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2018年9月号

  • 災害時調剤支援車で協定‐ 車両資産の遊休化など防止

    ■大阪府薬剤師会と調剤機器メーカーのユヤマは、両者の間で災害支援活動への協力に関する協定を締結した。震災等の災害発生時にユヤマが所有する業務車両(3tトラック)を府薬が被災地で行う災害時調剤支援車として無償で貸し出す。車両はユヤマが災害支援仕様に整備したもので、平時は全国の各営業所での技術研修用の機器等を運搬するために活用。災害時にのみ車両を府薬に貸与し、その際、「災害時調剤支援車」「大阪府薬剤師会」の看板を車両に取り付けて使用する。

     

    ■最近、災害支援車両としての「モバイルファーマシー(MP)」導入が各市県レベルで進んでいるが、平時の活用が課題となっている。今回、ユヤマとの協業により車両を活用することで車両資産の遊休化の防止のほか、日常的な活用により良好な車両状態を維持できるといったメリットがあるという。

     

    ■ベースとなる車両は日野デュトロ(3t)。庫内スペースは全長約4m60cm、全幅約2m、全高2m10cm。車両内には医薬品を設置するスチールラックが5台、OAデスク、作業台、電子天秤2台、小型分包機、作業台、スクリーンパーテーションなどを装備。エアコンを完備するほか、ポータブルトイレのスペースも設置している。

     

    ■府薬では、過去の災害時医療支援の経験を踏まえ、可能な限り避難所内で他の医療職と連携していくことを想定。車両自体のコンセプトとして、車内調剤も可能な設備としながら原則として車外での調剤を考慮し、積み込んだ薬品棚や分包機などを降ろすためのリフターを車両後部ドアに設置。調剤機器などを運び出した後は、スタッフの睡眠スペースとして活用する考え。

     

    ■同日、府薬会館で藤垣哲彦大阪府薬会長とユヤマの湯山裕之会長が協定書に調印。その後の会見で藤垣氏は、昨今、全国的に導入されているMPの優位性について理解を示しながらも、「平時の活用を考慮した場合、実際に調剤することができない。そこをどのように改良すべきかということで、湯山会長の社会貢献への思いと、府薬の災害時への取り組みの思いが一致した」と今回の協定締結の経緯について説明した。

     

    ■湯山氏も「普段から地元大阪の薬剤師会のお手伝いができないかと考えていた。こうしたチャンスをいただき感謝している」とコメント。その上で「災害の現場に行けば、課題や要望は出てくる。今回をスタートとして、少しでも災害時の支援に役立つモノ作りを継続していきたい」と述べた。

     

    ■災害時調剤支援に活用する車両は、平時にはユヤマの大阪本社には常設せず、全国の営業所スタッフの技術研修のために各地を転々と移動している。発災時には、そこから一番早い方法で被災地に赴くため「中身と車両が別々に現場にいく可能性もある」という。 現時点では大阪府薬としての車両運用マニュアルは作成していないが、藤垣氏は「締結の中身には合意している。災害時にはいろいろなケースが起こることもある。必要備品についても府薬内で引き続き協議していく」とした。さらに、車両を活用した防災訓練の実施も検討していく考え。

  • 急性腎障害、薬局が発症予防を‐3剤併用時の疑義照会呼びかけ【滋賀医科大学病院】

    ■滋賀医科大学病院糖尿病内分泌・腎臓内科と薬剤部は7月から、滋賀県の慢性腎臓病医療連携推進事業の一環として、急性腎障害(AKI)の発症を防止するキャンペーンを開始した。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、利尿薬、ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の3剤併用によってAKIの発症リスクが高まると警告。薬局薬剤師に対して、3剤併用を目にした時には必要に応じて疑義照会するよう呼びかけている。複数医療機関の処方を一元的に管理するかかりつけ薬局だからこそ、3剤併用をチェックできると期待する。腎機能に応じた投与量の調整だけでなく、さらに一歩踏み込んだ役割を薬局薬剤師に求めている。

     

    ■滋賀県、滋賀県医師会、滋賀県病院薬剤師会、滋賀県薬剤師会、滋賀腎・透析研究会の後援を取得。滋賀県の事業資金をもとに啓発ポスターとパンフレットを作成した。ポスターには「STOP!AKI」と大きく記載。薬局の調剤室内などに貼ってもらって注意喚起する。パンフレットでは3剤併用のリスクと疑義照会のポイントを解説。それぞれ講演会で配布したり、滋賀県薬の会報に添付して各薬局に届けたりし、薬局薬剤師の行動を促している。


    ■血液は腎臓の糸球体でろ過される。ACE阻害薬やARBは、輸出細動脈を拡張させて糸球体から流れ出る血液の量を増やし、利尿薬は血しょう量を減少させる。これら2剤に加え、輸入細動脈を収縮させて糸球体に流れ込む血液の量を低下させるNSAIDsが処方されると、3剤の“トリプルパンチ”によって腎臓への血流が大幅に低下。AKIの発症リスクが高まる。

     

    ■典型例は、血圧が高く、心疾患を抱えているためにACE阻害薬またはARB、利尿薬を服用している患者が膝や腰などの痛みを訴え、NSAIDsが処方されるケース。多くの場合AKI発症に至らないが、年齢が高く、慢性腎不全(CKD)の患者ではリスクが高まるため注意が必要だ。特に併用後30日以内の発生率が高い。

     

    ■AKIを発症しても回復することが多いものの、腎機能は悪化しやすくなる。発症を防ぐことが重要だ。根拠に乏しい過剰な医療の見直しを呼びかける米国発祥のキャンペーン「チュージング・ワイズリー」でも、米国腎臓学会は「全てのCKD、心不全、高血圧患者へのNSAIDsは避けるべき」と提言している。

     

    ■同院糖尿病内分泌・腎臓内科准教授の荒木信一氏は「薬によってAKIが引き起こされた症例を実際に経験している。ACE阻害薬やARB、利尿薬を内科医が処方し、整形外科医がNSAIDsを処方する場合、その情報はかかりつけ薬局に集まる。複数医療機関の処方の組み合わせをチェックし、必要に応じて疑義照会してほしい」と強調。

     

    ■患者には「尿量減少や尿の異常、浮腫、倦怠感、疲労感、食欲不振などの症状があれば医師や薬剤師に伝えるよう説明してもらいたい」と話す。同院教授・薬剤部長の寺田智祐氏は「疑義照会時には理由を説明した上で、必要に応じて『NSAIDsをアセトアミノフェンに変更できませんか』『常用ではなく頓服に変更できませんか』などと整形外科医に提案してほしい。特に高齢や腎機能が悪い患者で3剤併用を見つけたら注意するようセンスを磨いてもらいたい」と語る。

     

    ■滋賀県には、この領域で医師と薬剤師が連携してきた土壌がある。両者連携のもと2012年から広域で「CKDシール」の活用を開始した。腎機能が低下した患者のお薬手帳の表紙にシールを貼付することで、腎機能に応じた投与量や薬剤選択を薬局薬剤師がチェックするよう促すもの。約6年が経過し薬局薬剤師の意識が高まってきたことから、「次に何か新しいことができないかと考え、今回の取り組みに踏み切った」(寺田氏)という。