2024.01.30電子カルテ

令和6年度診療報酬改定について変更の背景や論点について解説

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診療報酬は法改正によって改定がなされます。

大きくは2年に1回の改定(大規模な改定)が実施され、今春も「令和6年度診療報酬改定」に向けた準備が進められています。

 

本記事では、令和6年度診療報酬改定について、変更の背景や論点とあわせて解説します。

 

診療報酬改定(大規模な改定)の役割

医療技術の進歩や多様化は機器や設備という形で具現化する場合も多く、これらを現場に導入し用いるためには投資額を回収できる目途が必要となります。また、人的体制の強化などでより質の高い医療を提供していくためにはその原資が必要となります。そして、保険医療機関はそれらを診療報酬で賄っていかなければなりません。

 

従って、国策として「このような医療をさらに普及浸透させていこう」と見定められた診療行為に対して保険点数や加算点数が新たに設けられたり、従来からの点数が引き上げられたりという見直しがなされます。

逆に、普及浸透が進み、金額相場も普及フェーズに入り下落して導入のハードルが下がるなどその目的が達成されつつあると判ぜられたものや、新しい技術へと置き換わるなどしてほぼその役割を終えたと判ぜられたものについては点数が引き下げられたり廃止されたりという見直しがなされます。

 

政府の方針として目指す我が国の医療の在り方、その実現に向けて医療現場が第一歩を踏み出すための後押しのやり方が診療報酬改定という形で反映されているといえます。

 

特に昨今、業界を問わず人材不足や物価高騰、政府による賃上げの呼びかけなど、経営者にとっては様々な厳しい課題に直面しており、これは医療機関においてももちろん同様です。故に、これらについての対策が今春の診療報酬改定に反映されることは必至といえます。

 

変更の背景

これまで診療報酬の改定は、年度替わりである4月1日に行われてきました。

診療報酬の改定は我が国の目指す医療の方向性はもちろんのこと、物価高騰や賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応です。

特に2023年現在、光熱費や材料費などの物価が30年ぶりに高水準で賃上げが行われている状況です。医療分野もその分野の影響を受けており、患者さんが必要とするより良い医療が提供されるように、今後も定期的な対応が求められます。

令和6年の診療報酬改定では、デフレからの完全脱却を踏まえつつ、最適なサービスが提供されるように対応を行います。

なお、このたびの改定の特徴は介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定も同時に行われる「トリプル改定」であることが挙げられます。介護報酬などの改定は3年ごとに実施されるので従来から6年ごとにこのような同時改定がなされてきましたが、今回がそれに該当します。

直近に迫っている2025年問題をはじめとして、日本では少子高齢化が大きな社会的な問題となっています。

医療業界については就労者が減少してもこれまでと同様か、それ以上のサービスが当然の如く求められます。

しかし、就労者数そのものの減少により人材を確保できなかったり、業務負担の割に合わない賃金だったりといった理由により、質的な向上を図る上で厳しい課題が存在しています。

このような状況を改善することも目的として、診療報酬の改定が行われます。

 

これまでとは異なる新たなスケジュール

令和6年度の診療報酬改定がこれまでとは異なるポイントには、施行日が挙げられます。

先述の通り、従来の診療報酬改定は4月1日に施行されますが、このたびは2ヶ月後ろ倒しになった6月1日で決まりました。

この背景には、診療報酬改定の期間が短いために変更作業の負担が大きいことが挙げられます。

下記、従来の診療報酬改定のスケジュールです。

  • 2月初旬:答申
  • 3月初旬:告示
  • 4月        :施行
  • 5月        :初回請求

 

このように、施行までの期間は答申から2ヶ月、告示から1ヶ月しか猶予期間がありません。

それまでに、各医療機関では診療報酬の情報を変更しなければならないため、短期間であることがお分かりいただけるでしょう。

また、電子カルテやレセコンのベンダーもこれらの改定に対応したシステム改修の開発とユーザーリリースを行わなければなりません。

現在の日本では、医療機関の業務負担軽減や地域連携を活性化することなどを目的として、「医療DX」が進行しています。

医療DXを導入することで、医療従事者の負担を軽減することができるため、業務効率の改善とサービス向上が可能となります。

上記より、医療DXには診療報酬改定も要素として含まれており、関係者の負担となっていることがお分かりいただけると思います。

そのため、中医協総会は薬価改定を4月1日に施行し、6月1日に薬価以外の改定を行うようにしました。

診療所の経営に与える影響

下記にて、診療報酬改定が診療所の経営に与える影響についてご紹介します。

 

診療報酬改定そのものが与える影響

クラウド型のシステムであればメーカーが更新してくれることもありますが、自院でデータを管理している場合は診療報酬に変更がある際に自身で更新しなければなりません。

万が一、改定に即した正しい算定・請求がなされていない事態となると、その診療報酬請求が受理され支払われることはなく、医業経営面で致命的なダメージを被ることになります。

電子カルテやレセコンのベンダーから改定対応のアップデートプログラムがリリースされるので、改定施行初日につまずくことのないよう、必ず事前にアップデートの適用を行いましょう。

 

令和6年度の診療報酬改定が与えると考えられる影響

まず、総論として「改定率」では以下の通り診療報酬はプラス改定となります。

 

○社会保障関係費           :前年比でプラス3,700億円程度

○診療報酬                 :プラス0.88%

○薬価などの改定           :マイナス1.00%

○介護報酬改定             :全体でプラス1.59%

○障害福祉サービス等報酬改定 :プラス1.12%

 

各論としての詳細な改定は現在検討が進められています。正式には中医協の答申がなされて決定へと至るので目下のところは「予定」ですが、診療所に関連すると考えられる項目は中医協発の資料の項目見出しベースで以下の通りです。

 

Ⅰ-1 医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組み

Ⅰ-3 業務の効率化に資するICTの利活用の推進

Ⅰ-6 医療人材および医療資源の偏在への対応

Ⅱ-1 医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進

Ⅱ-2 生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取り組み

Ⅱ-5 外来医療の機能分化・強化等

Ⅱ-6 新興感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取組

Ⅱ-7 かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価

Ⅱ-8 質の高い在宅医療・訪問看護の確保

Ⅲ-2 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価

Ⅲ-4-2 小児医療、周産期医療の充実

Ⅲ-4-3 質の高いがん医療および緩和ケアの評価

Ⅲ-4-5 地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価

Ⅲ-5 生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理および重症化予防の取組推進

Ⅳ-1 後発品やバイオ後発品の使用促進、長期収載薬の保険給付の在り方の見直し等

Ⅳ-3 市場実勢価格を踏まえた適正な評価

 

例として、冒頭の項目である「人材確保や賃上げ」の原資とするべく初再診料の引上げがなされることになり、これは全ての医療機関において該当するのは言うまでもありませんが、それ以外にも点数規模は大きくありませんが様々な診療科で該当するものが多くあり、中医協の答申が待たれるところです。

 

 

おわりに

本記事では、令和6年度診療報酬改定について、変更の背景や論点とあわせて解説しました。

下記、令和6年度診療報酬改定のポイントです。

○介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定も同時に行われるトリプル改定

○施行日が4月1日から6月1日に後ろ倒し

 

施行日については医療機関や医療機器メーカーの負担を考慮して、2ヶ月後ろ倒しになったことは例年には見られませんでした。

また、診療報酬はプラス0.88%となったことで総論としては若干の改善といえるでしょう。

 

診療報酬改定は経営にも大きな影響を及ぼす要素であることから、引続き注視しておかなければなりません。

 

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