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2021年4月号

  • 災害時の多職種連携が教訓‐薬剤師会単体支援に限界(宮城県薬剤師会)

    情報提供元:薬事日報社

    東日本大震災10年‐薬剤師に何ができるか
     東日本大震災から10年が経過し、薬剤師による災害時の救援活動は大きく変容した。各地で災害対策の計画が立てられ、医薬品供給車両のモバイルファーマシーが広がり、災害薬事コーディネーターなど災害に対応した薬剤師の育成も進められている。東日本大震災10年を機に、被災県などの取り組みをシリーズ形式で検証し、災害時での薬剤師が果たすべき役割や地域貢献を考えていく。

    必要な連帯した救護活動
     2011年3月11日の東日本大震災で、宮城県内の薬局は多くの被害に見舞われた。震災直後は電気や水道が止まり、電話が通じないなどインフラが寸断された状態だった。
     宮城県薬剤師会と県は1998年に、医薬品集積所や救護所等での医薬品の仕分けや在庫管理、服薬指導を行うため、災害時に必要となる薬剤師班の派遣について協定書を締結。行政から薬剤師が身分保証を得て、ボランティア薬剤師が被災地ですぐに働ける環境を整えていた。

     さらに、東日本大震災の前年に当たる10年には、日本薬剤師会の「薬局・薬剤師の災害対策マニュアル」をもとに、薬剤師の災害時活動に関する手引きを作成しており、現場において活動する上で役立てた。

     それでも薬剤師会単体での災害支援には限界も見られた。大きな教訓となったのは、災害時における多職種連携だ。

     太平洋岸地域である石巻市では、宮城県薬の79会員薬局のうち、薬局全壊が19軒、薬局半壊が22軒と壊滅的な被害を受けた。県薬から派遣された薬剤師班は、石巻高校を拠点に活動を開始したが、被災地全体の情報を得ることができなかった。

     それに対し、避難所における医療班による活動は、医薬品の供給に苦戦し、診療の大きな負担となった。これまでの大地震では急性期の薬剤が求められていたのに対し、東日本大震災では高血圧治療薬など長期慢性疾患の薬剤を必要とする被災者が多かった。

     そのため、日本医師会から派遣された「DMAT」など初期に被災地で活動した医療チームも困惑。被災者が常用する薬やお薬手帳は津波で流され、服用している医薬品が分からず、必要な医薬品を届けられない状況が続いた。

     医薬品供給に関する情報共有に迫られる中、災害拠点病院の石巻赤十字病院を拠点に、医師会・歯科医師会医療チーム、東北大学が取りまとめる全国の大学医療チーム、都道府県の病院医療チーム、自衛隊医療班などで構成された石巻圏合同救護チームのメンバーに薬剤師会が加わった。

     朝夕のミーティングに参加して情報を共有し、東日本大震災を契機に、行政や医療関係団体との連帯感を深めた。薬剤師は、救護所での医薬品保管や集積所での救護所からの要望に応じた医薬品等の供給、避難所での一般用医薬品の管理や医薬品に関する相談対応など、行政や医療機関と連動しながら救援活動を行った。現在も、毎年6月に実施する大地震を想定した模擬訓練には薬剤師も参加している。

     大規模地震では、薬剤師抜きでの医薬品供給は難しい。医薬分業率は、95年の阪神淡路大震災時に全国20%、兵庫県38%、東日本大震災時は全国61%、宮城県74%と進んだ。阪神淡路大震災では、医療機関に8割の薬剤が在庫されていたが、現在は薬局に8割が在庫されている。発災直後に医療機関の備蓄薬だけでは医薬品供給ができず、薬局の活用、薬剤師との連携が不可欠となった。

     避難所の近くに小さな薬局を作れないか――。モバイルファーマシーも東日本大震災の教訓から生まれた。宮城県薬が12年に開発し、大学や薬剤師会などが保有するなど全国に広がる。電気や水などライフラインの喪失環境でも調剤を行うことができ、16年の熊本地震でも出動した。

     期待されているのがモバイルファーマシー間での情報連携だ。モバイルファーマシーは無線基地として通信手段を確保。全国各地のモバイルファーマシーを被災地で活用する場合には、移動中に情報をやりとりしながら支援を行える。

     生出氏は、「局面によって支援の形が異なる。モバイルファーマシーをどう使うか、関係者間で実際の状況を想定したマニュアル作りやトレーニングも必要になる」と話す。

     また、安心して薬剤師が働くためには、「災害時の調剤業務で通常の調剤報酬と同じ体系、場合によっては一部割り増しが可能な評価体系も検討課題になる」と話している。

  • 多剤対策促進へ手順書‐人員不足などに対応策

    情報提供元:薬事日報社

    厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は11日、病院でのポリファーマシー対策を促すための手順書を取りまとめた。対策を始める病院と既に対策を進めている病院に分けて内容を盛り込み、人員不足や多職種連携が不十分など、現場で想定される課題とその対応策などを記載した。

     医療現場における高齢者のポリファーマシー対策をめぐっては、既に「高齢者の医薬品適正使用の指針」が活用されているが、薬剤師や医師等の医療者に対策を理解しやすくして実践を促すため、手順書「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」を作成した。来年度から公募した病院で活用してもらい、効果を検証する。

     手順書は、これから対策に取り組む病院向けと、既にある程度対策を進めている病院向けの2章立ての内容で構成。これから対策に取り組む病院向けの内容では、患者の退院後に以前の処方内容に戻ることを防ぐため、地域の医療機関、薬局に取り組みを理解してもらうべきとした。

     対象患者に優先順位をつけることで活動を導入、維持しやすくなるほか、既に病院内で活動しているチームにポリファーマシーの視点を導入することで取り組みやすくなる場合もあるとした。また、対策を始める際の課題となる人員不足や多職種連携の不十分さ、ポリファーマシーかどうかの判断が難しいなど、現場で想定される課題への対応策も記載した。

     一方、ある程度対策を進めている病院向けの内容として、地域包括ケアを担う医療・介護関係者との連携体制を築くため、入退院時の患者をフォローアップする薬剤師を配置することなどを明記。対策に関する業務を効率的に行えるよう電子カルテシステム、電子版お薬手帳を活用することなども盛り込んだ。

     外来患者への対応も盛り込み、処方見直し後のフォローアップを目的とした受診では、診察後に経過観察事項を確認し、処方が元に戻った場合はその理由、現時点で処方見直しを行う薬剤の有無を確認することとした。