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2024年11月号

  • 長期品の選定療養スタート‐薬局で制度説明に課題多く

    情報提供元:薬事日報社

     患者希望で長期収載品が処方された場合に患者に特別料金の自己負担を求める長期収載品の選定療養が1日から全国で始まった。後発品調剤割合が80%を超える薬局が多く、長期収載品の選定療養に該当する患者割合が少ないことに加え、制度開始前から医療制度の仕組みが変わることなどを薬剤師から患者に説明した結果、大きな混乱は見られていない模様だ。現場からは「後発品の使用 促進につながる」との肯定意見があった一方、制度を知らない患者も一定数存在したため、「薬剤師から患者への制度の説明に時間がかかった」との声が相次いだ。

    後発品使用促進効果も
     埼玉県の薬剤師会会営薬局は、事前準備としてポスターによる周知や、カウンターごとに机面に貼付した。問い合わせはなかったため、長期収載品利用者には個別に時間を見つけて声かけしていたという。管理薬剤師は、制度開始初日を終えて「利用者、患者側には『制度が複雑で分かりにくい。どれくらい変わるのか』という声が大きかった」と感想を話す。処方箋を発行する医療者側も「制度の理解が乏しい」と課題を指摘する。

     後発品の使用促進には期待を寄せる。同薬局は後発品調剤割合が75%にとどまるが、「ほとんどの患者が後発品に変更したいとの声が多く、後発品の使用促進となった印象」と述べた。

     東京都墨田区内の薬局薬剤師は、「朝早く起きて、仮の処方箋を組み立ててレセコンにきちんと反映されるかシミュレーションをした。前日まで心配だったが、うまく立ち上がって安心した」と胸をなで下ろした。

     患者希望で長期収載品が処方された患者のうち、最も自己負担額が大きかったのは「2500円」で、「使用感を気にする患者が多い。後発品と長期収載品の差額の4分の1であれば、長期収載品を選ぶ患者は多いかもしれない」と実感を話す。業務上の影響については「患者への制度説明で10分程度かかり、患者を待たせてしまった」と話す。

     また、都内の薬局では「普段は話をしない患者だったが、制度導入をきっかけにコミュニケーションが徐々に取れるようになった」との好影響も聞かれた。

     鹿児島で複数店舗を持つ薬局の管理薬剤師は、「薬の価格やオーソライズドジェネリック(AG)の有無に詳しくなった。AGであれば変更してくれる医師や患者がいる」と明かす。

     一方で課題も指摘した。入金するレジに自費・課税対象と保険対象を分けて入力する必要性から、会計処理の複雑化によるミスが多発したという。また、「『そんな制度は聞いていない』と怒って戻られた患者もいる」とし、「お金や制度説明に割く時間がしばらくは続きそう」と話す。

     東京都町田市内のドラッグストアに勤務する薬剤師は「特に大きなトラブルはなかったが、定期的に来ない患者の中には制度を知らない人もいた」と話す。「後発品の使用促進につながるのはいいことだが、一定数の患者は後発品メーカーの不祥事を気にして変えない人もいるので、再発防止のために国やメーカーに安全性担保の仕組み作りをお願いしたい」と求める。

     一方で、厚労省の資料をもとに個人が作成しているシミュレーションサイトを患者が利用し、薬剤師が事前に試算して伝えた追加額と実際の追加額が大きく乖離している事例があることには、「今後揉めるかもしれない。厚労省公式で立ち上げてほしい」と要望した。

     複数の薬局から在庫調整の難しさも指摘された。患者が希望する長期収載品を自薬局でどれだけ確保すればいいかの判断に頭を悩ませている。「在庫調整も大変で、対物から対人にシフトしているが、また対物に戻っている印象」との意見のほか、「自薬局にない医薬品を薬局間連携で融通する仕組みが必要」との指摘も上がった。

  • 人材確保策に基金を活用‐薬剤師の資質向上にも(日本病院薬剤師会地方連絡協議会)

    情報提供元:薬事日報社

     日本病院薬剤師会は19日、都内で地方連絡協議会を開き、地域医療介護確保基金を用いた薬剤師確保策などについて意見交換した。基金を活用している県からは、高校生向けのセミナーや調剤業務のICT化支援、薬剤師の資質向上など奨学金・返還助成以外の領域での活用実態が報告された。

     日病薬が実施したアンケート調査で基金等を活用した派遣、奨学金・返還助成などの実施見込みを聞いたところ、「あり」(申請中)が10県、「あり」(その他)が9県、「ない」(未申請)が7都道県、「ない」(その他)が10府県、「未定」が6県となった。

     薬科大学がない島根県病院薬剤師会は、県と協力して従来から基金を活用して高校生セミナーを開催している。矢野貴久会長は「薬学部を目指すところから薬剤師を育てていこうという方針を県が立てている。薬学部のオープンキャンパス等で親御さんと一緒に行ってもらう」と語った。

     一方、奨学金の返還助成については「基金を活用していないものの、県の予算で助成を行っている」と説明した。

     神奈川県病院薬剤師会は、2026年度事業では調剤業務のICT化を支援し、省力化により臨床業務時間を確保している成果を病棟薬剤師を希望する学生向けにアピールし、県内病院での就業につなげることを目指している。

     山田裕之会長は、「調剤業務に関わる時間を短くするためにICT化の話が上がってきた。実施が26年以降ということで進んでいるが、現場で薬剤師を目指す学生のため、臨床薬剤業務になるべく時間をかけるために計画している」と説明した。

     佐賀県は、卒後研修体制の構築に基金を活用している。佐賀県病院薬剤師会の島ノ江千里会長は、「佐賀県は薬剤師が多い県ではないが、薬剤師の質を上げようとするために県が資金を出している。癌の認定薬剤師を薬局薬剤師に取得してもらい地域医療を良くするなど、在宅と外来の癌患者さんを支えるような地域を作るためにお金を付けている」と説明した。

     一方、今年度の診療報酬改定で新設された「薬剤業務向上加算」の算定を検討しているのは7施設ある。静岡県病院薬剤師会は、聖隷浜松病院からの薬剤師派遣事例について「県病薬があまり関わらず、病院同士での事例になる」とした上で、「県内の他病院でも薬剤師派遣を検討したいという話も聞いているので、聖隷浜松病院の事例をモデルケースにしたい」と語った。