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2023年1月号

  • モデル事業は「概ね順調」‐伊藤電子処方箋サービス室長に聞く

    情報提供元:薬事日報社

    処方箋登録は約4万枚
     電子処方箋のモデル事業を行う地域からスケジュールの遅れが指摘されているのに対し、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課の伊藤建電子処方箋サービス推進室長は「概ね順調」と捉える。1カ月半経過後の進捗について、システムに接続できなかったなどの事例が見られた一方、システムが停止することなく処方箋登録枚数が約4万枚近くあることを実績に挙げた。伊藤氏に、モデル事業の課題や運用開始に向けた展望などを聞いた。

    順次ステップ2に移行
     ――全国4地域におけるモデル事業開始から1カ月半経ったが、進捗状況など現状をどう捉えているか。

     細かい課題は多くあるものの、概ね順調だ。全てがうまくいっているというつもりはなく、課題を経験しながら前進することが大事だ。本格運用に向けて事例を共有していく流れだと理解してもらえれば良い。

     ――稼働済み施設数や各ステップへの到達状況は。

     全体では、医療機関は日本海総合病院、公立岩瀬病院、国保旭中央病院、安佐市民病院の4施設、薬局は21施設で計25施設が参加しており、薬局が順次増加している。11月20日時点の処方箋登録枚数は計1万8000枚ほどだが、今月23日開催予定の電子処方箋に関するオンライン説明会の時点では登録枚数は倍に達する見通しで、3〜4万枚ほどあればそれなりの傾向が見えてくると思う。

     9日から、福島県須賀川地域と広島県安佐地域で、患者が紙の処方箋だけでなく電子処方箋も選択できるステップ2に移行した。山形県酒田地域と千葉県旭地域も順次、同ステップに移行する見通しだ。モデル事業では特に決められたスケジュールはなく、各地域で相談して移行する仕組みにしているので、酒田地域と旭地域で特段の問題があるわけではない。

    処方変更や電子署名で課題‐リフィル対応、実用化急ぐ
     ――モデル事業を通じて、浮き彫りとなった運用面での課題はあるか。

     電子処方箋システムの稼働が止まったとの話はなく、大きな問題なく運用できていると捉えている。

     モデル事業開始直後は問い合わせが増加傾向にあったが、現在は安定しており、対象施設も運用に慣れてきている。一方、新しいステップに移行しているので、患者が電子処方箋を選択した際に生じ得るトラブルの有無をしっかりと確認していく必要もある。

     具体的に寄せられた課題として、システムの面では、医療機関の電子カルテが古いバージョンを使用していたためにシステムに接続できなかったとの事例があったが、アップデートにより問題は解消した。また、レセコンに登録されている資格情報に枝番が登録されていなかったために処方箋情報が登録できなかったとの事例も寄せられたが、これらは事業では必ず起こるものと考えている。

     医療クラークが電子署名を行っても良いか、疑義照会を踏まえて処方変更する場合はどのような情報を登録すれば良いかなどの問い合わせも寄せられている。電子署名に関しては、医師がHPKIカードを通じて署名を行う必要があり、処方変更の際には、実際に調剤した薬剤情報を登録し、処方箋を再発行するかどうかは処方医の判断に基づいて対応してほしい。

     ――ステップ2への移行後に想定される具体的な課題や軌道修正が必要な部分は。

     処方箋に関するデータがきちんと送信されることは分かったので、同様の問題は今後は出てこないと思うが、電子署名に関する課題は出てくるのではないか。署名に使用するHPKIカードについては国が無償で配布している。カードが問題なく動くかどうかを確認したい。

     軌道修正が必要な点は特にないと考えている。

     ――HPKIカードの発行状況は。

     日本薬剤師会分の発行枚数が約3万5000枚で、申請ベースではかなり早いペースで申請が来ており、実際に取得している。7割の医療機関、薬局にきちんと届くようにしたい。

     また、数値目標を達成できるかどうかは意向調査も見ていく必要がある。具体的には、オンライン資格確認等システムを導入した施設を対象としたアンケートをレセプト請求画面で実施しており、電子処方箋の導入意向を聞いている。内訳として、「導入時期未定」も含めて6割程度が導入の意向を示している一方、4割は「検討」にとどめている。そのため、ICT基金に関する予算要求を年内に控えているので、導入に向けた追加支援ができないか財政当局と話し合っているところだ。来年1月の運用開始までに導入してもらえることが理想だが、6割がきちんと年度内に、4割が導入の意向に移ってもらえるようにしたい。

     ――電子処方箋導入により重複投薬の削減に効果があるとして、モデル事業開始前に削減効果を検証する意向を示していたが、実際に検証を行っているのか。

     モデル事業を開始した10月31日より以前のデータは登録されていないので、重複投薬に関する数字はまだ精査しているところだが、かなり重複投薬に該当している感触だ。限定された地域、施設数にも関わらず、それなりに該当する事例が医療機関、薬局で見られている。数字は精査した上で示したい。

     ――現行システムでは、リフィル処方箋や院内処方などは取り扱いの対象外としているが、来年度予算で一部機能の拡充に取り組む方針を示している。

     来年1月の運用開始までには間に合わないが、リフィル処方箋に関する機能拡充はできる限り早く実用化できるようにしたい。

     電子処方箋では、重複投薬や併用禁忌は院外処方箋をベースに運用しているが、院内処方の分はデータに登録されない。より精度を上げる観点から、院内処方への拡充も必要と考えている。入院中の患者がどのような薬剤を服用しているか見られるという医療機関側の視点も踏まえ、これらも拡充していきたい。

    セキュリティ確保、一層注力
     ――システムのセキュリティ面での課題は。

     モデル事業では問題は起きていないが、「絶対」はないので、常に対策を強化する必要がある世界だ。オンライン資格確認ネットワークを通じて確認するが、電子カルテとレセコンでつながっているので、医療機関だけでなく、薬局側もしっかりとサイバーセキュリティに対応してもらう必要がある。

     これまで以上に注力しないといけないし、医療機関、薬局の双方で守りをしっかりとしておくべきだ。

     ――モデル事業を実施中の医療機関では、患者への事業周知に注力している。医療現場での電子処方箋普及に向け、広報など必要な取り組みは何か。

     現場への周知がまだまだ必要だ。特に、導入を検討段階の施設が4割なので、モデル事業実施地域以外の人にも届く広報が求められている。周知ポスターを貼付するよう求めているので、地元の医療機関・薬局で見る機会が増えると思う。

     また、年明け直前くらいに、厚労省のホームページで電子処方箋に対応した施設のリストを公表する予定だ。