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2018年11月号

  • 薬局の基本機能に服薬状況の把握など‐ 医師委員は法制化に慎重

    情報提供元:薬事日報社

    厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会

     

    ■厚生労働省は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会に、薬機法改正に向け、法令上明確にすべき論点として、薬局の基本的な機能に「医薬品の服用期間を通じた服薬状況の把握や薬学的な知見に基づく指導」や、「必要に応じた処方医への情報提供」を加えることなど、薬局が有する機能を明確化することを挙げた。薬剤師・薬局が服薬状況の継続的な把握などの業務に取り組むことを義務化する方向性について異論は出なかったが、一部の委員は、「法令上明確にしないとできないことなのか」「ガイドラインや通知で良いのでは」などと主張し、法制化に慎重な姿勢を示した。

     

    ■厚労省は、この日の会議に提示した資料で、有効で安全な薬物療法の提供には、患者の服薬状況を継続的に把握し、その情報を処方医等に情報提供を行うことが必要になるが、「薬局の薬剤師はこれを必ずしも十分実施できているとは言えない実態がある」と指摘。薬局の担うべき基本的な機能として、▽調剤時のみならず、医薬品の服用期間を通じて、服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行う▽患者の服薬状況等に関する情報を必要に応じて処方医等へ提供するよう努めることにより、薬物療法の最適化に寄与する――ことを提案した。

     

    ■また、患者が自ら薬局を選択しやすくするため、薬局の基本的な機能に加え、「地域で在宅医療への対応や入退院時をはじめとする他の医療機関、薬局などとの服薬情報の一元的・継続的な情報連携において主体的な役割を担う」(かかりつけ)機能を有しているのか、「癌などの薬物療法を受けている患者に対し、医療機関との密な連携を行いつつ、高い専門性に基づき、より丁寧な薬学的管理や特殊な調剤に対応できる」(高度薬学管理)機能を有する薬局なのかを明確にすることも提案した。

     

    ■山口育子委員(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「法令上明確にすることで本来業務が明確になる」ほか、「自浄作用を待っていてもダメ」なことから、服薬状況の継続的な把握などの業務を法制化する方向性を支持した。また、薬局の中には、かかりつけ機能をしっかり持っている個店もあれば、調剤と相談に乗る程度しかできていない個店、チェーン傘下であってもきちんとかかりつけ機能を果たしている薬局もあるため、「どういう薬局なのか見えるようにしていくことが必要」との考えを示した。

     

    ■伊藤由希子委員(津田塾大学総合政策学部教授)も、薬剤師・薬局がやらなければならない業務を法制化し、明確にすることは「意味のあること」とし、「ダメな薬局を淘汰するための条件整理にもなる」と同調した。これに対し中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「なぜ法令上明確にしないとできないのか。本来業務がしっかりとできていないのに、さらに上を目指して法令化するということに非常に違和感を覚える」と指摘。「次の診療報酬改定での調剤技術料の新しい項目が目に浮かぶ」とし、関係法令での明確化に反対する姿勢を示した。乾英夫委員(日本薬剤師会副会長)は、薬局・薬剤師への意見を真摯に受け止めるとし、薬局の機能区分として、最低限の機能を「基本的な薬局」「かかりつけ薬局」「高度薬学管理機能薬局」の3類型を示し、法令上で役割を明確化することを求めた。 ただ、山口氏は、「最低限しかやっていない薬局を基本的機能とするのは、今までと変わらない。最低限しかやっていない薬局がそれだけで経営していける仕組み自体が問題」と指摘した。

  • 小児外来で抗菌薬「ほぼ必要なし」‐細菌感染にはペニシリンで

    情報提供元:薬事日報社

    第45回日本小児臨床薬理

     

    ■小児の外来診療で抗菌薬適正使用をいかに進めていくか――。都内で開かれた第45回日本小児臨床薬理学会学術集会では、国家的な課題となっている薬剤耐性(AMR)対策をめぐって議論した。臨床現場の最前線で診療する小児科医からは「外来診療で抗菌薬の必要性はほとんどない。必要な場合も大枠はペニシリン系のアモキシシリンで治療可能」との見解が示され、診療所でグラム染色に取り組んできた薬剤師も「必要な抗菌薬はペニシリン系」と指摘。小児の外来診療で抗菌薬が必要な場合、ほとんどペニシリン系で対応できるとの見解で一致した。

     

    ■伊藤健太氏(あいち小児保健医療総合センター総合診療科)は、小児の外来診療で多い主訴が発熱で、その原因の多くがウイルス感染症のかぜであることから「ほとんど抗菌薬は必要ない」と指摘。抗菌薬が必要な疾患として急性中耳炎、急性咽頭炎を挙げた。急性中耳炎の原因菌で自然軽快率が20%と低い「肺炎球菌がターゲット」とし、「外来で診るような髄膜炎以外の肺炎球菌には、感受性が高いペニシリン系抗菌薬をしっかり使うことが必要」との考えを示した。

     

    ■急性咽頭炎では「原因菌がA群溶血性連鎖球菌の場合のみが治療対象となる。中心はアモキシシリンで治療可能」との見解を示し、「抗菌薬治療の大枠はペニシリン系のアモキシシリンがあれば良い」と結論づけた。それでも、小児の外来診療で抗菌薬治療の必要性はほとんどないとし、出し時を判断できる診療を行うよう呼びかけた。

     

    ■診療所で働く薬剤師の前田雅子氏(まえだ耳鼻咽喉科クリニック)は、より適正な抗菌薬使用に向け、2004年から抗菌薬の判断、選択のためグラム染色を導入した取り組みを紹介した。クリニックで医師が検体を採取し、薬剤師の前田氏が染色と観察を行い、起炎菌を推定して医師に抗菌薬を提案するという流れだ。さらに前田氏は、患者と家族にも染色結果の画像を示し、推定される起炎菌の種類や抗菌薬処方の根拠を説明。こうした取り組みを進めた結果、抗菌薬の処方率は導入前の96%から64%に3割減少した一方、平均治療期間29日から19日に短縮し、平均保険点数も2413点から1857点に下がって医療費削減につながった。

     

    ■これらのことから、前田氏は「現在では患者100人当たりの処方件数は4〜5人であり、必要な抗菌薬はほとんどペニシリン系である」と指摘。「処方件数が減少した背景には、保護者の理解と気持ちの変化が大きかった」と振り返った。そのターニングポイントは「抗菌薬なしで治ることを体験したことで、納得から理解につながった」とし、「抗菌薬の適正使用は身をもって体験するのが一番」との考えを示した。

     

    ■一方、山口県の薬局薬剤師、三浦哲也氏(アップル薬局)は、県薬剤師会の会員を対象にAMRの認識と現時点での活動状況について調査した結果を示した。AMRの言葉については、93.2%が知っていると回答したが、AMRリファレンスセンターは11.0%とわずか1割しか認知されていなかった。厚生労働省の啓発資料について、機動戦士ガンダムを起用したポスターを見たことがある人は50.2%と半数に届いたが、その他の認知度は低かった。また、実際にAMR対策で何らかの行動を起こしたか尋ねると、起こしたと回答した薬剤師は9.7%であり、起こす予定も含めて1割程度いることが分かった。

     

    ■具体的な活動内容としては、病院薬剤師はICT、ASTへの参画、薬局薬剤師では処方された抗菌薬を自己判断による中断や服用量の加減をしないよう患者に啓発するなどの取り組みが挙げられた。この結果を踏まえ、三浦氏は「AMRアクションプランが薬剤師に浸透しているとは言い難い」とし、継続的な普及啓発の必要性を訴えた。