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2024年3月号
賃上げで調剤基本料3点増‐在宅移行初期管理料230点(中央社会保険医療協議会)
情報提供元:薬事日報社
診療報酬改定案を答申
中央社会保険医療協議会は2024年度診療報酬改定案をまとめ、14日の総会で武見敬三厚生労働相に答申した。調剤報酬では、賃上げや地域医療に貢献する薬局整備に向けて調剤基本料1〜3を3点ずつ引き上げた一方、現行の特別調剤基本料(7点)をA(5点)とB(3点)に区分し、同一敷地内薬局にAを適用する。また、訪問薬剤管理指導前に患者宅を訪問した場合に評価する在宅移行初期管理料(230点)、薬学的管理指導等を評価する在宅薬学総合体制加算(15点)を新設するなど、薬剤師の在宅業務を手厚く評価する答申となった。
敷地内の基本料は5点
24年度改定の大きな焦点となった賃上げ対応について、医科では外来医療・在宅医療を実施している医療機関に勤務する病院薬剤師等の賃上げに対応するため、「外来・在宅ベースアップ評価料I(1日につき)」を新設。初診時6点、再診時2点、訪問診療時では同一建物居住者の場合7点、同一建物居住者以外の場合は28点とした。
薬局薬剤師の賃上げは調剤報酬で対応し、調剤基本料の評価を見直す。同1〜3は現行点数から全て3点ずつ引き上げ、同1は45点、同2は29点、同3はイが24点、ロが19点、ハが35点となった。
薬局の収入に関わる調剤報酬については、特定の医療機関からの処方箋受付が集中し、受付回数が多い薬局の評価を見直し、1カ月における処方箋受付回数が4000回を超え、かつ受付回数が多い上位3医療機関の処方箋の調剤割合が計7割を超える薬局を、調剤基本料2の算定対象薬局に加える。
同一敷地内薬局の評価見直しも行い、「特別調剤基本料A(5点)」と「同B(3点)」を新設した上で、敷地内薬局は同Aに区分。調剤基本料の施設基準の届出を求め、届出していない薬局は同Bに区分し、調剤基本料の諸加算の算定を不可とした。薬学管理料の各算定項目も、同Aの算定薬局では特別な関係のある医療機関への情報提供に関する評価を見直し、同Bの算定薬局では不可とする。
1カ月当たりの処方箋交付が平均4000回を超える医療機関が交付する処方箋による調剤割合が9割超の薬局と不動産取引等の特別な関係がある場合、処方箋料の評価を見直す。
地域支援加算は7点減
地域におけるかかりつけ機能に応じて薬局を適切に評価するため、地域支援体制加算の要件も強化する。現在の地域支援体制加算1は39点、同2は47点、同3は17点だが、各7点ずつ引き下げる。特別調剤基本料Bの算定薬局は不可。
地域支援体制加算1の施設基準として、地域医療に貢献する体制を示す実績は「かかりつけ薬剤師指導料およびかかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数が計20回以上」を含め10要件のうち3要件以上、同加算2では10要件のうち8要件以上満たすよう求めた。
そのほか、地域医療に関連する取り組みの実施では一般用医薬品・要指導医薬品等(基本的な48薬効群)の販売や緊急避妊薬の取り扱いを含む女性の健康にかかる対応などを要件に追加。夜間・休日対応を含めた薬局における体制に関する評価も見直す。
かかりつけ薬剤師関連では、吸入薬の投薬が行われている喘息または慢性閉塞性肺疾患の患者に対して、必要な薬学的管理・指導を行い、医療機関に必要な情報を文書で提供した場合、吸入薬指導加算として3カ月に1回に限り30点を加算可能とした。
より質の高い薬学管理と薬物療法に向け、医療機関と薬局が連携して糖尿病患者、慢性心不全患者に対する治療薬の適正使用を推進するため、「調剤後薬剤管理指導料」を新設。各患者に指導を行った場合、60点ずつ加算できる。
在宅医療においては「在宅薬学総合体制加算1(15点)、同加算2(50点)」を新設し、調剤基本料について薬局の麻薬の備蓄や無菌製剤処理等に関する体制や実績を評価する。
退院直後など計画的に実施する訪問薬剤管理指導の前段階で患者宅を訪問し、多職種連携で今後の訪問薬剤管理指導のための服薬状況確認や、薬剤の管理等の必要な指導を行った場合の評価として、新たに「在宅移行初期管理料」を設け、1回に限り230点を算定できる。
短期入所を含めた介護老人福祉施設入所者に対する薬学管理の評価も見直し、服薬管理指導料3の対象患者に、短期入所生活介護(ショートステイ)等の利用者が含まれることを明記。介護老人保健施設等以外の医師が専門的薬学管理が必要な薬剤に関する処方箋を発行し、応需した薬局の薬剤師が訪問して服薬指導を行った場合に同指導料を算定できるが、月4回の上限回数を設ける。
癌患者に薬剤師外来‐月1回限り100点
一方、医科では、病棟薬剤業務の質向上に向け「薬剤業務向上加算」(100点)を新設した。病棟薬剤業務実施加算1について、免許取得直後の薬剤師の研修体制を持ち、他の医療機関で地域医療に関わる業務を実践的に修得できる体制が整備された医療機関が算定可能となる。
外来腫瘍化学療法診療料の要件・評価も見直すほか、診察前に薬剤師が服薬状況等について医師に情報提供や処方提案を行った場合の新たな評価として、「がん薬物療法体制充実加算(月1回に限る)」(100点)を設ける。
また、「バイオ後続品使用体制加算(入院初日)」(100点)を新設。患者にバイオ後続品の有効性・安全性の説明を十分に行った上で使用した場合に算定できるようになった。
病棟での多職種連携によるポリファーマシー対策がさらに進むよう薬剤総合評価調整加算の要件を見直し、カンファレンス等を通じて多職種が連携すること、ポリファーマシー対策に関する手順書を作成して医療機関内で周知・活用することも追加した。回復期病棟でガイド作成‐薬剤師業務のあり方示す(日本病院薬剤師会)
情報提供元:薬事日報社
日本病院薬剤師会は、回復期病棟に従事する薬剤師が十分に活躍できるよう業務のあり方を示した「回復期病棟における薬剤師のための関わり方ガイド」を作成した。回復期病棟は、薬剤師にとって診療報酬上インセンティブのない病棟区分であり、一般病棟で行われている薬剤管理指導業務の多くが実施できていないのが現状。ガイドでは、回復期病棟における薬剤師と多職種との関わり方に加え、リハビリテーション栄養やリハビリテーション薬剤、ポリファーマシーとの関わり方などを説明している。
ガイドでは、回復期病棟の薬剤師が医師に対して行うべき重要な関わりを「処方提案」と規定。特に薬学的管理や薬物療法に関する説明は、処方提案につながる業務とし、開始用量と維持用量が異なる医薬品、投与期間に制限がある医薬品、急性期病院で導入された睡眠導入薬、ポリファーマシーなどを挙げた。
回復期病棟では医師のみならず、看護師やリハビリテーション専門職のセラピストなどとも連携することが必要とした。
疾患別では、脳血管障害、運動器疾患、廃用症候群を挙げ、中でも運動器疾患については、患者のADLを把握しながら服薬支援を行うことが必要なため、セラピストとの協働が必要とした。
そのほか、リハビリテーションと薬物療法を一緒に考え、フレイル高齢者の機能や活動、社会参加、QOLを最大限高めるリハビリテーション薬剤と、栄養障害やサルコペニア、栄養素摂取の過不足の有無と原因の評価、診断、ゴール設定を行った上でフレイル高齢者の機能や活動、社会参加、QOLを最大限高めるリハビリテーション栄養に薬剤師が関わるよう促した。
薬剤師が回復期病棟に介入するタイミングは、転院時、転棟時、入院時、入院中、退院時の五つを挙げた。急性期からの転院・転棟時と在宅からの入院時では、情報収集方法や把握・検討すべき事項が一部異なると指摘。転院・転棟時には、取得情報により急性期での治療状況を明確にし、急性期で開始・中止となった薬剤を含めた服用薬の継続可否について検討を行う必要があるとした。
在宅からの入院時には不足する情報を積極的に収集することで在宅療養中の治療状況を把握し、漫然投与されている薬剤やPIMsについて検討を行う必要があるとした。