• ツイート

ピックアップニュースPickup News

2017年6月号

  • 多剤投与是正で415億円減‐薬局の薬学的疑義照会が有効‐日本老年薬学会学術大会‐

    ■薬局からの疑義照会が外来患者の多剤投与(ポリファーマシー)に及ぼす影響を調査した結果が第1回日本老年薬学会学術大会で、福岡大学病院薬剤部の神村英利氏から報告された。薬局からの疑義照会で残薬や過量投与などのポリファーマシーを是正したところ、約153万円の薬剤費削減につながった。これを2015年度の処方箋枚数8億枚として全国的な推定値を試算すると、約415億円に上ることが分かった。調査結果を受け、神村氏は、薬局において残薬の確認と薬学的判断に基づく疑義照会がポリファーマシー対策になっているとの見方を示した。

     

    ■調査は、昨年9月1日から11月30日までの3カ月間、福岡大病院の近隣4薬局で薬学的な疑義照会を行った事例が外来患者のポリファーマシーにどのような影響を与えるかどうか解析したもの。その結果、患者の年齢は中央値で65歳、変更前の処方薬剤数の中央値は5剤、応需処方箋は2万9487枚だった。そのうち、薬学的に疑義のあった処方箋が670枚、薬学的疑義照会率は2.3%となった。

     

    ■処方変更となった薬学的疑義の根拠を見ると、主に残薬の日数調整が最も多く、次いで過量投与や同種同効薬の重複、禁忌薬、副作用歴、アレルギー歴などの薬学的判断となった。ただ、神村氏は、「ポリファーマシーによる薬学的な問題が発生した患者は、高齢者でない多剤併用処方の例でも起こり得る」とした。高齢者で残薬となることが多かった薬効群は、下剤が最も多く、次いで他の消化器用薬、抗糖尿病薬、スタチンの順で、重複処方されることが多かったのはビタミン類、酸分泌抑制薬などとなった。

     

    ■これら調査結果から、薬局における薬学的疑義照会が薬剤費に及ぼす影響を算出したところ、薬学的判断によって約91万円、日数調整によって約140万円の削減効果が得られたことが明らかになった。そのうち、疑義照会によりポリファーマシーが是正された事例の薬剤費を見た結果、約153万円の削減につながったことが明らかになった。さらに15年度の処方箋枚数を8億枚として、全国的なポリファーマシーの是正による薬剤費削減効果を試算したところ、約415億円に上ることが考えられた。これは、国民医療費の0.6%に当たるという。

     

    ■神村氏は、残薬のある高齢患者では加齢に伴い処方薬剤数が増える傾向が見られたとし、「多剤併用処方の高齢者には服薬確認を注意深く行う必要がある」とした上で、「薬局では残薬の確認と薬学的判断に基づく疑義照会がポリファーマシー対策になっている」と指摘。「検査値付き処方箋が一層普及すると、薬学的疑義照会によるポリファーマシーの是正例が増えていくのではないか」と述べた。

  • 投与時のCSTD使用明記へ‐曝露対策合同指針の改訂で‐日本がん薬剤学会学術大会‐

    ■来年夏ごろに予定されている「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」の改訂では、調製時だけでなく投与時についても、抗癌剤の漏出や気化流出を防ぐ閉鎖式薬物移送システム(CSTD)の必要性が明記される見通しだ。蓄積されたエビデンスを反映し、近年、米国薬局方に「使用しなければならない」と記載されたという。日本がん薬剤学会学術大会のシンポジウムで、同GLの評価委員を務める中山季昭氏(埼玉県立小児医療センター薬剤部)が解説した。

     

    ■同GLは、日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会が共同で2015年に発刊したもの。抗癌剤投与時のCSTD使用は特に看護師からのニーズが強い。現行GLには推奨の記載はされていないが、改訂GLには「おそらく必要性が明記される」とした。その背景について、中山氏は「当時とは比べものにならないくらいエビデンスが蓄積され、米国薬局方にも記載されるようになった。『調製時にはCSTDを使用すべき、投与時には使用しなければならない』と、調製時よりも強い推奨で記載されている」と説明した。

     

    ■ 一方、調製時の曝露対策について中山氏は、国際がん薬剤学会(ISOPP)がCSTDとは認定していない、フィルター式閉鎖式接続器具を「エビデンス次第では使用可能、と修正される可能性がある」と指摘した。
    現行GLはCSTDの使用を推奨している。フィルター式閉鎖式接続器具は抗癌剤の気化流出を完全に防ぐことはできないが、流出する量は「海外の基準に照らし合わせるとほぼ目標レベル」と述べ、安全性に大きな問題があるわけではないとした。

     

    ■一方、中西弘和氏(同志社女子大学薬学部)は、経済産業省の研究費を活用し、近畿大学や医療機器メーカーなどと共同で開発した安全キャビネットの概要を紹介した。大阪ガスケミカルが確立した、強い吸着力を持つ抗癌剤フィルターを排気側と循環側に使用することで、30%外排気型ながら、安全キャビネット内や排気の抗癌剤の流出を低く抑えられる。輸液バッグをオゾン水で洗浄する装置も備えているという。
    中西氏は「安全キャビネットは100%外排気型が推奨されるが、病院の中央配管に排気したところ、強風の影響を受けて院内の図書館の上から抗癌剤が検出された事例があったと聞いた。独立配管が理想だが、費用が高くなり、構造的に不可能な場合もある。30%排気型なら、中央配管を使っても抗癌剤が他に漏れにくいことが分かってきた」と開発の背景を解説した。 濱宏仁氏(神戸市立医療センター西市民病院薬剤部)は、バイアル表面が抗癌剤で汚染されていることを意識するよう呼びかけた。

     

    ■汚染の実態を示した濱氏らの報告を受けて、バイアルをフィルムや樹脂で被覆する曝露防止対策品が登場しているが、未対策品も残っている。対策品も、完全に抗癌剤が除去されているわけではないという。濱氏は、洗浄用機械がない病院でも実践できる方法として、次亜塩素酸を薄めた水でバイアルを約5分間放置後、掛け流し方式で流水洗浄する手段を紹介した。

     

    ■「バイアル洗浄は有効な手段の一つだが、その手段をとれないのであれば、少なくとも抗癌剤のバイアルを取り扱う時には手袋を使ってほしい。ただ、その場合、手袋をつけたままあちこち触ってはいけない。正しい手袋の使い方をしなければ意味がない」などと注意を促した。