2023.02.14調剤機器

待合室の空間づくりで患者さんの満足度向上へ

Pocket

薬局の顔とも言える「待合室」。患者さんを出迎え、待機してもらう空間として、どのような配慮がなされるべきでしょうか。

本記事では、薬局利用における満足度調査データや社会情勢などを踏まえて、待合室をよりよい空間にするためのアイデアをお伝えします。

薬局の待合室をめぐる現状とは

 

不満を持たれやすい待ち時間の長さ

「診療と新薬Vol.57」に掲載された日本調剤株式会社による全国薬局患者満足度調査をまとめた論文によると、実際の薬局と理想の薬局との差異を比較したデータにおいて、もっとも差異が大きかったのが「待ち時間」という結果になっています。

理想の薬局に当てはまるものとして「待ち時間が短い」を挙げた患者さんは60%を超えている一方、実際の薬局に当てはまるものとして「待ち時間が短い」を挙げた患者さんは30%に満たないという結果が出ています。このデータから、待ち時間が満足度の妨げになっていることが明らかです。

待ち時間自体の短縮に努めることはもちろん大切ですが、調剤薬局の場合、患者さん一人ひとりの応対に一定の時間を要するため、大幅な時間短縮の実現は考えにくいでしょう。

現実的な改善方法としては、いかに患者さんの体感時間を少なくし、待ち時間を快適に過ごしてもらえるかが重要になります。

地域連携薬局の認定要件として求められる設備

また、2021年8月から認定制度が始まった「地域連携薬局」の認定要件も考慮する必要があるでしょう。地域連携薬局は何らかの疾病の治療を受けている患者さんに対して、薬局が他の医療機関との連携を図りながら、地域包括ケアシステムの中核を担うことが期待されています。

この認定要件には構造設備の項目があり、主に「患者さんのプライベートに配慮し、安心して相談ができる空間を用意すること」「高齢の方や障害のある方が不便を感じないバリアフリー設備を整えること」が求められています。

地域連携薬局の認定要件は、まさに今後の薬局のあるべき姿や果たすべき機能を具体化していると言えるため、重要な取り組みとしてとらえる必要があります。

新型コロナウイルス感染防止対策

さらに長期化する新型コロナウイルス感染症の流行に対しても、引き続き感染防止対策が必須でしょう。一般的にもコロナ対策は常態化したと言ってよい状況になりつつありますが、地域医療を担う薬局としては、改めて対策を徹底したいところです。

薬局には疾患を抱える患者さんが多く訪れます。そのような方であっても安心して来局し、どんな状況でも継続的に薬が手に入り、適切な服薬指導や健康サポートを受けられるように、空間づくりを工夫する必要があるでしょう。

待合室をよりよくするための3つのポイント

これらの現状を踏まえて、待合室をよりよい空間にするためのポイントをお伝えします。

プライバシーに配慮した快適な空間をつくる

待合室の清掃を徹底して清潔に保つことはもちろん、待機用の椅子などのレイアウト自体にも工夫をするとよいでしょう。

まずは患者さん同士の距離を十分に確保できるスペースをつくり、なるべく視線が合わないようにする配慮が欠かせません。照明を明るくするなどして、患者さんが居心地よく待つことができる空間づくりが大切です。

プライバシー対策としては、カウンターにパーテーションを設置して患者さん同士が近くならないように区切る、椅子を設置して落ち着いて相談できるような広い空間を確保するといった工夫が挙げられます。また、バリアフリー対策としては、手すりやスロープを設置する、入口に段差がない状態にするなどの対応が望ましいと言えます。

このような設備の整備とともに、薬剤師の応対も患者さんの負担や不安を軽減できるように気を配る必要があります。

待ち時間も退屈しない工夫を凝らす

薬局にとって、患者さんが何度も足を運んでくれるかどうかはとても重要です。いつ行っても同じような風景では退屈を感じやすいため、自由に閲覧できる雑誌を置いたり、手に取りやすいOTC商品を置いたりすることで、新鮮さを演出することをおすすめします。

また、手作りのPOPを飾ったり、健康へのアドバイスを記載したオリジナルのリーフレットや冊子を設置したりできると、さらに独自性を出すことができ、リピーターの創出やファン化を促すことにもつながるでしょう。その他、血圧計などの健康管理器具を設置し、待ち時間に自由に利用してもらうなども有効です。

このような工夫を凝らすことで患者さんの健康意識の醸成や地域医療への貢献にもつながり、薬剤師とのコミュニケーションのきっかけにもなるでしょう。

薬局全体の感染防止対策を見直す

消毒アイテムの常備やアクリル製の飛沫防止対策カウンターの設置などの基本的な対策はもちろん、感染者用待合室を増設している薬局や、車から出ることなく処方薬を受け取れるドライブスルー対応型の薬局も増えつつあります。

待合室の増設やドライブスルー対応は感染症対策やプライバシー配慮にも役立ちますが、大規模な改修と予算が必要になるため、よく検討することが大切です。

その他、処方箋受付を行うスマートフォンアプリを導入してDX化を図る薬局も増えています。待合室で長い時間、患者さんに待機してもらう必要がないため、患者さん同士の接触を減らせるとともに薬剤師の負担軽減にもつながり、メリットは大きいと言えます。

 まとめ

今回は患者さんの満足度向上の観点から、主に待合室のハード面における工夫を紹介しましたが、同時に接遇の面についても、定期的に改善すべき点はないか見直すことが大切です。設備と接遇の両面において、患者さんにとって居心地のよい空間づくりをめざしていきましょう。

 

<編集後記>

  • 実際に薬局を訪問すると、待合室にさまざまな工夫があることに気付かされます。調剤機器だけでなく多種多様なご提案ができるように情報を収集する必要があると感じました。(編集担当:K.S)
  • 待合室はそれぞれの薬局らしさを象徴する空間であり、改善を重ねることで患者さんのリピーターを増やすことにもつながると感じました。(ライター:N.K)

 

 

※この記事は情報提供を目的としており、株式会社ユヤマ・株式会社湯山製作所の企業としての見解を示すものではございません。記事に関するご意見・ご感想はお気軽にお寄せください。

投薬順番表示システム Y's Vision/小型処方箋受付機 YS-PS-600C

タグ : 待合室 薬局
Pocket

The following two tabs change content below.