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2021年3月号

  • 薬局認定基準の解釈通知‐情報共有、「満遍なく」求める(厚生労働省)

    情報提供元:薬事日報社

    疑義照会は実績含まず
    厚生労働省は、1月に公布された医薬品医療機器等法の地域連携薬局、専門医療機関連携薬局に関連した改正省令について、認定基準の解釈に関する通知を発出した。地域連携薬局については、薬局薬剤師から病院薬剤師などに薬剤使用情報を月平均30回以上報告・連絡するとの認定要件を設けたが、外来の利用者や利用者の入退院時、在宅医療での情報共有を満遍なく行うよう求めた。一方、留意事項としてお薬手帳への記載や疑義照会を行った件数は実績に含まないとの考え方も提示した。

     地域連携薬局は、地域における在宅医療への対応や、入退院時をはじめ他の医療提供施設と服薬情報の一元的・継続的な情報連携で重要な役割を担うと定義。認定基準として、認定申請もしくは認定更新申請の前月までの過去1年間で、薬剤師から病院薬剤師に対し、患者の薬剤使用情報を月平均30回以上報告・連絡するよう求めている。薬局薬剤師として1日当たり1回の報告・連絡を実施した場合に達成できる数字であることから、月平均30回以上の要件を設定した。

    具体的に報告・連絡すべき内容としては、▽利用者の入院に当たっての情報共有を行った実績▽医療機関からの退院に当たって情報共有を行った実績▽外来の利用者に情報共有を行った実績▽居宅等を訪問して情報提供や指導を行い、報告書を医療機関へ提出して情報共有を行った実績――の4点を挙げた。

     入退院時の情報共有が課題として挙げられる中、四つのいずれかのみを行うのではなく、満遍なく実施することが望ましいとした。

     報告・連絡した実績のうち、医療機関から行われる利用者の検査値のみの情報提供やお薬手帳への記載、薬剤師法で求められている疑義照会は情報共有の実績として含めない。

     一方で、薬剤師の服薬指導から得られた情報をもとに、処方医にとって薬剤の適正使用に必要な情報を取りまとめ、病院薬剤師に文書を用いて提供するなど、薬剤師の主体的な情報収集による報告・連絡は実績に該当するとの考え方を示した。

     在宅医療での実績については、居宅等の調剤、情報提供、薬学的知見に基づく指導を過去1年間で月平均2回以上実施するよう盛り込んだ。

     居宅等を訪問して指導を行った回数を実績として認め、複数の利用者が入居している施設を訪問した場合は、指導を行った人数に関わらず1回とすること、同一人物に対する同一日の訪問は訪問回数に関わらず1回とすることと定めた。

    癌患者数の半数以上‐専門病院に連絡実績
     一方、専門医療機関連携薬局は、認定申請の前月までの過去1年間で、専門的な癌治療を提供する医療機関に対し、薬局で処方箋を応需している癌患者数の半数以上に関する情報の報告・連絡を行った実績を必要とした。

     常勤薬剤師の規定では、「1年以上継続して勤務している薬剤師を半数以上」との要件が設定されたが、医薬品医療機器等法上、常勤は原則「週当たり32時間以上」とし、認定申請の前月までに継続して1年以上常勤で薬局に勤務している場合が該当するとした。

     無菌製剤処理の実施体制については要件のハードルを緩和した。自局、共同利用で無菌製剤処理を実施している薬局がごくわずかにとどまることから、「日常生活圏域に無菌製剤処理が可能な他の薬局が存在しない場合なども想定されるため、無菌製剤処理の調剤に限っては、適切な実施薬局を紹介することの対応でも差し支えない」とした。

  • コロナ対応、各病院で工夫‐患者急増「第3波」に懸念も

    情報提供元:薬事日報社

    日本病院薬剤師会近畿学術大会が1月30、31の両日にオンラインで開かれ、緊急企画セッションでは、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている各病院の薬剤師が取り組み事例を報告した。

     重症患者の管理に深く関わっていることや、看護師と連携した持参薬鑑別、動画を活用した服薬指導など工夫を凝らして業務に取り組んでいることが示された。患者が急増している第3波への対処を懸念する声もあった。

     神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部の田村亮氏は、重症患者に対する薬剤師の役割を紹介した。同院では、患者の受け入れ開始以降も個人防護具等の対策が必要なレッドゾーン内に立ち入り、薬剤供給や医師への処方設計提案などの業務を継続。

     ICU内の重症患者に対する薬学的ケアとして、重度の呼吸不全になる急性呼吸窮迫症候群に進展しないように輸液や注射薬の希釈液量を可能な限り抑えるなど、体水分管理に関わった。また、体水分制限によって生じるナトリウムやカリウム値の異常などにも対処することが多かったという。

     一方、患者に関わる医療者を最小限に抑えるため、病棟での薬剤師業務に制限をかける病院は少なくない。昨年、コロナ専門病院に指定された大阪市立十三市民病院薬剤部の土井克彦氏は「2次感染予防と個人防護具確保の観点から、他職種と同様に薬剤師も服薬指導などベッドサイドでの業務を行えなくなった」と報告した。

     薬剤師の持参薬鑑別業務は、看護師が薬剤やお薬手帳、薬袋、薬剤情報提供書をビニール袋に入れて清拭したものをレッドゾーン外で受け取り、お薬手帳のスキャン画像と合わせて袋越しに行っている。土井氏は「今後、患者への服薬指導をどのように行うかが課題」と語った。

     服薬指導の工夫事例として、日本赤十字社和歌山医療センター薬剤部の阪口勝彦氏は、和歌山県の病院を対象に実施したアンケート結果を紹介。「感染症病棟で薬剤師の対面指導が禁止となったため、吸入薬の吸入指導は動画サイトを準備し、QRコードを読み取れば動画を視聴できるように工夫した病院があった」と話した。

     奈良県立医科大学病院薬剤部の谷田彩氏は「当初から一番危惧しているのは、薬剤部内で感染者が発生し、濃厚接触者が多数発生することで薬剤部の業務が停滞すること」と病院の機能維持の課題を指摘した。

     対策として、感染防止策の徹底に加えて、感染者発生時に薬剤部内で優先する業務、人員の割り当てなどを具体化した事業継続計画(BCP)を策定したという。担当者以外にも業務可能な薬剤師を増やすため研修に取り組んでいるが、通常業務を抱えながら担当者と同じレベルに達することは容易ではない。

     その解決に向けて、谷田氏は、「現在、紙の業務マニュアルでは理解しにくい部分を動画で補完できるよう業務の動画制作に取り組んでいる」と語った。

     患者が急増している第3波への対処を懸念する声も聞かれた。堺市立総合医療センター薬剤・技術局の石坂敏彦氏は、「堺市でも死亡や重症、中等症から重症化への増加、医療施設でのクラスター増加などによって、入院ベッドがひっ迫している。第2波とは明らかに状況が違う」と指摘。

     「患者の受け入れや転院など、地域における役割分担が重要である。これができないと医療が崩壊する。他人事ではない話し合いが必要」とメッセージを投げかけた。

     京都市立病院薬剤科の森田眞由氏も、「これまでは専門性の高い医療者が治療に関わっていたが、現在は感染症科以外の医師や、他病棟からのヘルプスタッフが混在しており、感染管理が不十分になることが懸念される」とし、「薬剤師のマンパワーも不足している」と訴えた。