記>

  • 薬剤師による薬物治療コンサルテーションは臨床・経済両面から期待されるところ。いまや世界の潮流ですね。(学術部:K.M)
  • 改めて薬剤師の専門性を活かした社会へのアプローチには、大きなポテンシャルが秘められていると感じます。(ライター:N.K)

☆記事についてのご意見・ご感想はこちらからお願いします☆

 

※この記事は情報提供を目的としており、株式会社ユヤマ・株式会社湯山製作所の企業としての見解を示すものではございません。記事に関するご意見・ご感想はお気軽にお寄せください。

UNICOM-GX標準搭載 薬学的ケア支援ツール FiSMo

タグ : 薬剤師 超高齢社会
Pocket

The following two tabs change content below.