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2020年8月号

  • 錠剤一包化業務を効率化‐カセットをその場で自由に変更 (庄野薬局中央店)

    情報提供元:薬事日報社

     庄野薬局中央店(西条市)は、薬剤師でなければできない業務に薬剤師を集中させるため、機器や事務員を活用して調剤業務の効率化に取り組んでいる。その一環として全自動錠剤分包機を入れ替え、搭載する錠剤カセットをその場で自由に変更できるユヤマの最新の全自動錠剤分包機を導入した結果、錠剤一包化に割く薬剤師のマンパワーを大幅に削減できた。対人業務へのシフトを進めており、処方内容の薬学的評価や、処方提案を含めた医師への情報提供に力を入れる考えだ。
     愛媛県東部、瀬戸内海に面して広がる道前平野の一角を成す西条市。庄野薬局中央店は、この地域の急性期医療から慢性期医療まで幅広い患者を受け持つ西条中央病院(242床)の近隣に位置している。小児から高齢者まで患者の年齢層は幅広い。薬剤師8人、事務員8人のスタッフが、同院の院外処方箋を中心に月間3500〜4000枚を応需。在宅医療にも対応しており、月に10回ほど患者の自宅に出向いて訪問薬剤管理指導を行っている。
     業務の柱は処方箋調剤だが、約300種類の一般用医薬品や大人用おむつなどの衛生用品も取り扱う。多くの地域住民が参加する高校の文化祭や商店街のイベント等に出店して健康維持のアドバイスを行うなど、地域に根ざした活動を展開している。

     

    ■ 手撒き作業 大幅に削減

     

    応需処方箋枚数が多い庄野薬局中央店は以前から業務の効率化に取り組んできた。その一環として約10年前に全自動錠剤分包機を導入。買い換え時期が来たとして昨年、ユヤマの最新型全自動錠剤分包機「200PROUD-VC-UC8」に入れ替えた。
     選定の決め手になったのは、ユヤマ独自のバリアブルカセット(VC)という仕組みだ。全自動錠剤分包機は、各カセットに収納されたバラ錠を、回転するローターの穴から1つずつ数えて分包紙に投下することで分包業務を自動化する。錠剤の大きさや厚みはそれぞれ異なり、ローターの穴も各錠剤に応じたサイズになっているため、カセットは通常1種類の錠剤にしか対応していない。
    一方、VCでは薬局内で容易にローターの穴のサイズを変更できる。変更時には、カセットからローターを取り外してVCチェンジャーにセット。変更したい錠剤のデータをパソコンから送信するとVCチェンジャーがローター内の歯車を動かし、最適な穴のサイズに自動で変更する。一つのカセットで多数の錠剤に対応可能だ。
     庄野薬局グループ4店舗を統括し中央店で薬剤師として働くことが多い中西雅哉氏は「カセットの新設にはカセット購入費用が必要でメーカーから届く時間もかかるため、以前はカセットの新設をためらうことが少なくなかった」と振り返る。実際にカセットを新設せず、手撒きで対応することが多かったという。
    ユヤマの同機器導入後はその心配がなくなった。調剤頻度の変化や剤型変更、後発品の登場にすぐ対応できるようになり、これまでに10回以上、VCチェンジャーでカセットを変更した。「変更は容易で誰でも行える。今まではカセット1個新設するのに数万円かかっていたが、無料で変更できる。数年で元が取れると思う」と中西氏は語る。
    一般的にカセットの新設を見越して全自動錠剤分包機内に空きスペースを設けるケースもあるが、ユヤマの同機器ではその必要もなくなり、搭載可能な200カセットをフル活用している。同店が導入した機器にはVC163個、固定カセット37個に加え、ほぼ全ての錠剤に対応し手撒き業務を減らせるユニバーサルカセット(UC)8個が搭載されている。
     同店では、錠剤カセット付全自動散薬分包機も併用し、応需処方箋の16%以上に一包化調剤を実施している。一包化の3〜4割には半錠が含まれ、半錠のみ手撒きで対応している。残り6〜7割の一包化調剤には、手撒き作業はほとんど発生しないという。
     カセットをフル活用できUC機能も有するユヤマの同機器に入れ替える前は多くの場合、手撒きの併用が必要だった。中西氏は「91日分という処方が多いが、1日3回服用となると273回分を薬剤師が手で撒く。その作業には10〜20分かかる。その間にまた次の患者の調剤がくる。これまでは常に全自動錠剤分包機に1人が張り付いていた。UCではカセットにまとめて入れるだけなので、その作業が圧倒的に減った」と語る。
    そこに投じていた薬剤師のマンパワーを他の業務に回せるようなり、「調剤、鑑査、投薬のスピードは明らかに早くなった。患者の待ち時間も短くなった」(中西氏)。同店を運営する有限会社庄野の庄野紀美社長は「業務の効率化は、薬剤師の残業が減ったことにも現れている」と話す。

     

    ■ 対物から対人へ業務シフト

     

    同店は現在も継続して調剤業務の見直しや効率化に取り組んでおり、対物業務から対人業務へのシフトをさらに進める計画だ。中西氏は「薬剤師がやらなくてもいい業務はなるべく機械や事務員にまかせて、薬剤師でなければできない業務に薬剤師は集中できるようにしたい」と語る。
    特に、処方内容を薬学的な視点で評価し、処方提案まで踏み込めるような医師への情報提供に力を入れる考え。社会問題になっている残薬についても、その整理に関わるだけでなく、「そもそも残薬が発生しないような薬剤師の処方提案に取り組んでいきたい」(中西氏)としている。