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2016年4月号

電話モニタリングの活用を

■副作用などを早期に発見し問題を解決するために、電話は有効な手段になりそうだ。実際に、副作用の早期発見などに電話を役立てている病院薬剤師や薬局薬剤師の取り組みを近年、薬系学会の学術大会で目にする機会が増えてきた。すそ野は広がりつつある。
電話の活用には二つの方向性がある。一つは患者からの問い合わせに電話で応じる“受け”の活用。もう一つは、薬剤師が自ら患者に電話をかけて様々な状況をモニタリングする“攻め”の活用だ。
“受け”の電話活用は、薬局や病院に広がり始めている。病院では、日本病院薬剤師会が全国の病院を対象に2014年度に実施した調査において、外来化学療法部門があると回答した1247病院のうち169病院の薬剤師が「副作用などの相談に電話などで対応(ホットライン等)しており、関与している」と答えている。
薬局でも、電話での相談に応じているところは少なくないだろう。今春の診療報酬改定で新設される「かかりつけ薬剤師指導料」の算定要件として、患者の相談に24時間応じる体制が求められており、体制整備は拡大しそうだ。
“攻め”の電話活用も、少数だが増えている。その一つの事例としてがん患者を対象に薬剤師担当制を導入し、患者に寄り添って支援する体制を構築した。その患者を担当する薬剤師は服薬指導など全ての対応を引き受け、相談も薬局の携帯電話で24時間受け付けるほか、患者に電話をかけて服薬状況や副作用の発現も確認している。
他地域でもいくつか取り組みがある。浜松市の診療所と近隣13薬局は連携し、接触性皮膚炎の発現によって、過活動膀胱治療用貼付剤の使用が中断されないように、スキンケア方法や皮膚症状出現時の対応を標準化した。薬局薬剤師は初回説明に加え開始後3、7日目に電話をかけてモニタリングを行っている。
地域の医療機関と連携し、薬局薬剤師が患者にコーチングを行うことによって糖尿病性腎症の重症化予防を目指した臨床研究「PHONDStudy」では、薬局薬剤師は面談に加え電話でも患者をフォローする。このほか、新規にオピオイドの導入を開始した外来患者を対象に、次回受診日までに薬剤師が患者に電話をかけて、痛みの状況、レスキューの服用回数、副作用の発現状況などを聴取し、対応している病院も複数存在する。
電話の活用には薬剤師のマンパワーが必要だが、各地の事例を参考に、可能なら受けや攻めの電話活用を導入してはどうだろうか。副作用を早期に発見して重篤化を防止したり、生活習慣病の良好なコントロールに貢献したりすることは、医療費の削減につながる可能性があるほか、何より患者のためになる。電話活用の効果を客観的な数値で示し、診療報酬上の評価を目指す戦略があってもいい。

閉鎖式器具の使用拡大期待 - 施設環境に応じた選択を

■今春の診療報酬改定を受け、混合調製時の抗癌剤の曝露を防ぐ閉鎖式薬物移送システム(CSTD)への関心が今まで以上に高まっている。CSTD使用時の対象薬の区分が撤廃され、点数も30点増の180点になる。それでもCSTDの費用を全て賄うまでには至らないものの、使用対象抗癌剤を拡大したり、CSTDの導入に踏み切る病院が増えそうだ。

12、13日に鹿児島市内で開かれた日本臨床腫瘍薬学会学術大会のシンポジウムで石丸氏(聖路加国際病院薬剤部)は、今春の発売予定を含め6社が市販するCSTDの特徴を把握した上で、各病院の環境に応じたCSTDの導入を検討するよう呼びかけた。
現行の診療報酬体系では、揮発性の高い抗癌剤の混合調製にCSTDを使用した場合の「無菌製剤処理料1」は150点、それ以外の薬剤に使用した場合は100点となっている。現在、大規模病院を中心にCSTDの導入が進んでいるが、診療報酬でCSTDの費用を賄えないため、揮発性の高い3種類の抗癌剤に使用を限定しているケースが多い。
4月以降は「揮発性の高い薬剤」という区分が撤廃された上、その点数も180点に増額される。それでもCSTDの費用を全て賄えるわけではないが、病院の持ち出し分は減るため、CSTDの使用は今後拡大すると見られる。CSTDの使用により、抗癌剤曝露から癌になるリスクを抑えられる。
石丸氏は、導入にあたって各社のCSTDの特徴をよく知る必要があるとし、その長所と短所を解説した。「ファシール」は、気化した薬剤による曝露を防止し、早期から使用されているため多くのエビデンスがある。一方、短所としては、操作に練習が必要で、誤った操作で器具を破損し重大な汚染につながることがあるとした。
「ケモクレーブ」「ケモセーフ」は使いやすいが、混注口に微量の汚染が生じる可能性がある。気化した抗癌剤はベントフィルターを通過し、バイアル外に拡散する恐れがある。「ネオシールド」はバイアル数が増えても比較的安価で済むが、トランスファーとシリンジをつなぐチューブに薬液が残存するという。
石丸氏は「それぞれに長所と短所があり、各施設の環境に合ったCSTDを選択していただければよい」と解説。例えばベントフィルターを活用するCSTDは、完全外排気型の安全キャビネットと組み合わせて使うなど「CSTDの選択時には特に短所を十分に理解し、その短所を運用などで補う必要がある」とし、「対象薬剤やコスト、使い勝手も考えて、どのCSTDを使用するのかを検討してほしい」と話した。
一方、看護師の立場から講演した平井氏(東京医科大学医学部看護学科)は、混合調製時だけでなく、病棟で看護師が抗癌剤を混合した輸液バッグに点滴ルートを接続したり、廃棄したりする時にも曝露が起こる可能性があると強調。「薬剤師が関わる混合調製業務の曝露対策は進んでいるが、投与や廃棄に毎日関わっている看護師は取り残されている。投与時に用いるCSTDの必要性を多くの看護師は認識しているが、コストの問題から組織の理解が得られず、導入が認められない場合がある」と述べ、投与時に用いるCSTDの導入を共に推進するよう薬剤師に求めた。

 

■完全外排気型を推奨‐手袋は30分で交換
シンポジウムではこのほか、日本癌看護協会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会の3学会が合同で昨年7月に策定した「癌薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」のポイントを中山季昭氏(埼玉県立癌センター薬剤部)が紹介。
安全キャビネットについて、「室内排気型は抗癌剤の調製には不適」と指摘。輸液バッグへの抗癌剤の付着を防止し、使用時や廃棄時の曝露を防ぐためには完全外排気型が推奨されるとし、「一部を再循環させる外排気型は許容されるが、CSTDを用いるか揮発しない薬剤に使う」と語った。
また、混合調製時に装着する手袋は30分ごとの交換が推奨されるとし、「手袋が抗癌剤で汚れたまま調製していると輸液バッグが汚染されてしまう。調製者を守るためではなく、調製者以降の作業者の安全性を向上させるため」とした。
その上で「曝露対策資材の開発、曝露対策に関するエビデンスの確立によって抗癌剤の曝露対策は時代とともに変化する。以前の曝露対策のまま改善していない施設があるなら、この機会に見直してほしい」と呼びかけた。

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