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2024年4月号

  • 【厚労省・安川薬剤管理官】調剤報酬の在宅評価課題‐「漫然算定では適正化に進む」

    情報提供元:薬事日報社

     厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、本紙のインタビューに応じ、2024年度調剤報酬改定で薬局の在宅業務の評価を充実したことについて、「医療と介護との同時改定もあり、在宅業務を行う薬局の体制評価を行うことができた」と手応えを語った。ただ、次回改定に向けては、介護報酬で評価されてきた在宅業務が調剤報酬で評価されることにより、「技術料で外来と在宅がバッティングする。調剤報酬の中で在宅にどこまで費用投入するかが今後の課題」との問題認識を示した。

     24年度改定では、在宅業務の推進に向け、ターミナルケア・小児在宅医療に対応した訪問薬剤管理指導の体制を整備している薬局に対する評価として「在宅薬学総合体制加算」を新設したほか、ターミナル期の患者について夜間・休日・深夜に緊急訪問した場合の評価も新設した。また、在宅患者に対して処方箋交付前の処方提案に基づく処方変更や、高齢者施設の薬学的管理の充実に向けた新たな評価も行うなど手厚くした。

     安川氏は、「4月から各都道府県で始まる第8次医療計画に在宅対応が盛り込まれることも強く意識した」と説明。「同時改定ということもあり、在宅医療でなかなか評価しきれなかった部分を、現場の意見を聞きながら調剤報酬で整理した。在宅にはコストがかかり、1回の訪問で賄うのは限界がある。地域の中で医薬品を提供し続けるため、薬局の在宅業務にかかる体制を評価することにした」と語る。

     一方、在宅医療における調剤報酬のあり方として、外来と在宅に投入する費用バランスが課題になると指摘した。これまで薬剤師の在宅訪問サービスはほぼ介護報酬で評価されており、調剤報酬では介護報酬との整合性から後追いで評価が付けられてきた経緯がある。今回の改定では、夜間・休日・深夜の緊急訪問や処方箋交付前の処方提案に基づく処方変更を調剤報酬の新たな評価とした点でこれまでと異なる。

     安川氏は、「調剤報酬は現在2兆円の技術料があるが、在宅部分が増えると外来とバッティングする」と指摘。「医療と介護で薬剤師がやっていることを共通で評価することは必要だが、医療保険として必要な行為が何かを考えていくと一定の仕分けができ、在宅の比重が大きくなればより適正化の検討が必要になる」と話す。

     さらに、「医科でも在宅に対する評価は改定のたびに『充実』と『適正化』を繰り返してきた。薬剤師が患者ごとに服薬支援の必要性を判断し、算定する体制が必要。漫然と算定が行われるようになると適正化に進む」と述べ、この2年間で検証が必要とした。

     具体的に、ターミナル期の患者や医療的ケア児など小児在宅については「薬を届ける大変さがあるため、薬剤師の関与が必要」とした。一方で、検討課題としたのが高齢者施設での在宅業務のあり方だ。

     安川氏は、「在宅業務の象徴となっている施設での一包化作業は薬剤師のやるべき仕事なのか。施設への対応については基本的に職員が関わるはずで、施設側の要求にどう応えるか。そこは整理しないといけない」と投げかける。

     その上で「施設に任せるべきところは施設に任せ、薬局がどこまで介入するのか、現場で在宅業務の評価軸を作ってほしい」と呼びかけた。一方、在宅特化型薬局の体制評価については「外来と在宅を両方やっている薬局とは体制整備にかかるコスト構造が異なる」とし、今後の検討課題に挙げた。

  • 在宅訪問指導で手引き‐必要な薬剤師業務を整理(厚生労働科学研究班)

    情報提供元:薬事日報社

     国立長寿医療研究センター長寿医療研修部高齢者薬学教育研修室の溝神文博室長を研究代表者とする厚生労働科学研究班は、「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」をまとめ公表した。在宅医療における多職種間の情報共有不足の解消を目的としたもので、薬剤師間、医師、看護職等の各職種ごとに、円滑な連携に向けて薬剤師に求められる業務を整理して示している。

     在宅医療や介護施設に関わる薬剤師のほとんどが多職種連携の重要性を認識している一方、実際に情報提供を行っているのは看護職以外の職種では1割以下にとどまる。また、薬剤師による患者情報の収集が不十分なために情報提供されていない実態もある。

     同ガイドは、薬剤師と他職種が双方向で情報共有でき、薬剤師が患者の状態を全面的に把握し、適切な薬物治療の提案を可能にすることを目的に、現場に従事する薬剤師向けに作成。服用薬剤の種類増加が見込まれる75歳以上の患者を対象としている。

     病院、薬局、介護老人保健施設など各施設に勤務する薬剤師間の連携では、療養環境の移行時には調剤方法や患者の服薬管理能力だけでなく、薬物療法の経過や治療方法変更の経緯等の情報を他施設の薬剤師と共有することが重要とした。

     患者の入院予定情報を薬局で把握できる仕組みの構築が必要として、予め薬局と病院の薬剤部で入院時の情報連携の方法を摺り合わせておくことや、かかりつけ薬剤師を患者に予め決めておいてもらうよう勧めておくことが望ましいとした。

     医師との連携については、薬剤師への要望を盛り込んでいる。適正使用に向けて患者の処方薬全てを医師に報告すること、特に慎重な投与が必要な薬物や薬剤起因性老年症候群に当たる薬物に関連する情報の提供のほか、▽処方薬の服薬指導▽処方薬の服薬状況確認▽残薬の調整――に関する情報提供も求めた。

     患者の日常生活に関する情報を十分に持ち、服薬状況の管理や服薬支援を担う看護職・介護職との連携も不可欠とした。OTC医薬品やサプリメント等の服薬状況確認、服薬アドヒアランス低下を避けるために患者の退院後の生活状況確認、残薬について看護職等から情報の聞き取りを行った上での介入が望ましいとした。

     そのほか、電子的な情報連携、服薬管理、介護老人保健施設における連携等を項目として記している。