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2023年3月号

  • 【調査】自局に無菌設備わずか3割‐対応薬局の少なさ課題に(日本保険薬局協会)

    情報提供元:薬事日報社

     認定薬局のうち自局に無菌製剤処理設備を有しているのはわずか約3割で、無菌製剤処理設備を持つ薬局で無菌調剤の実績があるのは半数以下に限られることが、日本保険薬局協会(NPhA)が実施した調査で明らかになった。連携に関する実績では外来の利用者に関する医療機関等への情報共有実績は年間約245回と比較的多かったが、入院時・退院時での情報共有実績は一桁にとどまるなど課題が浮かび上がった。

     調査は、業務実態を把握するため、NPhA正会員企業に属する認定薬局17社262薬局を対象に昨年10〜11月に行ったもの。

     直近1年間における在宅に関する実績を見ると、在宅訪問管理指導を当該薬局で受けている患者数は地域連携薬局が73人、専門医療機関連携薬局が22人だった。無菌調剤が必要な在宅患者数は地域連携薬局で2.90人、専門医療機関連携薬局で0.56人と少なく、小児の在宅患者数は地域連携薬局で0.43人、専門医療機関連携薬局で0.50人とさらに少なかった。

     無菌調剤に対応できる薬局が不足しており、無菌調剤の実績がある薬局は15.3%、小児在宅患者では16.8%にとどまった。無菌製剤処理設備のある71薬局で無菌調剤の実績ありと回答したのは47.9%、小児在宅患者の実績がある薬局は38.0%となっている。

     直近1年間の連携に関する実績を見ると、外来利用者に関する医療機関等への情報共有実績は地域連携薬局が239回、専門医療機関連携薬局は488回、癌患者に関する情報共有実績は地域連携薬局が30回、専門医療機関連携薬局が346回となった。

     入院時に医療機関等に情報共有を行った実績は地域連携薬局が2.25回、専門医療機関連携薬局は12.94回、退院時は地域連携薬局が4.31回、専門医療機関連携薬局が4.67回と少なかった。日常の薬局業務では連携が比較的取れている一方、退院時の対応が課題と言えそうだ。

     認定取得のメリット・デメリットについても聞いた。認定取得のメリットとしては「従業員のスキル向上」が最も多く、「従業員のモチベーション向上」「スムーズな多職種連携・連携機会の増加」「患者からの信頼度向上」が続いた。全体の2割弱で「売上向上」「患者数増加」を挙げる声もあった。

     デメリットについては「業務時間・残業時間の増大」「人手不足」が上位回答で、具体的には在宅業務が増えたことによる負担やトレーシングレポート・報告書作成の増加で業務時間や残業時間が増えているとした。

     首藤正一会長は9日の定例会見で、「認定取得のデメリットとして指摘されているものは付いてくるものなので解消するのが難しいが、将来的に調剤報酬の点数と結びつくとデメリットではなくなると考えている」と述べた。

  • 地域フォーミュラリは黎明期‐拡大へ政策など議論(近畿薬剤師合同学術大会)

    情報提供元:薬事日報社

     4日にウェブ上で開かれた近畿薬剤師合同学術大会のシンポジウムで、薬剤師や有識者らが地域フォーミュラリの普及推進に向けて議論した。まだ現在は黎明期にあるとし、処方医の理解や診療報酬上の評価を求める意見があったほか、参画薬局の手応えなどが示された。地域フォーミュラリ策定に必要な情報を関係者間で共有できる新しいネットワーク基盤の整備を進めているとの報告もあった。

     日本フォーミュラリ学会理事長の今井博久氏は、地域フォーミュラリの進捗状況を調べる厚生労働省研究班調査の途中経過を報告した。181病院中139病院が「院内フォーミュラリ運用を自院内にとどめ、周囲の診療所や薬局と連携していない」と回答。地域展開に向けた取り組み状況は、4年前の前回調査時と比べて大きな変化は見られなかった。

     地域フォーミュラリ推進に必要な施策を尋ねたところ、▽処方医の理解▽診療報酬上の評価▽病院と診療所の使用薬剤の一致――との回答が多かった。今井氏は「インセンティブがきっかけになって取り組みが広がる。5〜6年でいい方向になってほしい」と話した。

     将来的な全国展開にも言及。「医療圏や県を跨いで患者が訪れることもある。最終的にはそうした場合にも対応できるようにする。今は黎明期で地域ごとに違いが生じているが、やがては各地で概ね均一な薬が選ばれるようになるだろう」と語った。

     横浜市立大学病院薬剤部副薬剤部長の小池博文氏は、院内フォーミュラリ作成にかかる業務負担は大きいとし、学会策定のモデルフォーミュラリの参照、活用を呼びかけた。

     学会が策定する推奨薬の定義を改め、第1、第2、第3と推奨薬に順位をつけることをやめ、推奨薬とそれ以外のオプションという分け方に順次改訂する。推奨薬に採用するのは後発品とバイオシミラーのみとし、先発品を対象外とする考えを示した。

     アイン信州運営本部長の中澤祐輔氏は、同グループの薬局1078店舗を対象にした調査で、地域・院内フォーミュラリに参画していると回答したのは0.9%だったと報告した。ほとんど進んでいなかったが、参画薬局では薬剤費の削減などを確認できたという。

     地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」の地域フォーミュラリについて、アイン薬局酒田店が処方箋の内容を調べたところ、同法人に参画する日本海総合病院の処方箋には、他病院に比べて、高い割合でフォーミュラリ推奨薬が採用されていた。

     中澤氏は「地域フォーミュラリの拡大で処方薬が集約され、処方傾向が変わる。一定地域内で処方薬が統一されると、入退院時や転院時の患者の混乱を避け、安心感にもつながる」と期待を語った。

     日本アイ・ビー・エムの山口典枝氏は、地域フォーミュラリの推進に役立つ情報を関係者間で共有できるネットワークの構築を進めていると報告した。製薬企業十数社などと構築を進めてきた医薬品データプラットフォームを活用する。

     同プラットフォームは、医薬品の流通量と経路のほか、位置情報、医療機関からの処方量、服用情報を把握するもので、新たに地域フォーミュラリ推進支援ネットワークを構築する考え。同種同効薬の比較情報、各地域のフォーミュラリ、推奨薬の決定基準などに関する情報を提供してもらい、地域フォーミュラリ策定に活用できるようにする。

     現在、運用検証中で、提供されたデータを手動で連携させているが、4月をメドに自動化させる計画だ。ルールや体制整備に関する協議を進めるほか、先行事例を作る。国全体の取り組みとしたい考えで2024年以降に運用モデルを決める。