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2021年7月号

  • 「救急専門薬剤師」を創設へ‐具体的要件の検討スタート(日本臨床救急医学会)

    情報提供元:薬事日報社

    報酬評価など追い風に
     日本臨床救急医学会は、「救急専門薬剤師(仮称)」制度の創設に向けて具体的な要件などの検討をスタートさせた。2010年に救急認定薬剤師制度を立ち上げ、これまでに計238人の認定者を輩出。診療報酬上の評価を獲得したことも追い風に救急領域で薬剤師の業務は広がっており、次のステップとして指導的立場の人材育成に踏み出すことになった。できるだけ早期に要件などをまとめ、運用を始める計画だ。

     同学会では、3月に開いた理事会で専門薬剤師制度の新設を決定した。これを受け、現在は救急認定薬剤師認定委員会が具体的な要件や関連団体との連携のあり方について検討を進めている。

     まだ検討はスタートしたばかりで、専門薬剤師制度の内容は白紙に近い状態だが、基本的には▽救急医療を臨床で実践する能力▽エビデンスを構築する研究能力▽救急医療の教育や普及ができる能力――を備えた人材を認定する制度になりそうだ。

     同認定委員会の添田博委員長(東京医科大学病院薬剤部)は、ウェブ上で開かれた同学会学術集会で「認定薬剤師はそろそろ次のステップへ進んでもいいのではないか」と言及。「救急医療の進歩や発展のため、救急医療に従事して教育や研究に携わり、活動を通して社会に貢献できる指導的な人材の育成が求められている」と専門薬剤師の新設に至った背景を述べた。

     新たに創設する専門薬剤師制度は、関連団体との連携を強く意識したものになりそうだ。日本病院薬剤師会の木平健治会長は、救急認定薬剤師制度の立ち上げに日病薬が協力した経緯を振り返り、「今後も救急領域で活躍する薬剤師の数を増やすことや質を向上させることに、力を合わせて取り組んでいきたい」と強調した。

     日本医療薬学会との連携のあり方も検討する。同学会の奥田真弘会頭(大阪大学病院薬剤部)は「できることにおいて協力し、支援したい」と協力する意思を表明。

     昨年9月に発表された日本学術会議の提言「持続可能な医療を担う薬剤師の職能と生涯研鑽」では、認定・専門薬剤師制度の質を保証する仕組みが求められているとし、「専門医機構のような第三者認定機関の必要性が指摘されている」と語った。

     専門薬剤師制度の新設を決断した背景には、救急認定薬剤師の着実な増加がある。16年の「病棟薬剤業務実施加算2」の新設でICUへの専任薬剤師の配置が評価されたほか、18年には救命救急センター充実段階評価の項目に常勤薬剤師の存在が盛り込まれるなどの追い風もあり、約10年間で計238人が認定を受けた。

     一方、全国には未だ救急認定薬剤師が1人も存在しない地域が青森、秋田、石川、山梨、鳥取、徳島、愛媛、宮崎の8県にあり、これらの地域で認定取得者を生み出すなど地域偏在の解消が課題となっている。

     ICUやICUに準じた病床は全国に約1万8600床ある。現在、救急認定薬剤師は100床当たり1.3人と少ないのが現状で、概ね20床前後で構成される1ユニットに薬剤師1人を配置すると想定した場合、認定取得者のさらなる増加が必要と考えられている。

  • 持参薬切替時の負担軽減‐フォーミュラリー活用で(戸田中央リハビリテーション病院)

    情報提供元:薬事日報社

    フォーミュラリーに基づく薬剤師の持参薬切替提案は医師の負担軽減やエラー防止につながることが、戸田中央リハビリテーション病院薬剤科の調査で明らかになった。同院の常勤医師にアンケート調査を実施したところ、患者の入院時にフォーミュラリー等に基づいて薬剤師が持参薬の代替薬を提案した場合には、医師の処方切替に要する時間は1薬剤当たり1分で、提案が全くなかった場合の2分に比べて大幅に短くなった。安全性の確保についても、医師から高い評価が得られた。

     同院は、埼玉県戸田市にある200床の回復期リハビリテーション病院。エビデンスに基づき、有効性や安全性、経済性を考慮して推奨同効薬をリストアップしたフォーミュラリーの導入を進める戸田中央医科グループの病院として、これまで18品目21薬剤の推奨薬を盛り込んだフォーミュラリーを作成。薬剤師が持参薬剤鑑別書で切替薬の提案を医師に行う場面でも、フォーミュラリーを活用している。

     2019年度1年間の実績を調べたところ、入院患者805人のうち、定時服用の持参薬を持ち込んだ患者は570人。

     薬剤師は薬剤換算で967種、3403薬剤の持参薬鑑別と代替薬提案を実施した。

     このうち半分弱がフォーミュラリーに該当する持参薬で、薬剤師はフォーミュラリーの内容に基づいて提案を行った。提案のうち2割では、入院後の状況を踏まえ、医師と薬剤師らが話し合って持参薬の中止や持参薬と同じ銘柄での継続を決めたが、提案の8割ではフォーミュラリー通りに切り替わった。

     常勤医師9人を対象にアンケート調査を実施した結果、持参薬の処方切替に要する時間は、フォーミュラリー等を活用した薬剤師の代替薬提案がある場合には1薬剤当たり1分で、薬剤師からの代替薬提案が全くない場合の2分に比べて半分の時間で済んでいた。推計すると、医師1人当たり年間7時間の時間削減につながった。

     フォーミュラリーは医師の同意を得て策定している。フォーミュラリーに基づく薬剤師の提案は、単なる時間削減にとどまらず、医師の処方切替時の思考負担を軽くし、ストレス軽減にも役立ったと考えられている。

     薬剤師にとっても、フォーミュラリーに基づく代替薬の標準化によって、薬剤師間の提案のばらつきが抑えられ、迅速で正確な提案が実現した。

     医師に対して「薬剤師の代替薬提案がインシデント防止につながると思うか」と聞いたところ、10ポイント中9.5ポイントという高い評価が得られた。

     同院薬剤科は「患者数増などで医師の負担が増える中、薬剤師によるフォーミュラリーに基づく代替薬の提案は、医師の処方負担を減らし、安全な医療の提供につながる可能性が考えられた」としている。