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2024年6月号

  • 休日夜間リスト化で温度差‐会員のみ「算定不可」解釈

    情報提供元:薬事日報社

     2024年度調剤報酬改定で地域支援体制加算、連携強化加算、在宅薬学総合体制加算の施設基準に「地域薬剤師会等を通じて休日や夜間の対応薬局など地域住民に周知する」と明記されたことを受け、各地域薬剤師会は非会員薬局への対応に頭を悩ませている。厚生労働省が4月26日に示した疑義解釈では、地域薬剤師会が会員のみを対象に情報を整理・収集して公表している場合は「施設基準を満たさず算定不可」とし、会員・非会員の区別なく情報を整理する必要があることを示した。非会員である場合が多いチェーン薬局やドラッグストアの取り扱いをめぐっては、「手数料を徴収しリストに掲載する」といった手法も検討されているようだ。

    非会員の手数料徴収も
     調剤報酬改定では、地域支援体制加算、連携強化加算、在宅薬学総合体制加算の施設基準で「地域の行政機関または薬剤師会等を通じて各加算の要件に示す情報を周知する」とされる中、非会員薬局の取り扱いが大きな課題となっていた。

     今回の疑義解釈では、地域薬剤師会が会員のみを対象として情報を整理、収集して公表している場合は「加算の要件の対応として適切ではないため不可」との見解を示した。

     その理由として、「地域の住民や行政機関、医療機関、訪問看護ステーション、福祉関係者等が情報を把握しやすいよう、地域の薬剤師会等の会員であるか非会員であるかを問わず、市町村や地区の単位で必要な情報を整理し、周知されている必要がある」と説明している。

     チェーン薬局やドラッグストアは地域薬剤師会の非会員である場合が多く、薬剤師会を通じて周知する情報に非会員の薬局情報が整理されていなければ、同地域にある薬局は加算が受けられない可能性がある。

     一部の地域薬剤師会では対応に動き出している。神奈川県の大和綾瀬薬剤師会は、調剤報酬改定の議論以前から会員・非会員を問わず緊急時や休日・夜間の医薬品提供体制の整備に向けた検討を進めており、休日・夜間における調剤や在宅業務、相談体制に関する情報をリスト化する。

     4月24日から薬局情報の掲載を希望する管理薬剤師が非会員の薬局に対して専用登録フォームから受付を開始した。

     「虚偽ない内容を掲載し、変更があれば直ちに報告する」などの誓約書の提出が要件になり、夜間休日に調剤の求めがあり、在宅業務の実施があった場合には速やかにその処方内容をメールで報告することも求めている。非会員は掲載料を支払う必要があるが、期日までに入会すれば掲載料は無料となる。

     加藤久幸会長は「薬剤師会は医薬品供給の担い手であり、体制整備をするのが仕事だ。調剤報酬改定で地域支援体制加算の施設基準となったが、当会ではすぐに始められる」と話す。

     都内の地域薬剤師会会長も「非会員のチェーン薬局やドラッグストアとは面会を行っており、会員になってもらうよう協力を求めている。非会員にはリスト掲載時に一時金や月々の手数料を徴収することを考えている」とした。

     ただ、全国的に見ると、ホームページを作成していない地域薬剤師会が一定数あるなど対応に温度差がある。「非会員から手数料を徴収するとなると、B会員やC会員のような形態ができることにつながり、正会員が減少することになるのではないか」と懸念する声もある。

  • クロザピンで多剤併用減‐統合失調症治療を適正化(岡山県精神科医療センター)

    情報提供元:薬事日報社

     岡山県精神科医療センター臨床研究部の薬剤師、北川航平氏らの研究グループは、同院に入院する統合失調症患者を対象に12年間の処方動向を解析した結果、抗精神病薬「クロザピン」の単剤処方率が37.3%に高まることで、抗精神病薬を3剤以上併用する症例は1%未満になったことを明らかにした。2剤以上の多剤併用も4人に1人に減少した。海外に比べて日本では同剤の使用が進んでいないが、北川氏 は「これだけ薬物治療が変わるという結果を見てもらいたい」と話している。

     東邦大学薬学部の松尾和廣教授らと共同で処方動向を解析した。同院で2010年から使用を始めたクロザピンの単剤処方率は経時的に伸び、20年には37.3%に高まった。クロザピンを含む抗精神病薬の単剤処方率は、09年の24.4%から20年には74.6%に高まり、2剤以上の多剤併用の割合は09年の75.6%から20年には23.7%へと減少した(20年は抗精神病薬を服用しない患者が1.7%存在)

     多剤併用のうち、2剤を併用する割合は09年の47.8%から20年の22.9%へと半減。3剤以上併用する割合は09年の27.8%から20年には0.8%へと大幅に低下した。

     クロザピンは抗精神病薬の中で唯一、治療抵抗性の統合失調症に適応を持っている。同院でも同剤導入前は、治療がうまくいかない統合失調症には抗精神病薬の多剤併用で対応していたが、導入後は同剤の単剤投与でコントロールできる症例が増えた。その結果、「多剤併用で対処しなければならない症例が少なくなった」と北川氏は語る。

     クロザピンは、海外に比べて日本での使用は進んでいない。23年12月時点の国内使用登録患者数は1万8210人で、統合失調症患者の2.3%に過ぎない。約3割は既存の抗精神病薬が効きにくい治療抵抗性であることを考慮すると処方率は極めて低い。

     使用条件が厳しいことや副作用への懸念から使用が進まないとされる。生命に関わる副作用の無顆粒球症を早期に発見し対応するため、投与初期に原則26週間の入院が必要で、定期的な頻回採血や同症発現時に対応可能な医療機関との連携も求められるなど、医療従事者の負担は大きい。

     同院は、岡山県の精神科医療の最後の砦とされ、症状が重い治療抵抗性の統合失調症患者を受け入れることが多い。治療にはクロザピンが欠かせないとの強い意思で院長や医師、スタッフが一丸となり同剤の使用を積極的に推進してきた。

     同院の薬剤師は、クロザピンの副作用が出やすい時期や気をつけるべき点などをまとめた資料を作成し、スタッフと共有。勉強会を開くなどして周知している。薬物血中濃度の測定結果をもとに投与量を調整するなど、最適化にも深く関わる。こうした病院全体の適正使用の取り組みでクロザピンの処方率は経時的に高まった。

     北川氏は「クロザピンをよく使う病院が結果を発信しなければならないと考えた。これだけ薬物治療が変わることを見てもらい、未導入の施設でも使ってもらえるようになれば」と語る。

     松尾氏は「クロザピンの使用で治療抵抗性の統合失調症に対する選択肢が増え、多剤併用で副作用が出ている患者や、効かない患者がきちんとした生活を送れるようになる可能性がある」としている。